11-25 幕間・事件の結末
PKを目論んだバンは、マキナにトドメを刺されて強制ログアウトさせられた。
「クソッ……あの野郎……ッ!! 今度は、闇討ちで……!!」
大人数によるPKが失敗したので、他の方法で報復を……そんな事を考えた彼だが、自分の立場を理解していなかった。
マキナは、彼に断言した。バンを、通報すると。
彼は既に偽物騒動の際、運営から悪質行為による厳重警告をされていた。そのメッセージが目の前にあれば、思い出すだろうか?
小一時間ほど、怒りのままに怒鳴り散らしたバンこと三坂良武。彼はログイン出来るようになるまで、寝ようと横になる。
その時だった……チャイムが鳴ったのは。
「あぁっ!? 今、何時だと思ってんだよ!!」
怒鳴り散らしたせいで、近隣の居住者から苦情が来たのだろう。そう思った彼は、応対を父親か母親に押し付けて狸寝入りを決め込む事にした。
しかし、彼に訪れた現実はそんな生易しいものではない。
「良武!! お前、何をやらかした!? 警察が来ているぞ!!」
警察……その単語が耳に入った事で、彼はようやく思い出した。自分が既に、後がない所まで追い詰められている事を。
「あんた!! 一体……一体、何をしたの!! ろくに勉強もバイトもせず、ゲームばっかりやって……それで何で、警察が来るのよぉッ!!」
悲痛な母親の泣き叫ぶ声に、良武はまずいと顔を蒼褪めさせた。
何とか、この状況を脱する方法は無いか……そんな逃げの思考に陥るも、そんな事が許されるはずもない。
「とにかく来い!! 事情は警察から聞く!!」
「ま、待ってくれ!! 親父、俺は!!」
「黙れバカ息子ッ!!」
怒りに震える父親の怒鳴り声に、良武は身を震わせ……そして、居間で待つ警察官の元へと引き摺られていった。
警察官が告げたのは、アナザーワールド・オンラインというゲームにおける彼の違反行為について。
他人の結成したギルド名を騙り、意図的に騒ぎを起こして他者の評判を貶めようとする行為。これは、詐欺と誹謗中傷による人権侵害に該当する。
更にその後の報復行為……そして彼は学生でありながら、VRを活用した仮想風俗を利用していた事も親の前で暴露された。
我が子の行いに愕然とする両親の冷たい視線を浴びながら、良武は真っ青な顔色で俯き震える事しか出来なかった。
事情聴取の為に、警察官に付き添われてパトカーに乗る良武。それ以降、彼がゲームに触れる事は二度と無かった。
次回投稿予定日
2021/8/10 0:00(本編)
2021/8/10 1:00(第十一章の登場人物)
2021/8/12 短編集スタート