11-26 エリアボス攻略を今度こそでした
集団PKerとの戦いを終えた、その翌日。ギルド【七色の橋】のギルドホームで、ジン達は一息ついていた。
マキナは昨夜の内に、正式に【七色の橋】に加入した。今はまだ少し緊張気味だが、その内彼も慣れていく事だろう。
「無事に終わって、良かったね」
「だなぁ……一時はどうなる事かと」
ジンとヒイロの会話に、他の面々も苦笑しながら頷く。
「しかし、何故あれだけのPKerが集まったんでしょうか……?」
ヒメノの疑問はもっともで、PKギルドでも百を超えるプレイヤーが集まるのは稀だ。AWOにおける最大のPKギルドとされていたのも、三十人前後の中規模ギルド程度だ。ちなみに、そのギルド【漆黒の旅団】は壊滅している……他ならぬ、ジン達の手によって。
「……あぁ、これか。理由が解ったッスよ」
そう言ってハヤテがシステム・ウィンドウを可視化させる。そこには、とある掲示板の様なページのとあるスレッドが表示されていた。ハヤテがそのページに辿り着いたのは、謎の男・ユアンにここを見ると良いとアドバイスされたからである。
「……【異世界の橋崩し】?」
「異世界の、【七色の橋】を崩すという意味でしょうか……」
正確にその意図を汲み取ったレンだが、その声には怒りを滲ませている。
「BAN……こいつが首謀者みたいです。これってもしかして……」
「うん、あの偽物騒動の主犯だね」
ヒビキの予測に、マキナが頷く。犯罪者プレイヤーとなったバンはネームを隠せない為、マキナもその名前を把握出来ていたのだ。
「逆恨みで、ここまでするとは……ちょっと、理解に苦しむなぁ」
ジンはそう言うが、VR歴が長いハヤテとマキナはそうは思わない。
VRMMOというのは特殊なゲームであり、そこで得た人間関係から人生が変わる事も少なくはない。その最たる例が、この【七色の橋】だろう。
良い悪いは別として、VRMMOをプレイする事に生活の大半を費やすという者は決して少なくない。
ゲーム内での事を現実の事の様に重要視し、自分が受けた不利益に対して報復行為を企てる……そういう考えを持つ者がいる事を、彼等は知っていた。
最も、バンの場合は自業自得以外の何物でもない。
「まぁ、アイツは垢BAN確実だし……名前通りだね」
「そっスねー。で、こっからが本題かな?」
ハヤテとマキナの二人に視線を向けられ、ヒイロが頷いてみせる。
「あぁ。今度こそ、エリアボス攻略だな」
集団PKのせいで、昨夜のエリアボス攻略は断念せざるを得なかった。今日は、そのリベンジだ。
「消費したアイテムは、PKer達が……ドロップした、物で補填できたし……」
「ですが、黒字にはなりませんね」
カノンとシオンの言葉に、ミモリが首を縦に振る。
「えぇ、数だけ。私達が作った物の方が、品質は遥かに上だもの。はぁ、本当にやってくれたわ」
調合専門の生産プレイヤーであるミモリと、レンやネオンが作ったポーション類……その性能はAWO全体で見ても、上位に位置する。PK達が手に入れられるポーションとは、段違いの性能なのだ。
「そうそう、ちょっと疑問だったんだけど……PKerって倒すと全てのアイテムをドロップするけれど、倉庫に保管している物なんかはどうなのかしら?」
アイネの疑問に、ハヤテが頷いて答える。
「倉庫のアイテムは、ドロップしないッス。ただ、PKerが倉庫を使えるのはギルドホームだけッスね」
ほうほう、と聞き入るアイネ。すると、ハヤテはマキナに視線を向ける。そうしたのは、その先を説明させる事でギルドに早く馴染めるように……そういった意図を多分に含んでいる。
そんなハヤテの気遣いに感謝しつつ、マキナは説明を引き継いだ。
「そして、ギルドホームを持つには作るしかない。町には入れないから、出来合いを購入できないんだ。生産職人のプレイヤーが仲間にいれば問題ないけれどね」
とはいえ、PK目的のプレイヤーが生産活動のスキルを育てるのは非常に稀だ。その数は、圧倒的に少ない。
「非常に稀有な例外が、【暗黒の使徒】だね」
「第二回でも、決勝トーナメントに進出してたね?」
センヤがそう言うと、マキナは苦笑して頷く。
「彼等は決闘PK専門のギルドで、正面から決闘を申し込むんだ。拒否されたら、素直に引き下がるらしい。だから犯罪者落ちは一人もいないし、町にホームを持っているそうだよ」
へぇー、と感心するVR経験が浅いメンバー。そんな彼等に、ミモリも苦笑しながら補足を入れる。
「ある意味では、一番異質……しかし、一番マトモなPKerって言われてるらしいわね。PKによるデメリットの、アイテムドロップはお互いに無しの設定らしいし」
彼等は単に、リア充を殴りたいという欲望に従っているだけ。相手の意思も尊重するので、通報者も今のところは居ないとの事。快くは思われていないが、蛇蝎の如く嫌われているという訳ではないらしい。ちなみに、順調にメンバーが増えているらしい。何でだろうね。多分、原因はジン達にありそうだけど。
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その後、【桃園の誓い】や【魔弾の射手】が合流。無論、ギルドに所属しない方針のリリィやクベラも一緒だ。しかし今回は、更にもう一人……。
「今回は、君達の厚意に甘えさせて貰うよ。恩に着る」
そう言うのは、黒衣の男。そう、今回の事件を聞き付けて助太刀に駆け付けたユアンだ。
「いいえ、昨夜は俺達の方が助けて頂きましたし」
昨夜のPK戦を終えた後、ジン達はユアンも今回のエリアボス戦に誘ってみたのである。そうしたところ、彼の返答はOKというものだった。
「流石に、ソロでエリアボス攻略はしんどいからね。声を掛けて貰えたのは、僥倖だ」
「よろしくお願いします、ユアンさん」
互いに笑顔で、握手を交わすヒイロとユアン。彼がこの同盟チームに参加するならば、風林火山陰雷のユニークスキル保有者が勢揃いする事になる。
――ユアン……第一回イベント以来、公の場に姿を見せていない謎の人物……何者なんだ、一体?
ヒイロとユアンのやり取りを見つつ、ドラグはそんな事を考える。
ユアンについて解っているのは、彼がユニークスキルの保有者である事……そして、銃と刀が一体となった奇形の武器を所持している事。そして、ジン達と面識がある……という事だけだ。
所属ギルドは? フレンドは? スキル構成は? 一切が謎に包まれている人物。
昨夜のPK戦を思い返して、ドラグは懸念する。彼があの場に駆け付けたのは、果たして偶然なのか? と。
昨夜、ログアウトしたドラグはアレク達にSNS……RAINで確認を取った。PKを指示した者が居るのか? と。
それに対する答えは、NO。つまり、自分達の策とは無関係の事件だったという事になる。
最も、バンがPKに手を染める切っ掛けになったのは、[クレイドル大草原]での偽物騒動だ。それを指示したのはアレク達だった為、全く無関係ではないのだが……ドラグはそこまで、考えが至っていない。
それならば、誰が? 一番怪しいのは、あの場に駆け付けたユアンではないか? ドラグはそう考えた。
――こいつを信用して、良いのか……?
ドラグは気付いていない……その懸念が、何を前提にしているのか。
ユアンがもし昨夜のPKに関与していたとしても、アレク達には一切の影響が無い。では、影響があるのは?
――この同盟チームに、何かしようものなら……。
自分達と無関係なユアンがそれを実行しても、一向に構わない……自分達が手を汚さずに済むだけだ。
しかしドラグはその事を忘れ、ユアンを警戒するのだった。
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「……今頃、奴らは北のエリアボス攻略か」
ギルドに所属していないが故に、行動に制限が無いカイト。現在は第三エリア攻略の情報を集める為に、各々が分散して行動している情報掲示板のメンバー・ジェイク。彼等はひっそりと合流し、第三エリアへ向かう為にパーティメンバーを募集している集団に紛れていた。
「えぇ、昨夜は色々あったらしいですからね……しかし、どうにも腑に落ちません。あの低俗プレイヤーが何故、同盟チームの動きを察知出来たのか……」
そう言うジェイクに、カイトは「確かにそうだな」と頷いてみせる。彼もその件については関与していない、という態度だが……それはポーズだ。
――まぁ、嫌がらせにはなったな。
バンに情報を流したのは、カイトである。偽物騒動でバンに指示を出していたのは、カイトとジェイクの二人だった。
偽物騒動以降、二人はバンを放置……というよりも、策の為の駒としては使い物にならないと見限った。しかしバンは、件のスパイ用SNSでしつこくメッセージを送って来たのだ。
ジェイクは、彼をブロックして捨て置いた。カイトも同様の措置をしてはいたのだが……彼の耳に、同盟チームがエリアボスを攻略するという情報が入った。
カイトは「これは使える」と思い、SNSで捨てアカウントを作成。そのアカウントを使って、バンに指示を出した……「PK専門サイトを利用して、同盟チームを潰せ」と。
成功するとは思っていなかったが、ジン達への嫌がらせにはなる。そう思い、独断でバンを動かしたのだ。
「まぁ……どの道、彼はもう不要な駒でした。勝手に突っ込んで、勝手に消えただけです」
「だな。ともあれ、地固めだ。次の策までに、第三エリアに行かないといけない」
「えぇ、その通りです」
今回の一件が、自分の首を絞める事になるのだが……カイトはまだ、その事に気付いていなかった。
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ジン達がエリアボス攻略に乗り出して、現実世界では二時間後……ゲームの中では六時間が経過した。
「ダイス、来いッ!!」
そう言って、ゲイルが大盾を構える。とはいえ、構え方は普通の大盾の使い方ではない。
「っし、【ハイジャンプ】!!」
ゲイルの大盾を足場に、ダイスが高く跳躍する。その際、ゲイルが曲げていた膝をタイミングを合わせて伸ばした事で、その力も加わり通常よりも少し高い所までジャンプ出来ていた。
「よし、喰らえ!! 【フォールスラスト】!!」
南側第二エリアからプレイヤーを進ませまいとする、最後のボス・クラーケン。その脳天にダイスの青龍偃月刀が突き刺さる。
そのダメージが決め手となり、クラーケンの巨体がグラリと揺れる。そのまま、浅瀬に倒れるクラーケン。ダウン状態に陥ったクラーケンに対し、同盟チームのメンバーが一斉に駆け出した。
尚、【魔弾の射手】はここまで銃ではなく、通常武器を使用しての戦闘だった。昨夜のPK戦で、大半の弾丸を消費してしまったせいだ。
しかし、この戦闘が本日最後の戦闘だろう。故に、彼等も残された弾丸を全て消費するつもりで、従来の装備に切り替えた。
「【魔弾の射手】総員、全力攻撃!!」
『了解!!』
銃を構えた黒い現代風衣装の部隊が、一斉射撃を開始する。
その弾丸の雨にさらされるクラーケンに向かって、疾走するヒイロ。その右手に宿った鬼神の力を解き放つのは、ここだと判断する。
「決めるぞ……【幽鬼】!!」
鬼神の霊体を召喚したヒイロが、両手の武器を大太刀に変えて突進する。
「【一閃】!!」
ヒイロと鬼神が交互に武器を振るう内に、【一閃】のクールタイムは終了。そして再度【一閃】を発動し、【チェインアーツ】で果敢に攻め立てる。
「っし、チャージ完了!! 【一撃入魂】、喰らえぇッ!!」
FAL型≪アサルトライフル≫から放たれた弾丸がクラーケンに命中すると、一気にゴッソリとHPが吹っ飛んだ。果たしてハヤテは、どれ程のMPを込めたのやら。
「ヒメ、これが最後の戦闘でゴザル!! 出し惜しみ無しで良いでゴザルよ!!」
「はいっ、行きます!! 【縮地】!!」
一日に回数制限のあるスキルや武技……それも惜しみなく使用して、ジン達はクラーケンのHPを削っていく。
「【一閃】!!」
脇差≪大蛇丸≫を振るい、クラーケンを斬り付けるヒメノ。その一撃で、クラーケンのHPがまた減った。というか、もう虫の息では無いだろうか。
そしていよいよ、クラーケンのHPも残り僅かとなった所で……。
「ここの担当は、俺とケイン君だね。さぁ、行こうか?」
「えぇ、問題ありません……【其の徐かなること林の如く】」
「では、俺も……【其の知り難きこと陰の如く】」
最終武技の発動で、オーラを身に纏った二人。その力を以って、エリアボスの命を喰らい尽くす算段だ。
そこへ、ジンが不敵な笑みを浮かべて加わる。
「既に規定回数もこなした故……【其の疾きこと風の如く】】」
紫色の九尾のオーラを纏い、ジンが両手の小太刀を構えた。
「これは負けていられないね……【オーバードライブ】」
レーナもまた、決着を付けるべく自己強化スキル【オーバードライブ】を発動。そのステータスを強化して、一振りの日本刀を構えた。
「あっ、それ……」
カノンが彼女の持つ刀に気付くと、レーナはクスッと笑ってみせた。
「ふふっ、買っちゃった」
「……よし、行ける!!」
薙刀を構えて力を溜めていたアイネは、クラーケンに向けて駆け出す。彼女のユニークスキル【百花繚乱】は、武技に主眼を置いたスキル。そのスキルレベルが上がり、彼女は新たな力を得たのだ。
それは溜めを行う事で、武技の性能を向上させるというもの。その名も【性能昇華】……正に、その名前通りの力だ。
「決めるぞ!!」
「っしゃあ!!」
次々と、クラーケンに迫るメンバー達。そして立て続けに放たれる、研ぎ澄まされた刀剣の閃き。殺到する魔法攻撃。渾身の力を込めた格闘攻撃、殺意の籠った銃弾。容赦のない攻撃に曝されたクラーケンのHPバーが、みるみる内に減っていく。
そして……。
『第二エリアボスモンスター【エンシェントクラーケン】を討伐しました』
ジン達は無事に、クラーケンを討伐する事に成功したのだった。
「あっ、F・A・B……」
今回のフィニッシュを決めたのは、拳で渾身の一撃を叩き込んだヒビキだった。
「い、良いんでしょうか……僕、ろくにダメージも与えられていないのに……」
周囲の仲間達に、申し訳なさそうに体を縮こませるヒビキ。しかし、ジン達は笑顔を浮かべていた。
「しっかり戦ったから、得られたモノでゴザルよ。遠慮せず、受け取るのが良いでゴザル」
「そうだよ。それにヒビキ君の果たした役割は、大きいと俺は思うよ」
マキナの言葉に、ヒビキは「そうでしょうか?」という表情を浮かべる。
そんな彼の不安を払拭する様に、マキナはハッキリと頷いて見せた。
「フェンリル戦では、ジンさん達と一緒にヘイト稼ぎ。ミノタウロス戦ではノックバック攻撃で敵を怯ませたし、アリジゴク戦では遠距離攻撃を殴って落としたじゃないか。今回だって、触手を殴って後衛を守っていただろう? 見事な働きだったし、助かったよ」
そんなマキナの言葉に、他の面々も頷くのだが……ここで、一つ補足しておこう。
フェンリルは、北側の第二エリアボス。ミノタウロスは東、アリジゴクは西側のボスである。
つまるところ、この同盟チームは六時間で第二エリアのボスを全て討伐した……という事になる。ちなみに、ボス戦よりも移動時間に時間がかかったのは、御愛嬌。
それを成したのは、やはりユニーク保有者の力に拠るところが少なくはない……が、それだけでもない。なにせ、集まったメンバーがメンバーなのだ。
得意分野に特化したメンバーが多いギルド【七色の橋】に、最前線クラスのプレイヤー集団【桃園の誓い】……戦闘経験が何故か豊富と目される【魔弾の射手】。更に、クリティカルオバケのユアン、最前線プレイヤーの支援・回復職であるリリィ。クベラだって、商人としてのツテをフル活用して回復アイテムを搔き集めてみせた。
要するに、エリアボスは倒されるべくして倒されたのだ……短時間で。
「S・A・Bも得られたし、遅れは取り戻せた……かな?」
「どうッスかねぇ、この先にあるクエストやら宝箱やらは……もうゲットされてるかもしれないッス」
「まぁ、ともかく行ってみようよ」
「で、ゴザルな。この橋を行けば良い……でゴザルな?」
「た……多分?」
第三エリアへの道はクラーケンが遮っていた。水面よりも下に建造された橋……クラーケンを倒したからだろうか、不思議と海の少し水位が下がった。クラーケンの体積だけでそれが出来るはずがないのだが、ゲーム的な仕様だろう。
そして水位が下がった事で、よくよく見なければ気付けないそれを認識する事が出来るようになった。
第三エリアの最初の街に向けて、歩いていく同盟チーム。そんなチームの中にあって、ドラグは口元が引き攣るのを堪えられずにいた。
――バカか!? バカなのか!? エリアボスを一気に討伐だと……!? 正気の沙汰とは思えねぇ……!!
立場はさておき、真っ当な感性なのがこちら。エリアボスとは一般的には難敵であり、「はい、北は終わった! 次、西ね!」なんてノリで倒す相手ではないのだ。
そんなドラグも徐々に戦闘による興奮状態が落ち着き始めると、エリアボスをハシゴという衝撃が落ち着きをみせはじめる。すると、ある点について思考が至った。
――待てよ? 今の……それだけじゃない、ここまでのエリアボス戦も……? しかし……いや、でも……? 普通、だった……のか……?
というのも、今の戦闘……いや、今日のエリアボス四体との戦闘全て。それらは明らかに、真っ当なプレイだった。
それは討伐の速さの事でも、発揮した火力の事でもない。討伐に至るまでの、経緯……その全てである。
同盟メンバーは皆が皆、自分の役割分担をしっかりとこなした。その上で、ボスの弱点を見出し……そして、一度目のダウンでボスの傾向を暴く。その先は封殺、メンバーの全火力を以ってボスを潰す。
――運営から得た知識で……いや、待て? フェンリルの弱点を見出したのは、マキナ。彼は運営の知識を得られる立場では……それに、クラーケンでは【魔弾】のクラウドだったし、アリジゴクではイリスだった。
何より、ミノタウロス戦ではリリィが弱点を見出した。彼等の洞察力を褒めるべきなのだが……特に、リリィのスタンスを考えるとおかしく感じてしまう。
――彼女はアイドルという立場であるから、その影響力を考慮している聡明な少女だ。決して、一勢力には加担しないという方針を徹底している……これは、確実だ。俺も最前線で、散々見て来たのだから間違いない。
特に、リリィは他のメンバーとは違う。彼女は、徹底して一勢力に所属しないという方針を貫くプレイヤーである……今は、結構この同盟に顔を出しているが。
その徹底ぶりは、正直そこまでする? というレベル。そして、それを目の当たりにしてきたのは自分自身だ。
――運営しか知りえない、情報……ユニークスキルの情報や、エクストラクエストの情報は間違いなく知っているはず。もしかしたらエリアボスの情報は、特に重視していなかっただけかもしれない。
ともあれ、まだ自分がスパイだと気付かれた様子はない。この先も彼等の様子を監視し……不正の明確な証拠を挙げる。
それはドラグが、”本当の仲間”と認識しているアレク達……そして、アンジェリカの為になる。そう信じている……今は、まだ。
「はぁっ!? 何だ、コレ!!」
「え、どういう事でしょうか……?」
「……ここへ来て、新しい要素ですか」
――何を驚いているんだ? どいつもこいつ……も……?
そこでドラグは、自分の眼前に表示されているウィンドウに気が付いた。気が付けば、既に南側の第三エリアに辿り着いていたらしい。
『全ての第三エリアに到達しました。第七のステータスが解放されます』
次回投稿予定日
2021/8/10 1:00(第十一章の登場人物)
2021/8/12 短編
次話から、短編集となります。
あの人のあれこれや、あの二人のあれやこれ、名前だけ出ていたあの人や、あの人の本名があれだったり。
二日に一回のペースで投稿しますので、短いのは許して下さいませ。