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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第二章 ゲームをエンジョイしました
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02-10 幕間・ルイズの独白

 アタシの名前は【八和田はちわだ瑠依るい】。アナザーワールド・オンラインでは、【ルイズ】という名前でプレイしているわ。

 アタシはAWO以前からのゲーム仲間である【ジャック】、【ビート】と三人でパーティを組んでいる。この二人はアタシにとって、最高の手下ね。


 アタシ達は、そんじょそこらのプレイヤーみたいに地味~なプレイはしないわ。だってそうでしょう? チマチマとレベルを上げて、モンスターを倒して良いアイテムがドロップするまで待つだなんて馬鹿馬鹿しい。

 モンスターを引き付けて、プレイヤーを殺させる。それによって発生するデスペナルティで、プレイヤーからドロップしたアイテムをアタシ達が回収。これが賢いプレイスタイルってワケ。


 マナー違反とか、PKプレイヤーキルだとか言うヤツもいるけどね。MPKモンスタープレイヤーキルは、犯罪者レッドカーソルにならないのよ。つまりルールで規定されている合法行為。自分の手を汚さないから、これは犯罪行為じゃないの。

 なら、やるしかないでしょう? 働きアリみたいにせっせとやるなんて、性に合わないわ。


 ……


 今日もアタシ達は、始まりの町で獲物を選別する。そんな中、アタシの目に留まったのは二人のプレイヤーだ。歳は中学か高校生くらい? 二人とも、整った顔立ちをしている。

「お兄ちゃんが、このアイテムをくれたんです!」

「へぇ、良かったね。これ、貴重な品なんじゃない?」

「多分そうだと思うんですけど……」

 ふぅん、お兄ちゃんがねぇ。そんなに貴重な品なら、アタシらが活用してあげようじゃないの。


「それにしても、このゲームに刀なんてあったんだね」

 ……は? 刀だって?

「はい、お兄ちゃん達はもう持っているからって」

 刀を持っているプレイヤー。そいつらは掲示板で、何度か話題に上っていた。

 それは……いわゆる、忍者だ。アタシも遠巻きに見かけた事があった。成程ねぇ……忍者そいつが、あのガキの兄貴かい。

 黒髪の坊やの方は初心者装備に≪鋼の短剣≫。黒髪の小娘の方も、初心者装備。手にしているのは刀で、そこまで長くはないが見事な装飾が施されている。確実に、レアモノだろう。

 明らかに初心者丸出しで、レベルは10も行ってないだろう。


「やるよ」

 アタシは小声で、手下に指示を出した。

「うす」

「だよねー」

 初心者のガキ共は、噴水広場から東側へ出て行った。へっ、おあつらえ向きだね。いつものようにモンスターを使って、ガキ共をブッ殺してやるわ。


 もし、こいつらが忍者の関係者なら好都合だしね。

 この前の、四人居た初心者……どいつもこいつも、キラキラして楽しそうにしやがって。だから、ろくなアイテムを落とさないのを解っていてMPKモンスタープレイヤーキルしようとしたんだ。

 なのに、忍者野郎が乱入しやがった。両手の小太刀であっという間に、サーベルウルフを殺っちまったんだ。


 後悔しやがれ、忍者野郎……アンタに邪魔された代償は、可愛い可愛い妹さんに払って貰うからねぇ……。


************************************************************


 初心者どもが狩りをする広場で、ガキ共はウサギやスライムを相手にキャッキャウフフとお遊戯だ。戦っているとは呼べないね、あんなのガキのお遊戯だよ。

 その間に手下二人は、モンスターをトレインしに行っている。モンスターを連れて戻って来るまでの間、見張っているアタシはガキ共の仲睦まじい様子を見せ付けられていた。


「うーん、動きが早くて当たらないです」

「よし、それなら僕に任せて。それっ!!」

「わぁ、流石です!! やっぱり頼りになりますね!!」

 やべっ、砂糖吐きそう!!

 てめぇら、アタシの前でイチャイチャしてんじゃねーぞ!! こちとらアラサーだぞ!! ゲームでは美容整形レベルの美貌だけど、リアルではちっともモテやしねぇんだぞ!! 手下達は可愛い顔しているから身体使って誑し込んだけど、リアルでは可愛い男子なんざ苦笑いして去って行くんだぞ!!

 早く帰って来いよ、手下ども!!


 ……


 やがてモンスターをトレインした手下達が、アタシとの合流地点を目掛けて走って来た。

 待ち兼ねたわよ、可愛い手下達!! あいつら、何をウサギやスライムばっかり狙ってイチャイチャしてんのよ。ガキか!! あ、ガキだったわ。


 それにしても、今回も大漁大漁。サーベルウルフに、キラーホーネット。おやおや、バーニングタイガーとはまた、レアなモンスターが居たもんだね。

「姐さん、おまっとさんです!」

「こんなもんで、良さげー?」

 従順に言う事を聞くこいつらは、本当に可愛い手下だわ。今夜も、二人纏めて可愛がってやろうかしら。

「オーケーよ、さぁ……始めるわよ!!」

 覚悟しなさい、クソガキ共。


 森の入口から駆け出したアタシ達は、ガキ共目掛けて走って行く。当然、アタシ達三人は顔を隠したままだ。

「……えっ!?」

「モ、モンスターの群れ!?」

 唖然とするガキ共。その顔がハッキリとこっちを向いている……どっかで見た覚えがあるんだけど、どこだっけ?


「オラオラァ!! 轢き殺されちまえ!!」

「初心者のガキなんざ、町で大人しく震えてなー!!」

 手下達の言葉に、ガキ共は驚いた様子で逃げ出そうとしていた。

「はははっ、逃がさないよ!! さぁ、デスペナルティ初体験ツアーへご招待っ!!」

 もう、逃げ出すには間に合わないよ!!


「【ハイジャンプ】」


 メスガキを抱え上げた小僧が、めっちゃ高く跳び上がった!? 何だ、そのジャンプ力!!

 ちょっ!! お前らが消えたらこのモンスター、このままアタシらを追って来るんだけど!?

 ヤバいヤバい!! これは逃げるしかないね!!


「【クイックステップ】!!」

 三人揃って【クイックステップ】を使い、モンスターの視界から逃げ出した。そのまま隠れ潜んでいれば、モンスターは標的を見失って新しい標的を探すのだ。

「【ハイド・アンド・シーク】」

 どこに隠れ潜むかって? そりゃあそこらへんだ。アタシが偶然、モンスターから手に入れた【隠密の心得】……このスキルなら、自分と仲間の気配を遮断する事が出来るのさ。最も自分の姿が、相手の視界に収まっていないのが前提だけどね。


「……ってあれぇ!?」

 そう、モンスター達がアタシ達に迫って来ている。それも、迷いなく一直線にだ。

「何で姐さんの【ハイド・アンド・シーク】が適用されないんだ!?」

「視界からは逃れたはずじゃーん!?」

 そう、視界から逃れさえすれば【ハイド・アンド・シーク】の発動条件はクリアする。それはつまり、アタシ達を見ているヤツが居るって事になる。


 ……待てよ? そもそもあのガキ共はどこ行った?


 そう思って、駆け出した時だった。アタシの目に、見覚えのある野郎の姿が映ったのだ。

「……忍者野郎!?」

 黒い装備に、紫色のマフラー……間違いない、あの忍者野郎だ。隣には、巫女みたいな服の小娘がいる。

「一撃必殺少女!?」

「マジ!? 噂の娘!?」

 なに嬉しそうにしてんだ、アンタ達!!

次回投稿予定日:2020/6/10

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