表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十三章 イベント準備を進めました
253/573

13-02 幕間・とある人物達のチャット

『【桃園の誓い】に新メンバーねぇ。そいつらの中に、俺達の手駒を潜り込ませられたんじゃないのか?』


 AWOでの活動を終え、深夜……PCでチャットをしているドラグは、【桃園の誓い】の増員について報告した。それに対するアレクからのレスポンスは、冷たさを感じさせるものだった。


『済まん。これが一番良いと判断したが、一声くらいはかけるべきだった』


 ドラグは謝罪の言葉を打ち込む。しかし自分の判断は間違っていない、そういった自信が見て取れる。

 それを察したジェイクが、ドラグに問い掛ける。


『何か理由があるんですか?』

『詳しく言うのは勘弁して貰いたいんだが、【七色の橋】にはリアルでハンデを背負ってるメンバーが数名居る』


 そんなドラグの報告に、ジェイクはPC画面を見て何とも言えない表情を浮かべた。


 ――ハンデ持ち……障害か。しかし、数名? ジンの右足……それ以外にも、何かあるのか? それとも、家庭環境か? まぁ、舵定は口を割らないだろうが……それなら無理もないな。


 まかり間違って現実問題を晒しでもしたら、計画どころではない。

 そう考えたのはエレナ、ルシアも同様だった。


『もしも潜り込んだスパイ要員が、その情報を迂闊に公開でもしたらマズいって事ね』

『確かにそうね。ここに居るメンツなら、そういった不手際は無いでしょうけど……使い捨ての手駒だと、やらかす可能性が否めないわ』


 そう言いつつも、ルシアは内心で約一名はやりかねないけど……と思っている。無論それは、カイトである。

 そんな評価を下されているとは露知らず、カイトはPC画面を前にほくそ笑む。


――名井家をスパイとして使えるようにしたけど、それはまだ言わなくて良い。年上だからって、見下されてあれこれ指示されるのはウンザリだ……美紀に一番近いのは、俺。お前らは、ただの取り巻きでしかない……。


 そう、霧人はまだ『拓真マキナをスパイに仕立て上げた』と報告していなかった。

 全て、自分が手柄を独り占めする為……自分が一番、美紀の役に立てると彼女にアピールする為である。

 そして、美紀からそれが彼らに伝わる事は無い。


『成程、理由は理解した。カジ、引き続き宜しく頼む』


 現実におけるハンデ……そんな情報を公開でもしたら、公開した側に非難の声が上がるのは必然だ。その結果、美紀にまで飛び火する様な事態は避けなければならない。


 舵定ドラグ以外は『美紀アンジェリカの為に必要な措置』と考え……それを『人道的に必要な措置』とは捉えなかった。愛する彼女の為に、ただそれだけが全てなのだ。

 それを感じた舵定は、心の中にモヤっとした形容し難い何かに気付く。

 しかし話は既に終わりとばかりに、別の話題に移行した。


『さて……アンジェは、無事にユニークスキルを手に入れましたね』

『しかも、アンジェにピッタリなヤツだろ? これなら、第四回でアンジェがトップになってもおかしくはねぇよな』

『ステータスに関わるユニークスキル……もしかしたら、彼等のユニークと関係あるのかしら?』


 そう……アンジェリカは先日、ユニークスキルを獲得したのだ。これは彼らにとって、実に喜ばしい事だった。

 ダンジョンの中に割れた宝玉が祀られている祠があり、その総数は三つ。宝玉の欠片を集め、ボス部屋に到達するとエクストラクエストが開始された。

 そしてボスを討伐した所で、割れた宝玉は修復され……黒いスキルオーブへと変化したのだ。


 この事実は、多くのプレイヤーの知るところとなった。何故ならば、アンジェリカは配信中にエクストラクエストを攻略したのだ。

 イベントに備え、全ての情報を開示する事はしていない。これに、特に不満は出なかった。

 しかしアンジェリカは、ユニークスキルの情報を一部公開した。その特殊なスキルは、アンジェリカにとって非常に有用なものだったからである。


 それは()()()()()()()()()()()事が出来る……というものだ。


『アンジェの為なら、少しくらいステータスポイントを譲渡しても構わない……そういうファンの声も、あちこちで見受けられる』

『既に、同接は安定して一万を超えているしな。流石だよ、アンジェは』

『彼女の魅力ならば、当然でしょうね』


 一人から一ポイントのステータスを譲り受けても、多少の強化にしかならない。しかしそれが、百や千を越えたらどうなるか? 各ステータスに極振りしているプレイヤーを、上回る事も不可能ではない。


『これが、アンジェのユニークスキル【八咫烏やたがらす】……俺達の太陽に相応しいスキルだな』


 太陽の化身、導きの神……その名を冠する、ユニークスキル【八咫烏】。この力を手にしたアンジェリカは丁度、ライブ配信を終えてログアウトするところであった。

次回投稿予定日:2021/11/3(掲示板)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] うーん、現実でのハンデを晒す事を人道的にダメだと判断したドラグと、美紀に問題が降りかからない為にと判断した他のメンバー。 この差がきっと人としての、性質の差なんだろなぁ。 そしてメンバーの…
[良い点] 初めましていつも楽しく読ませていただいてます。 ドラグは良くも悪くも一般人なんですね。 何も知らないならレンの発言を聞いて七色の橋をそうだと思っても仕方ないのかな?と思います。 まぁ、普通…
[良い点] ドラグがクズなのは変わりませんが、他のメンツと比べると一周して常識人に見えてくる不思議 スパイ(拓真君)からとまんまとデマの情報を掴まされて喜々としてるカイトを楽しみにしております […
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ