12-02 幕間・その頃のカイト
ジン達が第三エリアを探索する一方で、第二エリアの主要都市。そこでは、第三エリア到達を目指すプレイヤー達が集まっていた。無論、第三エリア到達を目指す面々である。
その中に、アレク一派の不安要素・カイトの姿があった。
――くそっ、ろくに使えない奴らばっかりだ……!!
どうやらカイトは、まだ第三エリア到達を果たしていないらしい。野良でパーティを組む以上、当たり外れがあるのは仕方がない。
カイトは戦力的に言うと、トッププレイヤーとまではいかないが高い技量を誇る。レベルも既に55と、中々のところまで上げている状態である。
その為、彼は”率いる側”の立ち回りを求められるプレイヤーと言って良いだろう。
しかし彼はこれまで、アレク達といった年長者と行動を共にしている”率いられる側”の存在だった。その為、誰かを引っ張っていくという意識に乏しい。
言われた事、求められた事だけを実行する……つまり指示待ちタイプ。故に、周りのプレイヤーと噛み合わないのである。
既にギルドに所属しているアレク・エレナ・ルシア・ドラグ……そして、情報掲示板のメンバーであるジェイクは第三エリア到達済み。
ある理由を抱えるアンジェリカを除いて、遅れている状態であった。
――どいつもこいつも……!! こうしている間に奴らは、先に進んでるっていうのに……!!
奴ら……当然、【七色の橋】の事だ。
本来ならばハヤテと同じ学校に通うという縁を頼りに、【七色の橋】に潜り込むつもりだった。
しかしハヤテはギルドに加入したいというカイトに、今は募集していないと断ったのだ。今後の事を考え、食い下がるのを控えたが……未だにその時の苛立ちを思い出す。
そのくせ、マキナ……彼はあっさりと加入させている。それもまた、気に食わない。それはまるで、自分よりもマキナの方が優れている様ではないか……と。
――見てろよ、くそったれ共め……アンジェが動き出したら、お前らは終わりだ……!!
何の根拠もない確信を抱きつつ、カイトはレイドパーティ募集のウィンドウに視線を落とす。
野良パーティの為、上限は八人。エリアボス戦ならば、やはり八人パーティが四組欲しい。
そして今は、残り一人が中々来ない状態なのだ。
――くそっ、さっさとしろよ……!!
本性を隠して涼しい顔を浮かべる裏で、カイトは毒づいていた……その時である。
『パーティに【リリィ】が参加しました。レイドパーティが成立しました』
――リリィ!?
思わず視線を巡らせると、確かにそこにはリリィの姿があった。
「え……マジかよ……!?」
「ほ、本物だぁ……!! 初めて近くで見た…!!」
「リリィちゃん!? え、なんで!?」
困惑の声を上げるプレイヤー達に、リリィは微笑みを浮かべて一礼する。
「エリアボスの素材を集めたくて、参加させて頂きました。どうぞ、よろしくお願いします」
よく通るその声に、プレイヤー達が歓喜に湧く。そんなリリィとプレイヤー達を見つつ、カイトは小さく舌打ちをした。
――確かに、コイツがいれば捗りそうだ……気に入らない女だが、利用するだけ利用してやる……。
どうやら彼は、リリィをあまり好んでいない様である。その理由は……彼が愛して止まない、ある女性にあった。
ちなみにリリィがエリアボスの素材を集めたいのは、嘘ではない。しかし、本当の理由……それは、ソロプレイヤーとして第三エリア未到達のプレイヤー達を手伝うという想いの方が大部分を占めている。
リリィという少女の、優しさから来る行動だったのだが……カイトはそんな事など、全く気付いていない。
次回投稿予定日:2021/9/5(本編)