短編 激動☆人生ゲーム
【作者からの謝罪】
日頃、忍者ムーブ始めましたをご閲覧下さる皆様へ謝罪致します。
悪乗りしました。
「あ、皆揃ったね」
「はい! 行きましょうか♪」
ギルドホームの中にある、新婚夫婦ルーム。今は一部屋しかないが、その内増えると予想されているその部屋では一組の男女が寛いでいた。AWOで今、もっとも有名な夫婦……ジンとヒメノである。
ギルドメンバーが揃うまで、部屋でイチャイチャするのが日課。そしてメンバーが揃ったらすぐに大広間へ向かい、仲間達と共に冒険や生産活動を開始するのも日課。
しかし、今日はちょっといつもとは違った。
ジンとヒメノがリビングに向かうと、ヒイロがある物をテーブルに広げていた。
「ヒイロ、それは?」
新婚夫婦がやって来たのに気付いたメンバー達は、穏やかな表情を浮かべて二人を迎えた。問い掛けられたヒイロが、柔らかく微笑んで視線をテーブルの上の箱に落とす。
「ユージンさんが作ったゲームだって。人生ゲームらしいよ」
「人生ゲーム? なんでまた」
それを受け取ったヒイロが言うには、ジン達の事情を考慮して作ってみたものらしい。というのも、【七色の橋】のメンバーであるミモリとカノン……二人が住んでいるのは、九州。関東地方に住むジン達とは、中々リアルで会う機会は少ない。
そうすると、皆で揃ってこういったゲームをする機会は少ないのではないか……そう思い立ったらしく、彼はゲーム道具の作成をしてみたそうだ。
「僕達の事、そこまで気に掛けてくれてるんだね……」
「ありがたい事だよ、本当に……今度、ユージンさんに何かお礼をしないとね」
微笑み、頷き合う高校生コンビ。
「急ぎの要件も今日は無いし、今日はこれで遊んでみるのはどうかな?」
ヒイロの言葉に、ハヤテが続く。
「俺は賛成ッス! 折角マキナさんも加入したんだし。親睦会って事で、どう?」
マキナの加入……それは、【七色の橋】としてはとても喜ばしい事だ。そんなハヤテの意見に、皆が揃って賛成の意思を示す。
「あ、ありがとう……なんか、照れくさいけど。でも、嬉しいな」
照れ笑いをするマキナは、これまでの彼と比べて幼さを感じさせる。それも無理はないだろう……見た目は二十代前半だが、現実の彼はまだ中学三年生なのだから。
「それじゃあ、いっちょやってみようか!」
……
ルールブックを見ると、サイコロを振って出た目の数だけマスを進むというオーソドックスなルール。しかし、このゲームには変わった部分があった。
「何か、ルートが大きく二つに分かれているね? 何かあるのかな……」
「うーん……多分、マスに書かれている内容で分けているんじゃないかな」
「何が書かれているかは、そのマスに止まるまで解らないんだね」
「この辺、流石VRゲームだよね!」
「流石に全員でやると、長くなりそうね」
「そうですね……あぁ、十三人ですし二人一組で行っては如何でしょう? 私はこちらで観戦しておりますので」
シオンの申し出に、他のメンバーはそれは申し訳ないと口にするが……シオンは苦笑して首を横に振る。
「それに、人生ゲームには嫌な思い出がありますので」
何があった、シオンさん……。
そんなシオンの気遣いに、ジン達は結局折れる事に。そうして二人一組を作るのだが……。
「まぁ、ですよねー……」
「カップル率が高いギルドだし、ね……」
まず、ヒイロ&レンのギルマスカップルペア。
「頑張ろうね、ヒメ」
「はいっ♪」
そして、ジン&ヒメノの新婚夫婦ペア。この二人を分けるだなんてとんでもない。
「アイネとこういうゲームするの、初めてッスね」
「そうね、確かに」
ハヤテ&アイネの最凶カップルペア……この呼称、いい加減勘弁してあげた方が良いだろうか。
「よっしゃ、勝つぞー!」
「こういうの好きだよね、センヤちゃん……」
ヒビキ&センヤの幼馴染カップルペアは、やはり鉄板だろう。
「よろしくお願いします、マキナさん♪」
「ん、うん……よろしくね」
そして周囲に勧められ、マキナ&ネオンペア。あ、こいつら絶対カップルになるわー……ペアで良いでしょうか。
最後は、ミモリ&カノンの親友ペアだ。ここだけ女子……と思いきや、二人は中々に乗り気だった。
「頑張るわよ、カノン」
「う、うん……そうだね、皆で……こういう遊び、してみたかった……から」
どうやら遠方に住んでいる為か、仲間達とこういったゲームで遊ぶのが楽しみらしい。純粋に良い娘さん達で、カップル達もホッと一安心だ。
という事で、人生ゲームスタート……なのだが、その最初のマスを見てジン達は嫌な予感に襲われた。
そこに書かれていたのは……【激動☆人生ゲーム】というものだったのだ。
……
「えぇぇぇ……邪神に身体を奪われて天使に殺されるって、何だこれ……」
「スタート直後からおかしい内容に……」
「……こっちは、切り離された空間で怪物に襲われて死にかけてます……」
「絶体絶命すぎる……」
「神様に転生させて貰ったんですけど……」
「しょっぱなから、激動が過ぎるッスよ!?」
「あ、神様に異能を貰いました!」
「こっちは邪悪な神様に呪われたんだけど……」
「あ、でも勇者と聖女の息子として生まれましたね」
「うん、ツッコミどころが多すぎないかしら!?」
「あっ……と、特殊部隊に、スカウト……された、ね……」
……
「あ、建国しました」
「収入が2倍になる……おぉ! これは良いね、ネオンさん」
「つ、次に2が出たら……あの黒いマス、絶対止まっちゃいけないヤツよね!?」
「よ、よし……行くッス……!! ああぁぁっ、2があぁぁっ!!」
「オーノー……」
「『並行世界との生存戦争に敗れて、世界は滅びました。スタートに戻る』……」
「ムリゲー過ぎる……」
「次は拙者達でゴザルな!!」
「行きましょう、ジンさん!!」
「お、おぉっ!? 6!! 6が出たよ!!」
「えー、なになに……『根源に至る魔法を習得しました、おめでとう。7回だけ、振った目を2倍の数字に出来ます』だって」
「変則ルール多過ぎじゃない!?」
……
数時間後。
「こ、これで……ゴール……!!」
「皆ゴール出来ましたね!!」
「いやぁ、凄まじい内容ばっかりだったね……」
「最後に実の息子と真剣勝負して引き分けてなかったら、ヤバかった……」
「こっちは何度世界を滅ぼされたか……黒幕、許すまじ……」
「並行世界の事情、哀し過ぎたね……」
「ってか、こっちの方も邪悪な神がエグかった……」
「あー……『倒した神は身代わりだった! 本物の邪神が現れた! 一回休み』ね」
「スケール壮大過ぎるよ、この人生ゲーム……」
感想を口にし合いながら、ジン達はユージンにある要望を伝えようと決意する。
『トランプだけで、一先ず良いです』と……。
ちなみに後日、ユージンが製作したトランプが魔王軍のメンバーをモチーフにした物だったのは、余談である。
【作者からの謝罪】
日頃、忍者ムーブ始めましたをご閲覧下さる皆様へ再度、謝罪致します。
悪乗りが過ぎました。
短編集はここで一旦は終わりとしまして、登場人物紹介の後は第十二章に突入致します。
引き続き、忍者ムーブ始めましたを宜しくお願い致します。
次回投稿予定日
2021/8/30 1:00(短編の登場人物)
2021/9/1(第十二章)