02-09 会議をしました
初の大型イベントを五日後に控えたその日、ジン達は揃ってユージンの工房を訪れていた。その場には、ケイン達も居る。
というのもケインが手に入れた物と、攻略掲示板に流れたある情報を共有する為だ。
「MNDのユニークスキルを手に入れた……ですか。おめでとうございます、ケインさん!」
「あぁ、ありがとう。昨夜、ダンジョン内で例の祠を発見してね。本当なら、君達とも一緒に攻略したかったんだが……」
そう、ケインからフレンドメッセージが届いていたのだ。だがお誘いの連絡が来たのは昨夜……日付が変わる直前の事だった。翌日である今日も平日だった為、ジン達は揃ってログアウトした後だったのだ。
二通目のメッセージは、やむを得ず自分達だけで攻略する断りの内容。そして明け方近くになって、無事に攻略が成功した報告のメッセージだった。
「エクストラクエストは、ダンジョンから一歩も出ていない事が条件だもんねぇ」
「本来なら、一緒にやりたかったんだがな。三人だと、マジでキツかった」
ともあれケインは[林の祠]でスキルオーブを手に入れ、エクストラボス攻略を達成した。手に入れたユニークスキルは【鞍馬天狗】で、MND特化のユニークスキルだ。
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ユニークスキル【鞍馬天狗Lv1】
説明:徐かなること林の如し。習熟度が向上すると、新たな武技を習得する。
効果:MND+50%。他のステータスを−50%。
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「それで、残るユニークスキルなんだけど……これを見て欲しいんです」
ジンが指で示したのは、システム・ウィンドウで開いた攻略掲示板のスレッドだ。
「【トリックスター】……以前、攻略掲示板に流れていた【ガードスター】と同じ、DEX系ユニークスキルの劣化版だと思うんです」
そこには確かに、【トリックスター】の概要が書かれていた。スクリーンショットも貼ってある為、ガセネタでは無いだろう。
「これが出たって事は、DEXのユニークスキルは誰かが取得済みって事か」
「だろうね。ジン君達以外にも、エクストラクエストを手に入れたプレイヤーが居るって訳だ」
これまでのエクストラクエストは、AGI向けをジンが単独で攻略。
その後ジン達五人が、VITのエクストラクエストを攻略。
そして先日のINTはジン達五人、その直後のSTRはケイン達を含めた八人での攻略。
加えて昨夜、ケイン達三人がMNDのエクストラクエストを攻略した。
残るDEXのエクストラクエストは、何者かによって攻略済みだと目される。
これで六つのエクストラクエストが、全て攻略されたという事になる。
ジンの風、ケインの林、ヒメノの火、シオンの山、レンの雷……そして、何者が手に入れたのは陰だろう。風林火山陰雷が出揃ったのだ。
「……お兄ちゃんも、エクストラクエストを攻略出来たら良かったんですけど……」
ヒメノの言葉に、ヒイロは苦笑する。確かに、狙っていなかったと言えば嘘になる。
レンやシオンと初めて遭った時、[山の祠]でシオンにスキルオーブを渡していなければ……【酒呑童子】を手に入れていたのはヒイロだっただろう。
しかしヒイロは、その事を後悔してはいなかった。
「ステータス系以外にも、エクストラクエストがあるかもしれないだろう? まだまだ諦めてないよ」
それは、本心からの言葉だった。ユニークスキルが、ステータス系だけとは思えない。他のエクストラクエストが、どこかに眠っているとヒイロは考えているのだ。
「僕も、色々と調べてみるよ。何か解れば、連絡しよう」
そう言って、ユージンはヒイロの肩を叩く。
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その後、ケイン達がユージンに装備の製作を依頼。ジン達はケイン達も和装に? と期待していたのだが、彼等はそれを否定した。
「同じでは芸がないだろ? 俺らは、別の切り口で行くぜ」
「ふふふ、このイリスちゃんの本気を見せる時が来たようだね!」
「……だそうだよ」
ゼクスとイリスが、今も苦笑いしているケインにゴリ押し。ケインとしては、ジン達同様に和装が良いかと思っていたのだ。手に入れたスキルも【鞍馬天狗】だし。
そんな渋るケインと散々話し合って認めさせたのは……チャイナだ。そう、ケイン達のパーティは、中華風の衣装製作を依頼すると宣言したのだ。
当然、ユージンはそれを快諾した。めちゃくちゃ楽しそうな顔をなさっていた。現在は、イリスの装備について打ち合わせ中だ。
「え、このチャイナドレス……本当にこれで良いんですか?」
「結構、スリットが深いような……」
イリスの要望で描かれていくデザイン画を見て、レンとヒメノが不安そうな表情をうかべている。それに対し、イリスは快活に笑い飛ばした。
「大丈夫ですよー! この程度で照れてたら、コスプレイヤーなんてやれないですし! 別に見られても、減るもんじゃないし!」
イリスさん、コスプレイヤーである事を暴露。彼女は思いの外、開放的な女性らしい。
「良いんですか、あれ」
「女性の服の話題に触れるのは止めたほうが良いんだ、ヒイロ君」
視線をそらしながら、そう呟くケイン。AWOのアバターに汗を流す機能があるならば、きっと今の彼は冷や汗をかいていただろう。
「ゼクスさんはどんなのにするか、決めてるんですか?」
「おう、ジン。俺は、カンフーっぽい感じで行こうと思ってんだ」
キョウカオロチ戦で、ゼクスはジン達の事を気に入ったらしい。エクストラクエストの攻略以降、こうしてフランクな感じで話し掛けて来る様になった。
その後も、男性陣は四人で会話を楽しむ。その会話で解ったのは、ケイン達が大学時代からの友人同士である事。社会人になった今も、ゲームやリアルで遊ぶ仲なのだという事だ。
ケインとゼクスは、イリスを通じて知り合ったらしい。ケインとイリスが大学で出会った友人。イリスとゼクスが、イトコなのだという。
ジン達も、これまでの経緯をケイン達に話す。無論ジンの足や、ヒメノの目の事は伏せるが。
そうなると話せるのは、ジンとヒイロが同じクラスである事……ヒメノとレンが同じ学校である事くらいだ。あとは、ヒイロとヒメノが兄妹である事か。
「兄妹でゲームとか、良いよなぁ。それも、あんなに可愛い妹さんだろ?」
「仲が良くて羨ましいよ。俺は姉とそんなに仲が良い訳では無いからなぁ」
話題は、ジン達の関係やケイン達の関係になっていた。ケインとゼクスは、ヒイロとヒメノが仲良く共にゲームをしているのが羨ましいらしい。
「ジン君は一人っ子かい?」
「そうですよ。だからヒイロやヒメノさんみたいに、仲の良い兄妹がいる事には憧れますね。父方に一人、母方に二人イトコがいますけど」
イトコ達とは、幼い頃に遊んだ事もあった。ジンが陸上に打ち込み出してからは、中々一緒に出掛けたりというのは減ったのだが……大会などがあれば、必ず応援しに来てくれていた。
――そういえば、隼もゲームが好きだったな。
隼とは、母方のイトコの一人。AWOを始めた事を教えたら、ノリノリで来てくれそうな気もする。確か以前はFPS系のVRゲームをプレイしているとかいないとか、そんな話を聞いた覚えがあった。
もう一人の母方のイトコは、今年から大学生で忙しいだろう。父方のイトコは同い年で、何かと自分に対抗心を露わにしていた覚えがある。この二人がゲームに熱中しているという話は聞いた覚えが無い。
「私も姉がいますが、仕事が多忙で中々時間を合わせられませんね……それに、姉は新婚ですし。邪魔は出来ませんね」
そう言うのは、レンだ。
「新婚さんですか……そうなると、今まで居た人が居なくなった感じがして寂しいですよね」
レンを気遣うような視線を向けるヒメノだが、レンはその言葉に苦笑で応えた。
「ふふっ、大丈夫ですよヒメノさん。お義兄様は婿入りですし、そのまま我が家で新婚生活を送っていますから」
「あ、そうでしたか! それなら、そこまで変化は無いんですね」
「えぇ、義兄が出来たくらいですね。ちなみに、シオンさんは姉の大学時代の後輩だそうです」
その言葉に、姿勢良く座っているシオンが頷いた。
「はい。それが縁で、スカウトして頂きました」
雇い主もレンの姉で、付き人になってまだ一年と七ヶ月なのだという。
「へぇ……息ぴったりな印象だったから、もっと長く一緒にいると思っていました」
ヒイロの感想に、ジンとヒメノも同意の頷きをしてみせる。
「ユージンさんは、どうなんすか?」
ゼクスの質問に、ユージンは苦笑する。
「僕は一応、妻子持ちだよ。子供達も全員、成人済みさ。実は既に、孫も居る」
その言葉に、ジン達は驚いた。見た目は三十代前半くらいのユージンである。
――もしかして、外見年齢を変えたのだろうか?
ユージン以外がそんな思考に行き着くが、それにしても若く見える。
というのも、AWOは見た目の変更に制限があるのだ。その理由はゲーム内のアバターと現実世界の身体が大きく異なると、現実での生活に支障をきたす為である。
フルダイブ型のバーチャルリアリティゲームが普及し出した頃に、実際にそういった事件が何件も発生したのである。
だからこそ年齢や性別・体型の調整は、制限を設けられている。特に未成年者は、その制限が強いのだ。
「何を考えているのかなー? まぁ、解らなくもないけどね」
苦笑を深めるユージンが、人差し指を立てる。
「企業秘密なんだけど、特別に教えてあげよう……僕は童顔なんだ」
そんな相変わらずのユージンに、ジン達は苦笑して肩の力を抜く。どこまでが本当なのか解らせない、そんな掴みどころの無さ……これぞ、ユージンという感じだ。
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それぞれのプライベートの話題が終わると、今度はゲームの話題。まず、五日後に迫ったイベントの話題へと移っていく。
「全てのサーバーのプレイヤーが、一つのサーバーに集まる事になるだろ? 処理落ちとかは大丈夫なのかね」
普段は、プレイヤー達は七つのサーバーに分散している。それによって負荷を軽減しているのだが……今回のイベントでは、サーバーの選択は出来ない。それによって発生する不具合について、ゼクスが言及した。
それに対する返答は、ユージンから出た。
「多分、イベント専用のサーバーを用意しているんだと思うよ。始まりの町周辺エリアしかマップが存在しない仕様だろうね」
「そうか……第二エリア以降のマップはイベント対象外だから、そこを削れば良いんだ」
ケインはすぐに、ユージンの言葉の意味を理解した。
「第二エリアって、エリアボスを倒すと行けるようになるっていうやつですよね?」
「あぁ、ジン君。最も、まだ誰もそこに到達出来ていないんだがね。というのも、エリアボスが強過ぎるんだ」
聞けば、ケイン達も二度程エリアボスに挑戦したらしい。しかし北のエリアボスは硬すぎて押し負け、西のエリアボスも動きが速過ぎて瞬殺されたという。
「今は攻略最前線が、エリアボス討伐の為に鍛えてるのよね? レベリングとか、レアアイテム探しとか」
「えぇ、その様です。最も、このパーティを初めて組んだ後からはレイドに参加していませんが……」
イリスの問い掛けに、レンは淡々と答える。最前線の事を思い出しているのだろうか、もう無関係だと言わんばかりの表情である。
それはともあれ、まずはイベントだ。
「イベントでは戦力が四分散されますので、どの門に向かうのかが重要ですね」
「始まりの町も、それなりに広いですからね。門から門への移動も、楽では無いでしょう」
シオンとレンの言葉に、他の面々も頷く。
AWOの始まりの町は、他のゲームのそれと比べると広いマップになっている。
というのもプレイヤーの宿泊できる宿屋や、生産職プレイヤーが活動出来る貸店舗等が用意されているからだ。鍛冶職人として店舗を構えるプレイヤーや、商人として店舗を構えるプレイヤー……更には、喫茶店やバーを開業したプレイヤーも出て来ている。ちなみに今居るユージンの工房も、ゴールドコインを支払って手に入れた貸店舗だ。
そんな訳で、始まりの町は広いマップとなっているのだ。
「しかしアレだな、アークが居る門は避けてぇな」
そんな事を言い出したのは、ゼクスだ。
「あ、名前は攻略掲示板で見た事あります。現時点で、最高レベルのプレイヤーですよね?」
ヒイロの言葉に、ゼクスは頷く。
「最高レベルプレイヤーかぁ……」
「どんな方なんでしょうねー」
ジンとヒメノの言葉に、ケイン達のパーティ……そして、レンとシオンが苦笑する。
「アーク様は、一言で言うとストイックな方ですね」
シオンの言葉に頷いて、レンが補足する。
「彼は、ゲームを誰よりも早く攻略する事に熱中しています。レベル上げやダンジョン攻略も、効率を追い求めている感じですね」
誰よりも強く、誰よりも早く。そういう方針で、アークはゲームをプレイしている。
「だから、周りの連中もガチ勢ばっかだな」
「脇目も振らず、効率的に攻略する事しか考えてないんだよねー」
「そんな訳で、俺達は攻略最前線に加わるのを止めたんだ。折角のフルダイブ型VRMMOだからね、もっと楽しみたいと思ったのさ」
ケイン達の感想に、ジン達は成程と頷く。こうしてのんびりまったりと会話している間にも、アークとその仲間達は攻略に精を出しているのだろう。
「私とシオンさんも、アークさんのレイドに参加はしていましたが……」
そこまで言って、レンはヒメノを見た。
「それも、もうお終いですね。ヒメノさんやヒイロさん、ジンさんとパーティを組みましたから」
「レンさん……」
中二女子コンビが見つめ合う様子を見て、誰もが理解できた。レンはようやく、本当にゲームを楽しめる仲間を見つけたのだ。
「元よりギルバートが居ましたからね。レンお嬢様の為にも、それがよろしいかと。最前線との関わりは、これまでも最低限で済ませていましたが」
シオンの不機嫌そうな言葉に、ジン達は首を傾げた。シオンが他者を”様”付けしないのもそうであるし、彼女があからさまに不機嫌そうなところも初めて見たのだ。
「えぇと、ギルバートさんというのは?」
「直結厨」
ジンの言葉に、イリスが即答する。しかし、その言葉の意味合いがジンには解らない。
「えぇと、女性とのお付き合いとかを主目的にした人って事だよ」
ヒイロがやんわりと説明するが、イリスは立ち上がってヒートアップしていく。
「そんなモンじゃなかったわよ、ヒイロ君! 事あるごとに食事でもどうとか、二人きりで会いませんかとか! ヤる気満々すぎて、ドン引きだったんだから!」
何をヤる気だったのだろうか? ナニか?
「イリス様の仰る通りで、レンお嬢様にまでその様な言葉を向けていたのです。私も、セットで」
「節操無いのよ! 女性プレイヤーと見たら、誰でも声をかけるんだから!」
「その通りでございます。お嬢様と私が抜けた今、残されたリリィ様とフレイヤ様が気掛かりですね」
「その人達も、最前線なんて抜けちゃえば良いのよ!」
「他のメンバーが攻略にストイックな分、ギルバートの軽薄さは目立っていましたね」
「アークもアークで、あんな奴を何で相棒にしてんの!?」
「実力”だけ”はありますからね、ギルバートは」
「あいつ、モテる為に強くなったんじゃない?」
「全面的に同意致します、チヤホヤされて有頂天になっている所も見た事がございますので」
シオンとイリスがヒートアップする中、レンは我関せずとコーヒーを飲んでいる。ユージンの淹れたコーヒーは、何故かホッとする味だった。
「……何か、凄い人がいるんだね」
「最前線の人に、ヒメを会わせたくは無いなぁ……」
ジンとヒイロは、シオンとイリスの会話というか愚痴大会を横目に苦笑いだ。苦笑いしか出来ない。
……
シオンとイリスの愚痴大会が一段落した所で、ジン達はイベントの話題へと戻る。
「さて……ヒイロ君。今度のイベントなんだが、我々三人は君達と同盟を組みたいと思っているんだ」
ケインの言葉に、ジン達は笑みを浮かべる。レンやシオンも、否は無い様子だ。
「勿論、喜んで」
共にキョウカオロチと戦った事もあり、互いの実力は認め合っている。ケイン達の人柄も解っているので、協力関係を結ぶのはむしろ自然とも思えた。
「あ、レーナさん達にも声を掛ける?」
「そうですね、私からメッセージを送ってみます!」
ジンとヒメノのやり取りに、レンとシオンが首を傾げる。
「レーナ、さん?」
「あぁ、そうか。レンさん達は、ログインできなかった日だった」
その事を思い出し、ヒイロがレーナ達との出会いについて説明する。
説明を聞き終えたレンとシオンが、難しい顔をし出した。
「……モンスターをトレインしたプレイヤー……ですか」
「MPKerの可能性が高そうですね」
モンスターをトレインし、他のプレイヤーにけしかける……そういった殺人行為は、当然マナー違反だ。
「MPKは、赤カーソルにならないからな……今、AWOで最も多いPK手法かもしれない」
ケインの言う通り、MPKは犯罪行為と見做されないのだ。その理由は簡単で、故意か偶然かの判断が難しい為である。
例えばモンスターに敵わず、逃げた先にプレイヤーが居た場合……これもトレインと言えるのだが、ノーマナー行為とするかしないか。それは、人によって異なるのだ。
そういった事情から、MPKは規制が困難なのである。
「見るからに初心者を狙ったって事は、確実に意図的ね。そいつらを懲らしめるには、証拠を提示して運営に通報するしかないか」
それなりにレベルが高そうなプレイヤーに、助けて貰おうと思って駆け寄ったのならばまだ偶然の可能性もあった。だが、今回は明らかに初心者の女性四人だ。MPK目的なのは、明白である。
「しかし、そうなると……そのMPKerが、イベントで同じ事をしたりするんじゃないか?」
ゼクスの言葉は、全員に緊張感を齎した。モンスターが群れで襲い掛かって来る今回の防衛戦、MPKerからしたら格好の機会だろう。
「有り得ますね。強力なモンスターを、実力不足のプレイヤーに擦り付ける等の手法が考えられます」
「モンスターだけじゃなく、MPKerまで警戒しないといけないのか」
「厄介極まりないなぁ……モンスターに集中したい所なんだけど」
シオン・ケイン・ヒイロの会話を聞きながら、ジンは何か案は無いかと頭をフル回転させる。
「残り五日の間に、運営にMPKerを通報出来ないかな……」
思わず、そんな言葉が口から漏れた。
ジンの言葉は、丁度誰もが黙っていた為によく響いた。
「……囮作戦か」
「えっ?」
そう言ったのは、ケインだ。その表情は真剣で、尚且つ不敵な笑みを浮かべている。
「有りかもしれません。外見を初心者に偽装して、MPKerにトレインを実行させる」
「その光景を、隠れているメンバーで撮影。証拠として運営に通報……これで、MPKerを駆逐出来るのでは?」
レンとシオンが具体案を出す。ジン達も、成程と頷いた。
問題は、誰が囮役を担うかだ。しかし、この場に最適な人物が居るのだ。
「ジン、行けるか?」
ヒイロの言葉に、ジンも頷く。
「無論」
忍者スイッチが入ったジンが、真剣な表情で頷いてみせる。
「一人よりは、二人の方が良い気がするけれど……」
「それなら、私がやります! 私なら、たいていのモンスターは一撃で倒せます」
そう言ったのはヒメノだ。
かたや最高のAGI、かたや最高のSTR。極振りプレイヤーコンビによる、囮作戦を展開する事が決定するのだった。
和装パーティと中華パーティの完成。
チャイナドレスは良いぞ……。
次回投稿予定日:2020/6/8