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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十一章 関係が深まりました

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209/598

11-17 偽物に遭遇しました

 ネオンは聞き覚えのない声が、【七色の橋】のメンバーと名乗ったのを聞いて思わず駆け出してしまった。

「ネオンさん!?」

 そんなネオンの様子に、すぐに気が付いたのはマキナ。彼は急いでネオンの後を追い掛ける様に走り出した。

「へ? あっ!」

「ま、待って……!」

 反応が遅れてしまった【魔弾の射手】の二人も、慌ててネオンとマキナを追う。


「え? ちょっ……!」

「ど、どいてですー!」

 ネオンとマキナが人だかりの隙間に潜り込むと、その隙間を埋める様にプレイヤーが集まり出す。

「はぁ!?」

「何で俺らがどかなきゃいけねーんだよ!」

 ガラの悪そうなプレイヤーに怒声を浴びせられ、二人は顔を見合わせる。

「……他の場所を探すです」

「だね。そうだ、念の為……」


 シャインとルナが他の隙間を探そうと駆け出すのを確認したプレイヤー達は、小さく舌打ちをする。

「二人程、入れちまったか……」

「あぁ……」

 どうやら彼等は、意図的にシャインとルナの進路を塞いだらしい。騒ぎを聞き付けて駆け付けた様子から、【七色の橋】に縁のあるプレイヤーだと判断したのだ。

 その理由は……やはり、【七色の橋】のメンバーを名乗るプレイヤーに関係しているのだろう。


……


 一方、人だかりを掻き分けて騒動の張本人を前にしたネオン。

「おら、そいつを寄越せ!!」

「ふざけんな!! 俺が倒したモンスターからドロップしたんだぞ!!」

「お前、【七色の橋】のメンバーを敵に回す気か!? あぁ!?」

 どうやら、彼等はモンスターのドロップしたアイテムを巡って言い合いをしているらしい。


 片方の青年は、店売りの防具を身に着けたプレイヤー。言い方は悪いが、何の変哲もない青年だ。

 問題はもう片方。【七色の橋】が販売している和装と、刀を身に着けた青年だ。当然、その青年に見覚えなど無い。

「【七色の橋】だからって、調子に乗るなよ!!」

「何だと!? お前、覚悟は出来てるんだろうな!!」

 ヒートアップする両者は、今にも掴み合いを始めそうだ。


 それを見ている野次馬からも、口々に罵声が飛ぶ。

「何がトップギルドだ、ふざけんな!」

「ちょっといい成績を残したからって、偉ぶるんじゃねぇ!」

「引っ込め! デカい顔すんな!」

「潰れちまえ! クソギルド!」

 それは明らかに、【七色の橋】を標的としたものだ。作為的なものを感じる敏いプレイヤーは口を噤んでいるが、考え無しに同調するプレイヤーも徐々に増えていく。


 そんな展開に、マキナは顔を顰める。

 これは明らかにヤラセであり、【七色の橋】の悪評を流そうとしている……それは、一目瞭然だ。恐らくは言い合いをしている二人も、野次を飛ばしたプレイヤーも仲間グルだろう。


 この場にはネオンが居るが、彼女はまだ顔が売れていない。第三回イベントの入賞者ではあるが、知られているのは名前と製作した品物だけなのである。それを証明するには、彼女がシステム・ウィンドウを晒す必要がある。それは明らかにまずい。


 やはり、ここは顔だけで【七色の橋】のメンバーとわかる人物……現在は別行動をしているシオンに報告し、事態の収拾について相談するべきだろう。


――とりあえず、この場は下がって【七色の橋(ほんもの)】と誰もが解るシオンさんに報告した方が……。


 そう思っていた、その矢先。二人の男に向けて、一人の少女が歩み寄った。

「あなたは【七色の橋】のメンバーじゃありません!」

 そう、本物の【七色の橋】のギルドメンバー……ネオンである。あからさまな小芝居も、彼女にとっては我慢がならなかったらしい。普段の穏やかな表情とは打って変わり、見るからに「私、怒ってます!!」という顔である。


「ちょ、ネオンさん!!」

 慌てて引き留めようとするも、既に言い合いをしている二人はネオンを睨み付けていた。

「はぁぁ!? 俺が【七色の橋】のメンバーじゃないだと!? どこにそんな証拠があんだよ!」

「私はネオンという、【七色の橋】のメンバーです! あなたがうちのメンバーだと言うなら、証明するのはあなたの方です!」

 装備欄からローブを外し、本来の姿を晒したネオン。桃色の髪と素顔が露わになり、ローブに隠されていた和装が衆目に晒される。


 マキナは、ネオンの行動に内心で頭を抱える。顔を晒すだけでなく、名前まで明かしてしまうとは思わなかった。

 とはいえ、聞いた話では彼女はVRMMO歴が浅い。それに仲間やギルドを大切に思っている、心優しい少女なのは理解している。それを思えば、こういう行動をとるのも理解出来なくはない。


――まさか、これが狙いだったりするか? いや、俺らがここに来たのは偶然だ。流石にそれは無いか。


 ともあれ、マキナはネオンを守るべく側に駆け寄る。

「ネオンさん、落ち着くんだ……ギルドを大切に思う、君の気持ちは解るけど……」

 不審がられぬ様、マキナもローブを装備から外して顔を晒した。彼女一人を、矢面に立たせるわけにはいかない……そう思ったからだ。同盟関係にあるとはいえ、何故そこまでするのか? それは自分でも解っていない。


「はっ!! お前こそ、誰だよ!! 大方、掲示板で買った装備を着て【七色ウチ】のメンバーになったと思い込んだヤツだろ!」

「そうだ、偽物は引っ込んでろ!! これは【七色の橋】と、俺の問題なんだよ!!」

 さっきまで言い合いをしていたと思ったら、今度は同調してネオンに怒声を浴びせる。流石に、これはまずい状況だ。


「俺はギルドメンバーではないが、【七色の橋】と交流を持っている! 彼女は本物の、【七色の橋】のメンバーだ!」

 マキナは思わず、ネオンを庇おうと声を張り上げた。それで状況が好転するとは思えなかったが……それでも、ネオンを守らなければと思ったのだ。

 当然、偽物達にとっては格好の標的となるのだが。

「うるせぇ! 外野はすっこんでろ!」

「どこの馬の骨ともしれないカスが! お呼びじゃねぇんだよ!」


 そんな二人に、グルらしき野次馬も二人に罵声を浴びせる。

「そーだそーだ! 引っ込め!」

「【七色の橋】の偽物め!」

「つーか、【七色の橋】の野郎も消えろ!」

「やるならさっさとやれよ! それで垢バンされちまえ!」

 段々と、騒ぎは拡大していく。そしてついには、戦闘を仄めかす様な野次まで出て来てしまった。【七色の橋】の名前を喧伝して、騒動を起こす……やはり、悪評を流すのが目的なのだろう。


 マキナは、唇を噛み締め悔しそうなネオンの肩に手を置く。このままでは、このか弱い少女まで風評被害を受けてしまう。

 どうすれば、彼女を守れるか。どうすれば、この事態に収集を付けられるのか。それを必死になって考え……それでも、答えは出ない。


 しかし、救いの手は思わぬ所から差し伸べられた。

「へぇ……【七色の橋】ねぇ。しかし、そっちのオッサンは見覚えが無いな。そっちの彼女は、確かに会った事がある」

 ローブで顔を隠した、一人の人物。その隣には、小柄な少女が立っている。

「何だと!? 今度はどこの馬の骨だ、テメェは!!」

 偽物がそう怒鳴りつけるも、少年は平然とした様子でシステム・ウィンドウを表示させる。


「俺か? 俺は……」

 少年がシステム・ウィンドウを操作すると、ローブが光の粒子となって消え……その素顔を白日の下に晒した。

「こういう馬の骨だよ」

「な……っ!?」

 燃える様な、赤い髪。鋭い視線は、偽物を射抜くかの様だ。共にいる少女もローブを脱ぎ去り、茶色の髪をツインテールにした見目麗しい素顔を晒す。


 その二人の乱入に、偽物は目を見開いて表情を引き攣らせた。

「な、何で【森羅万象】が……!?」

 そう、ネオンが【七色の橋】のメンバーだと証言したのは、知らぬ者など居ない有名なプレイヤー……【森羅万象】のアーサーとハルだった。


「そっちの彼女は、ジン達と一緒に行動しているのを見たぜ?」

「だね。エリアボスの待機列で、挨拶した時に居た娘だよね!」

 そんな事を言うアーサーに、隣にいるハルも同意する。騒動を見守っていた野次馬達が、ザワザワとざわめき出した。


 偽物が【七色の橋】のメンバーではないと、印象付ける事には成功した。そこで更に流れを引き寄せる為に、アーサーは言葉を重ねる。

「偽物はお前の方だろ? それとも、俺が嘘を言っているとでも?」

「な……ヨ、ヨソのギルドのくせに、口挟むんじゃねぇよ!!」

「でもでも、そっちのピンク髪の娘は本物だよ? じゃあ、あなたが偽物なのは間違いないんじゃない?」

「うるせぇんだよ、ヨソ者のくせに!! 口出しすんな、ヨソ者が!!」

 ヨソ者、ヨソ者とがなり立てる偽物。想定外の事態に弱いのか、最早何を言っても聞く耳を持たないようだった。


 話にならない……と言いたげなアーサーは、あるものに気付いた。

「……タイミングの良い奴だな……狙ってないよな、アイツ」


「消えろ、ヨソ者め!! 【七色の橋】の事情に口を出すんじょねぇ!!」

「じょねぇって……あんた、少しは落ち着けよ。まぁ、丁度良いんじゃないか? ヨソ者じゃなきゃ良いんだろ?」

「あぁ!? 何だって!?」

 劣勢を悟り威嚇するような男を見て、アーサーは冷笑する。言い逃れ出来ない相手が、すぐそこまで迫っているのだ。


「なら、誰もが知っている【七色の橋】のメンバーの前で……申し開きをするんだな」

 アーサーが言うと同時に、空を指差す。そんなアーサーの示した先に視線を向けた野次馬の中の一人が、迫り来る異変に気付いて声を上げた。

「お、おい! あれ!」

 その先には、空。今日は、抜ける様な快晴だ。そんな青空を、黒い何かが飛んでいる。()()()()()()()を、風に靡かせて。


「……おいおいおい! まさか……!」

「飛んできた!?」

 言うが早いか、その黒い影が騒動の中心に向けて急降下して来た。

「おぉ、流石だねぇ!」

「相変わらず目立つな、あいつ……()()だって自覚、ねぇのかな」

 ハルとアーサーは、そんな影を見て呑気な事を言う。呑気にもなるだろう、彼が降り立てば問題は一気に解決するのだから。


 そして、空から舞い降りたのは……。

「騒動が起きていると聞いたでゴザルが?」

「ネオンちゃん、マキナさん! 大丈夫ですか?」

 この二人の顔と名前を、知らないはずがない。騒動の渦中にあった、【七色の橋】を代表するプレイヤー……最速の忍者と、一撃必殺の姫巫女である。


「ジンさん!?」

「ヒメちゃん……っ!!」

 名前を呼ばれたジンは、二人に向けて頷いた……ヒメノを、お姫様抱っこしたままで。


「……あー、恥ずかしくねぇのか? お前」

 アーサーに声を掛けられ、ジンは目を見開く。

「おぉ、アーサー殿。久方振りでゴザル! えぇと、最近、感覚が麻痺して来た気が……」

「……バカップルめ」

 内心、ちょっと羨ましい。自分もこんな風に、ハルをお姫様抱っこ出来る関係になれたら……なんて考えているアーサー。しかし、そんな事はおくびにも出さない。


 そして、アーサーはジンに向けて問い掛ける。

「まぁ良い。それより、ジン……そこの和服野郎が『自分は【七色の橋】のメンバーだ』って息巻いていたんだけど、そうなのか?」

 答えが分かり切っている質問を、ニヤリと笑いながらするアーサー。中々に良い性格をしている。


「ふむ、誰?」

「知らない人ですね」

 ジンとヒメノが、あっさりと切って捨てた。それはもう、バッサリ。


「……っ!!」

 偽物は顔を真っ赤にして、ジン達を睨んでいるのだが……残念な事に、その程度で堪えるほどヤワなジンさんではない。


「第一、彼は≪飾り布≫をしていないでゴザル。拙者達のギルドメンバーは、全員≪飾り布≫を装備している故」

 そう、ジンの言う通り偽物は≪飾り布≫を装備していない。持っていないのだ、そんな物は。

 逆にネオンは、ヒメノと同じ色の≪飾り布≫を羽衣の様にして装備している。


「あー……確かにお前ら全員、ヒラヒラさせてるな」

「これは販売していないでゴザルからな。見分けるのに役立つとハヤテが言っていたのは、こういう事でゴザったか……」

 どうやら、ハヤテの入れ知恵だったらしい。流石である。


「……ちっ!!」

 盛大に舌打ちした偽物は、システム・ウィンドウを表示させる。そんな偽物に、マキナが声を掛けた。

「そうそう、アンタの顔はスクリーンショットで撮らせて貰ったよ」

「おぉ、流石でゴザルなマキナ殿」

 あの騒動の中にあって、彼はしっかりと対策の為の材料を確保していた。その言葉を受けて、偽物は顔を青ざめさせる。


 マキナに視線で促され、ジンは偽物に向けて通告する。

「今回は控えるが、次は無い。通報されたくなくば、【七色の橋】を騙るのは止めるでゴザル。努々、忘れるな」

 偽物にしっかりと釘を差すが……最後は語気を強める辺り、ジンも憤慨しているのだろう。

 それを察したのか、偽物は悔しそうに表情を歪めながらその場でログアウトした。


「何だ、やっぱりあの人ニセモノだったですか!」

「【七色の橋】の名前を利用して、悪巧みしようとしてたのかなぁ?」

「そりゃそうだろ! 【七色の橋】が、あんな事するはずないもんなぁ!」

 野次馬の中から、そんな声が聞こえてきた。その声は、非常に聞き覚えのある声である。


 すると、これまで静観していたプレイヤー達も口々に便乗する。

「だよな! 忍者さんの居るギルドだぜ?」

「偽物が消えて、せいせいしたな!」

「ざまぁ!!」

「ってか、さっきから野次馬の中にも変な奴居たよな?」

「もしかして、アイツの仲間なんじゃねぇの?」

 ここぞとばかりに、周囲のプレイヤーに向けて呼び掛ける声。これは、偽物が【七色の橋】であるはずがないと信じていた者達だ。


 人だかりから離れ、今の偽物騒動を広く知らしめようと動き出すプレイヤー達。彼らはよく見ると、紫色の布をどこかしらに身に着けている。

 ジンは知らない……その紫色の布を装備するのが、()()()()()()のメンバーである証だという事を。


――お任せ下さい、頭領様!!


 はい、【忍者ふぁんくらぶ】のメンバーです。本当にありがとうございました。


************************************************************


 人がまばらになり……というより、距離を開けて遠巻きに様子を窺っているのだが。ひとまず騒動は収まり、ジン達もホッと一安心という状態。

「……じゃ、俺らはこれで」

 役目は終わったとばかりに、踵を返すアーサー。しかし、そんなアーサーにジンは声を掛ける。

「少々待って欲しいでゴザル、アーサー殿」

「……何だよ?」

 礼なら要らない、と続けようとしたアーサーだが……ジンは、システム・ウィンドウを開いていた。


――うん? 何で?


 戸惑うアーサーだったが、すぐにジンの思惑に気付いた。目の前に、自分のシステム・ウィンドウがポップアップしたのだ。


『【ジン】からフレンド申請を受信しました。申請を許可しますか?』


「はぁっ!?」

 何でこのタイミング!? と思いながら、ジンを見るアーサー。するとジンは、気まずそうに笑っていた。

「いやぁ、フレンド登録したいと思っていたでゴザルが、なかなかタイミングが……」

 シリアスな雰囲気は、もう霧散し切っていた。もしかしたら、そんなモノは無かったのかもしれない。そう思わせるくらい、普段通りの態度を見せるジンである。


「良かったじゃない、アーサー! ジンさん達の事、気にしてたんでしょ?」

「ばっ!! べ、別に気にしてなんて……!!」

「えー、だって北側の第二エリアを重点的に攻略しようって言ったの、アーサーじゃない。ジンさん達に会えるかもって思ったからじゃないの?」

「ち、ちがっ……!! そ、そんなことは……!!」

 どうやら図星らしい。ツンデレかな?


「こ、これで文句ないだろ!! じゃあな!!」

 アーサーはOKボタンをタップすると、さっさと踵を返して早足で歩き去っていく。

「あ、待ってー! えぇと、私も……ヒメノさん達も、お願いしていいですか?」

「はい、もちろん! あ、じゃあこちらから送りますね!」


 慌てて、ハル宛にフレンド登録依頼を送るジン・ヒメノ・ネオン・マキナ。それを一気に登録したハルは、にっこり笑って一礼する。

「これからは、フレンドさんとしてよろしくお願いします! それじゃあ、また!」

 そう言い残し、慌ててアーサーを追い掛けるハル。しかしアーサーは然程遠くまで行っていない。むしろ、ゆーっくり歩いている。


「ちゃんとハル殿が追い付ける様に、歩幅を緩めていたでゴザルな」

「なんだかんだ、優しそうな人ですよね」

 気難しい性格と思われるが、悪い人物ではない。それがジン達の、アーサー評だった。


……


 アーサー・ハルと入れ替わるように、駆け寄って来たのはローブを装備した二人組。そして、同じくローブ姿の三人組だ。

「ネオン様、マキナ様。大丈夫ですか!?」

「遅くなって悪い!」

「済まない、人垣で近寄れなかった……」

 そう声を掛けるのは、シオンとダイス……そしてクラウドだ。三人も加勢しようとしたらしいが、人だかりのせいで近付けなかったらしい。


 同じ目にあっていたシャインとルナも、二人の無事を喜んだ。

「明らかに、わざと通さない為だったです! 陰湿!」

「ジン君とヒメノちゃんが来てくれて、助かったよ……!!」

「いやいや。報せてくれて感謝するでゴザル、ルナ殿」

 聞けばシオン達に連絡をすると同時に、ジンとヒメノを呼んだのはルナだったらしい。ジンの脚ならば、間に合うのではとのこと。これはナイスな判断であった。

 無論、ジンとヒメノは直接[ヴォノート砂漠]からここまで来た訳ではない。[ミラルカ]のポータルに転移した上で、全速力で駆け付けたのだ。


「ごめんなさい、迷惑を掛けてしまいました……」

 そう言って、ショボンとするネオン。そんなネオンを、ヒメノが優しく抱き締める。

「悪いのはあの人達だよ、ネオンちゃん。だから謝らなくて良いんだよ」

 優しく諭すようなヒメノだが、ネオンの表情は浮かない。


 そんなネオンに、マキナが歩み寄った。

「まぁ、迂闊に飛び込んだのは軽率ではあったかな」

 マキナの淡白な発言に、他の面々は厳しい視線を向け……そして、言葉を詰まらせる。何故ならば、マキナが心配そうな表情を浮かべていたからだ。

 それはいつもの落ち着いた様子でもなければ、初めてジン達を目の当たりにした時のキラキラした表情でも無かった。


「だから動く前に、一度相談して欲しい。迷惑なんかではなかったけど、心配はしたんだ」

 優しく、言い聞かせる様なマキナの言葉に、ネオンは目を見開き……そして、自分の無謀な行動を恥じた。

「……はい、心配かけて、ごめんなさい」

 そんなネオンの様子に、マキナは柔らかく微笑んで頷いた。

「うん、それじゃあもう謝るのは終わりで良いんじゃないかな。そろそろ、ここから動いた方が良さそうだし」

 確かに、未だ周囲のプレイヤーはジン達に視線を向けている状態である。これは流石に、居心地が悪い。


「一度、仕切り直しで良いでゴザルかな」

「そうですね。ホームに帰還致しましょう」

 ジン達はその場でログアウトし、【七色の橋】のギルドホームへと集まる事にした。今回の件について、仲間達に報告する必要もある。


************************************************************


「まさか、忍者が来るとは思いませんでしたね……」

「【七色の橋】の悪評を流すつもりだったのにな」

 事の成り行きを、現地で見守っていた二人の人物。目立たない様に、店売りの装備で身を固めた二人はそんな会話を小声で交わす。


「で? 次はどうするんだ、ジェイク」

 アイスブルーの瞳を向けられ、ジェイクと呼ばれた青年は苦笑する。

「水面下で、地固めですね。毎回の様に騒動が起こっては、あちらを本気にさせるでしょう……切り札を整えるまでは、慎重にいかないといけません。それに、我々もギルドや情報掲示板の活動がありますからね」

 ジェイクの言葉に、カイトはつまらなそうな表情を浮かべた。


 ジェイク……いや、アレク達の最近の悩みの種がカイトだ。カイトが感情に任せて行動しない様に、釘を刺す必要がある。

 それでも彼を見捨てられない理由が、二つある。


 まず彼は、彼等の中で最もレベル・スキル熟練度も高いプレイヤーなのだ。中学生という長いプレイ時間を確保できる立ち位置なのだから、それも当然だろう。

 しかしその分、負けず嫌いで強引な面がある。故に、大人組で手綱を握っている必要があるのだ。


 そしてもう一つの理由。彼はメンバーの中で、アンジェリカに誰よりも近しい存在。彼を軽んじて、アンジェリカに嫌われたら敵わない……それが、カイトを放逐できない理由であった。


 そんなカイトの反応は、ジェイクを安心させる言葉だった。

「はいはい……アンタがそう言うなら、仕方ないか」

「相変わらず、カイトは聞き訳が良くて助かります。今回の連中は、なかなかごねて無駄な時間を取らせてくれましたからね」

「まぁな。それに……()()()()()()()()()()()()()()()

「えぇ、例の策を発動する事が出来るかもしれません」

 小声でそんな会話をしながら、二人は大草原を去っていった。

次回投稿予定日:2021/7/23(掲示板)


皆さん、お察し頂けましたか?

今回の犠牲者が登場しました。

やっとアーサーの良いヤツっぷりが描けました。

そんなアーサーと、大天使ハルちゃんの活躍にご期待下さい。


ちなみに実は細々と、絵も描いていました。


【絵心の無い作者がアーサーを描いてみた】

挿絵(By みてみん)


【絵心の無い作者がハルを描いてみた】

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 偽物による【七色の橋】の悪評を流そうとしたアレク一味ですが、【森羅万象】のアーサーとハルの擁護と、駆けつけたジンとヒメノの二人によって何とか解決しましたね。 そしてフレンドになるジンとア…
[一言] 更に絵心が尽きた感想が届いた 想像しやすくなったでゴザルよ 十分に絵心あるでござったよ
[良い点] いつも楽しませていただいてます! [一言] ↑から続きだがいつも楽しませていただいてますが流石に今回の話はないかなと思ってしまって初カキコ 今はネトゲやってませんが昔(ROやマビノギやら…
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