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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十二章 第三エリアを探索しました
231/573

12-01 探索を開始しました

 東側の第三エリア、城塞都市[エリアス]。

 西側の第三エリア、迷宮都市[メイリス]。

 南側の第三エリア、海底都市[マリアナ]。

 北側の第三エリア、雪原都市[アイザン]。


 それぞれの第三エリアに到達したジン達は、探索について打ち合わせをした。

 同盟チームで探索を……と思ったのだが、【魔弾の射手】はリアル事情で不参加らしい。【桃園の誓い】も、大学生メンバーは試験が近い。そして十二月を間近にした今の時期、社会人であるケイン達も繫忙期を迎える。故に【桃園の誓い】は活動が制限されてしまう。


 またソロプレイヤー組は、ソロ活動に一度戻るとの事だった。このまま行動を共にしては、ギルドに加入していないだけでギルドメンバーと変わらないという懸念からだろう。

「今回は一緒に戦えて楽しかったよ」

「こちらもです。ありがとうございました」

 笑顔で応対するジンに、ユアンはまた会おうと言い残して去って行った。


「私も楽しかったです。また、よろしくお願いします!」

「ええ。リリィさん、また一緒にやりましょう」

 レンがリリィにまた攻略に誘う事を告げると、嬉しそうに頷いてみせた。やはり、同年代が多いこの同盟は居心地が良いらしい。


「ほんなら、ワイも本業に戻るわ。またホームに顔出すさかい、よろしゅうに!」

「何かあったら連絡下さい、クベラさん」

 クベラは、商人プレイヤーとしての活動を再開するらしい。素材の仕入れや、新規取引の開拓……そして【七色の橋】製の和装・刀の販売窓口。やる事は沢山あるのだ。


……


 そんな訳で、同盟チームは一旦解散。【七色の橋】はギルドメンバーのみで、第三エリア探索を行う事となった。

「さて、振り分けについて相談しようか」

「そうですね……まぁ、固定される人が多数いますが」

 自分達の事を棚に上げて言うレンに、ヒイロは苦笑する。とはいえ、東西南北の第三エリアにメンバーを振り分けるのに然程苦労は無かった。


 北側は極寒地帯につき、火属性魔法を使える魔法職が必須。無論、レンとネオンだ。そして彼女達と行動を共にするならば、ヒイロ……そしてマキナが振り分けられるのは暗黙の了解。

 はい、マキナもです。ネオンが必要と聞いて自分から言い出したし、全く同じタイミングでネオンも言い出しました。二人とも、お可愛いこと。


 西側には、ハヤテとアイネ。そしてカノンが同行する事になった。迷宮となると、ハヤテやマキナの様なVRMMOに慣れているメンバーが必要だったのだ。マキナが北に行くならば、自然とハヤテ……そしてそのパートナーであるアイネがここに割り振られる。

 また迷宮となると宝箱などが置かれているが、ミミック等が擬態している事が多い。それを見破る事が可能な、鍛冶スキルを持つカノンの鑑定が必須なのである。


 南に向かうのはヒビキ・センヤ・ミモリ。

 海底都市という言葉に食い付いたセンヤに、引き摺られる事となったヒビキ。もっともヒビキも、そんなセンヤとのやり取りを楽しんでいる様子だったので、誰も異論は挟まなかった。

 ミモリが同行するのは、二人が妙な輩に絡まれたりしないか心配だったからだ。二人はまだ、中二なわけであるからして。

 とはいえ現状、第三エリアに到達しているのは【聖光】か【森羅】、【旅路】くらい。今更【七色の橋】と、揉め事を起こすとは思えないギルドである。


 東はやはり、ジンとヒメノの夫婦である。他が三、四人なのに二人だけ? と思う者……つまりこの二人に関し、心配する者は一人も居なかった。

 最高クラスのAGIを誇る超絶回避の忍者・ジン。同じく最高クラスのSTR値の持ち主、絶対破壊の姫君・ヒメノ。この二人の組み合わせは、出会った時から変わらぬ抜群の相性。そして夫婦となって更に研ぎ澄まされている、息の合ったコンビネーション。

 不安要素が無いし、エクストラボス相手でも「倒しちゃった☆」とか言い出しそうである。ちなみに、これはフラグではないので悪しからず。


 生産系PAC(パック)のメーテル・カーム・ボイドは留守番となり、残る六人のPAC(パック)が探索に同行する。


 北側チームにはロータス、西にはジョシュア、東にはリンが同行する。

 残るヒナ・セツナ・カゲツは、南側へ割り当てられた。これは南側メンバーが、戦力的に不足がちだからである。それは当人達も自覚しており、有難く言葉に甘える事となった。


 さて、ここでジン達の現状だが……まず、彼等は全ての第三エリアに到達したことで”第七ステータス”の解放条件を満たした。


―――――――――――――――――――――――――――――――

【第七ステータス】


LIF(ライフ)】最大HP強化

MNA(マナ)】最大MP強化

LERリーニング】成長率強化

SPT(スピリット)】回復・支援系スキル強化

TEC(テクニック)】生産効果強化

LUK(ラック)】ドロップ率強化

CHR(カリスマ)】パーティメンバーステータス強化

―――――――――――――――――――――――――――――――


 これら第七ステータスの内一つを選択すると、ステータスの一番下に表示されるようになる。選んでから、他の物に変更する事は出来ない。


 さて、ジン達がそれぞれ選んだ第七ステータス。

 ヒイロは、CHR。LIFやLERも考えたのだが、ギルマスとしてこれが良いと判断したらしい。

 レンはユニークスキルの効果で味方を強化する等の役割を担う為、SPTだ。

 ハヤテはユニークスキルでMPを消費する為、最大MP強化のMNA。ネオンも魔法職らしく、MNAを選んでいる。

 アイネはこの中で、ドロップ率強化のLUKを選択。理由は、モンスターにトドメを刺す機会が多い為である。

 シオンはやはり壁役として、最大HP強化のLIF。センヤも前衛で戦う役割の為、LIFを選択した。

 ミモリとカノンは言うに及ばず、TECだ。生産プレイヤーの二人にしてみれば、選択肢などあって無い様なものである。

 そしてヒビキ・マキナは、成長率強化のLERを選んだ。もっと強くなりたい、成長したいという彼等らしいと言って良いだろう。


 そして、ジンとヒメノなのだが……。

「まぁ、極振りプレイを今更変えるのも……ね?」

「ですね……」

 とりあえず、ジンはCHRを取得。そしてヒメノはLUKを取得する。そこにポイントを振り分ける事はしない……極振りですから。

 ちなみにレンとシオン……二人同様にステータス突出型の二人も、余程の事がない限りはポイントを振り分ける事はしない模様。


************************************************************


 ギルドメンバーと分かれて城塞都市[エリアス]を訪れたジンとヒメノは、リンを伴ってのんびりと歩く。その姿を見て、反応を見せるプレイヤー達……その出で立ちは、統一された色合いにより【聖光の騎士団】メンバーだと窺い知れる。

 やはり、名の知れたギルド以外は第三エリアに到達するに至っていないようだ。


「確かライデン殿が、制服が出来たと言っていたでゴザルな」

「制服っていうのも良いですよね。私達では、難しいかもしれませんが……」

「和装がある意味、制服でゴザルからなぁ……」

 聖なる光の名を冠する騎士団の服として、白銀と青のカラーリングで統一された【聖光の騎士団】。そして和風装備で統一され、各々のカラーリングで彩られた装備の【七色の橋】。どちらもギルド名に沿った装備であり、どちらも良いものである。


 そんな中、ジンとヒメノの姿を見て駆け寄る者がいた。エメラルドグリーンの髪を風に靡かせ、走る槍騎士……その姿を見て、ジンは「おっ!」という顔をする。ヒメノは現実で顔を合わせて以来であり、少し表情が陰ってしまうのだが……無理もないだろう、最愛の旦那様に暴言を吐いたという過去がある相手なのだから。


「やぁ、ここで出会えるとは思わなかったぞ!! 我が友よ!!」

 来てしまいました、ギルバート。

「ギルバート殿、こんにちはでゴザル」

「……こんにちは」

 微笑んで片手を上げるジンに対し、ヒメノはまだちょっと複雑そうだ。


 他の【聖光】メンバーは、そんなヒメノにギルバートが声を掛ける……いつものスーパーギルバートタイムが始まるのだろう、と思いきや。

「ジン、そんなに他人行儀な呼び方をしなくても良いだろう? ギルバートと呼び捨てにしてくれてもいいし、ギルと愛称で呼んでくれても構わん。我が盟友、ライデンの様に!! ライデンの様にっ!!」

「う、うむ……随分とテンションが高いでゴザルな? じゃあ、ギルで」

 矛先が、ジンでした。


 これは意外だったのか、【聖光】メンバーは顔を見合わせて狼狽える。

「ま、まさか決勝戦で敗けたショックで、壊れた……!?」

「もしかして、性的嗜好が変わったと……?」

「確かに最近、ギルバートさんが女性に対して声を掛けなくなったよな……」

「あたしそういうの嫌いじゃないから!!」

「ミゾグチさん、叫ばないで」


 そんな外野の存在に知ってか知らずか……「あたしそういうの嫌いじゃないから!!」は確実に聞こえているが、ジンとギルバートは笑い合う。ちなみにその言葉の意味するところを、彼等は知らない。

AWOこっちで会うのは、第二回イベント以来でゴザルなぁ」

「うむ、確かにな。あぁ、御挨拶が遅れて失礼しました。ヒメノさん、先日は楽しんで頂けましたか?」

「あ、はい……色々、お気遣いありがとうございました」

「ははは、構いませんとも。ジンやヒイロのパートナーや仲間ならば、当然の事ですから」

 見たまえ、この綺麗なギルバート。綺麗なギルバートですぞ。


「しかし、やはり君達も第三エリアに到達していたか。他の方面も、既に?」

「無論にゴザルよ。まぁ、【桃園】や【魔弾】に協力して貰ったでゴザルが」

 和やかに会話する二人……珍しく蚊帳の外まではいかないが、その場で成り行きを見守るヒメノ。ギルバートの性的嗜好が変わった疑惑が加速しそうである。


「ふむ、という事は第七ステータスも開放済みか。あぁ、同盟の件は風の噂で聞いているよ」

 どうやら【聖光の騎士団】も、全ての第三エリア到達を果たしたようだ。という事は、彼等もそれぞれ第七ステータスを選択済みなのだろう。


「そうだ、噂話ついでに……第四回イベントが近い、という噂は聞いているかね?」

 そんな話は寝耳に水で、ジンとヒメノは顔を見合わせた。

「いや、初耳でゴザル」

「私もです」

 そんな二人に、ギルバートは神妙な顔をして頷いて見せる。

「そうか。噂話なのでどこまでアテになるかは不明だが……どうやら、ギルド対抗イベントではないかという話らしい」


 ギルド対抗イベント……つまり、ギルドVSギルドのイベントだ。

 ここまでのイベントは、全プレイヤーが協力して街を守る第一回。パーティメンバー十人での、決闘トーナメントである第二回。そして生産した物の優劣を競う、第三回が開催された。

 そのどれもが注目度の高いイベントだったが、ギルド対抗イベントとなれば更に注目度は跳ね上がるだろう。


「更に、時間加速もあるからな。今回のイベントは、過去最大のイベントになるのではないかな?」

 過去最大……そんなギルバートの感想に、ジンとヒメノは真剣な表情を浮かべる。


「あの、ギルさんはDKCというゲームもやっていたんですよね? そちらでは、どうだったんですか?」

 ヒメノからの”ギルさん”という呼び方に、少し親近感を抱いてくれたのかと喜んだギルバート。無論、下心抜きである。そんな彼は、朗らかな笑みを浮かべて頷いた。

「私の知っている事で良ければ、お話ししましょう。ジンやヒメノさんの為ならば、ね。もっとも、我々【聖光の騎士団】の内部情報は差し上げられませんが」

「はい、それは勿論です」

「ありがとうでゴザルよ、ギル」


 そしてギルバートによる、DKC時代の話。そこでもギルド対抗のイベントは存在したが、方向性はいくつかの物があった。

 まず、(ギルド・)(バーサス)(・エネミー)タイプ……ギルド対エネミーの、討伐数競争イベント。特定のモンスターを狩った数を競うタイプのイベントだ。

 そして同じく、GvEイベント。こちらは、レイドモンスターに与えたダメージ値を競うというモノだった。

 これらのイベントにおいて、やはりギルドメンバーの数は力だ。故に、ギルドの規模に応じてクラス分けされていたという。


「そして、純粋な(ギルド・)(バーサス)(・ギルド)……ギルド同士で戦い、成績を競うサバイバルイベントがあった。私としては、開催されるのはこちらではないかと思っているよ」

「GvG……ですか」

「確かに、それは盛り上がりそうでゴザルが……色々と、荒れそうなイベントでゴザルな」

 難しい表情を浮かべる二人に、ギルバートは苦笑する。

「まぁそうだな。どんなに運営が頑張っても、文句を言うプレイヤーが必ずと言って良いくらい現れるものだからね」


 そんな風に話をしていると、一人の女性が歩み寄ってきた。

「ギルバートさん、そろそろ……」

「あぁ済まない、つい話し込んでしまったな。それではジン、ヒメノさん。済まないが、私達はこれで」

 丁寧に断りの言葉を入れるギルバートに、ジンがある事を思い出す。

「あ、ギル。フレンド登録だけお願い出来るでゴザルか?」

 その言葉に、ギルバートは破顔一笑。頷くとウキウキした様子で、システム・ウィンドウを開く。


 ジン・ヒメノとフレンド登録を済ませたギルバートは、今度こそギルドメンバー達と立ち去って行った。姿が見えなくなる前に、一度振り返って手を振ってみせたのだが……やはり、彼も変化著しいプレイヤーの一人だろう。


「……ジンさん、良かったです」

「うん?」

 最愛のお嫁様から掛けられた声に、ジンは視線をヒメノに向ける。するとヒメノは、目尻を下げてふにゃりと微笑んでいた。

「ジンさんが、楽しそうで嬉しいです♪」

 恐らく、自分が思っている以上に……ヒメノは、自分の事を心配してくれていたのだろう。


 そんなヒメノの内心に気付いたジンは、彼女の肩をそっと抱き寄せる。

「ありがとう、ヒメ……色々と。大好きだよ、ヒメ」

 そんな唐突な愛の言葉に、ヒメノは目を見開いて頬を染める。


 というのも、ジンはちゃんと愛情を示してくれるのだが……”好き”という言葉は、他の人に聞かれる様な場所ではなかなか口にしないのだ。何気にシャイボーイである。

 そんなジンが、ハッキリと”大好きだよ”と言ってくれた。ここは第三エリアであり、今は周囲にプレイヤーが居ないとはいえども。

 それは、ヒメノにとっては何よりも嬉しい言葉だった。


「わっ、私も……ジンさんが大好きですっ!!」

 思わずそんな言葉を無意識のうちに返してしまうくらいに、ヒメノさんは喜んでおられた。


……


 さて、東側第三エリアは城塞都市というだけあり、物々しい雰囲気だ。高い城壁、その上には大砲。ガッチリとした甲冑を身に纏う兵士達が、そこらじゅうを歩いている。

「何だか、ピリピリしてますね」

「うん……もしかして、戦争中とかでゴザルかな?」

 二人は手を繋いで、緊張感を漂わせる街を歩いていく。


 すると、一人の兵士が二人に視線を留めた。

「そこの二人!! 怪しいな、どこから来た!!」

 怪しいですか? という表情を浮かべる二人。本人達に自覚は無いが、怪しいのは事実だろう。だって、洋風の世界で和装だし。

「えぇと、来たのは第二エリアの方……あ、[クレイドル大草原]の方からでゴザル」

「何!? 大草原だと……いや、しかしあそこには、牛面の怪物が……!!」


 狼狽え出した兵士に、ジンとヒメノは顔を見合わせる。恐らくだが、この街は東の第二エリアボスであるミノタウロスを警戒しているのではないか? と。

「失礼、こちらは私の主様であらせられる異邦人のジン様。そして、その奥方であらせられる同じく異邦人のヒメノ様にございます」

 スッと一歩前に出て、二人について説明し始めるリン。


 ちなみに、彼女も和装なので怪しまれるんじゃない? と思ったジン。だが……兵士は驚きで目を見開いた。

「異邦人……!! そうか、それならば確かに……確か、異邦人は神の加護を得られているのだったな。ならばあの牛野郎を倒したというのも、有り得ん話ではない……しかし……」

 あっさりと信じかけている。大丈夫か、この兵士。


 ブツブツと呟く兵士を見たリンは、ジンとヒメノに向き直ってある提案をした。

「主様、奥方様。ここは一つ、システム・ウィンドウを提示するのが一番ではないかと」

 システム・ウィンドウ……プレイヤーにとっては、当たり前の要素だ。しかし、現地人(NPC)にとってのそれは違う。彼等からしてみればシステム・ウィンドウは神からの祝福であり、それを扱えるのは”神の祝福を受けた異邦人”に他ならないのである。


「可視状態の方が良いでゴザルかな?」

「そうですね……では、これで」

 二人はシステム・ウィンドウを開き、設定を可視状態にする。現地人(NPC)でも画面を見る事が出来るのは、PACパック達のお陰で確認済みである。


「こ、これが……!! 話に聞いてはいたが、初めて目の当たりにした……これが、神の祝福……!!」

 何だかテンションが上がり気味の兵士に、二人は顔を見合わせて苦笑してしまう。

 これまで異邦人……つまりはプレイヤーが訪れられなかった第三エリア。そこでは、異邦人とは眉唾物の存在程度の認識だったのではないだろうか。

 そんな中、実際にシステム・ウィンドウを扱うことが出来る者が現れた……つまり、神の祝福を受けた異邦人が実在した事にほかならない。それは、テンションも上がるだろう。


「い、異邦人の方。その、よろしければ時間を頂けないだろうか? 是非、我々の隊長にお会いして頂きたいのだが……」

 兵士があからさまに遜り、丁寧な口調に変化する。これはクエストかも? と二人が思っていると、二人の視界にウィンドウがポップアップした。


『【城塞都市[エリアス]の防衛隊長と話せ】』


 どうやら、この兵士に呼び止められたところからクエストが始まっていたらしい。二人は顔を見合わせ、頷き合う。

「はい、私達は大丈夫です!」

「どこに向かえば良いでゴザルか?」


「カータの後の二本のトゥノの真ん中の坂の下の右路の右です」

「え? え? えっと、肩の後の二本の角の真ん中のトサカの下のウロコの右?」

「いや、肩の後の二本のゴボウの真ん中にあるスネ毛の下のロココ調の右では?」

 大工道具の名を冠する山に座すボスの弱点と勘違い(ある意味では正解)するヒメノ、その言葉を聞いて謎の弱点(間違い)を見出す勇者みたいな聞き間違いをするジン。

 尚、このまま放っておけば最終的に”肩車して後ろ向きに乗り、二本のゴボウを持った歌舞伎顔の男”になるだろう。お目目がグルグルになりそうである。


「主様、奥方様……盛大に間違えておいでです」

 珍しく苦笑するリンが、ある場所に向けて指をさす。

「カータとは、あの建物です。この[エリアス]で最も高い監視塔の名ですね。トゥノというのは、この地の護り神の像だそうです」

 リンがそう告げると、兵士が苦笑しつつ補足する。

「坂を下り切ると突き当りになります。右側の路地をしばらく行くと、我々の兵舎がありますので。そこで神の祝福の証を提示して頂ければ、隊長に会えるでしょう。私にそう言われたと伝えて下さい、私の名は【ガルマ】です」


 兵士ガルマと別れた二人は早速、監視塔カータに向かって歩き出す。

「第三エリア探索開始! でゴザルな」

「はいっ♪」

次回投稿予定日:2021/9/3(幕間)

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― 新着の感想 ―
[良い点] ジンのフレンド登録のお願いに、大喜びのギルバート。 良かったね!(^w^) そして仲良くするジンとギルバートを、遠くから眺めながら腐腐腐❤と笑うミゾグチさん。 [一言] ギルバートの変化…
[一言] ヒメノの7つ目のステがLUCになっているよ
[一言] 文化祭の話で糖度のメーター狂ったから特にそこまでって感じだけど、今回の話もまぁまぁ甘い? ギルがいい感じな青年になってるのいいですなぁ
2021/09/01 11:54 しおりすぐ無くす読書好き
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