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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十一章 関係が深まりました
202/573

11-10 幕間・とある魔法職の独白

【微糖注意報】

糖分供給源が【七色の橋】だけとは限らない。

 来てしまった……いや、ここにあの人が居るかは解らないけど。

 AWOゲームの中で、あの人は「今週の土日は文化祭がある」と言っていた。珍しく、現実リアルの事を口にしていたので印象に残った。嘘です、あの人の言葉だから覚えていただけです。


 そうしていたら、気になってしまって……気が付けば私は、この県の高校の予定を調べてしまった。だ、だって!! 気になったんだもん!! あの人の住まいが、この県だという事は雑談の中で聞いていたし!!

 そしてこの県で今日、文化祭をやっているのはこの日野市高校だけだったのだ。


 ヤバい、私ヤバいよね? あの人の事が気になるからって、居場所特定して押し掛けるとか……ストーカーじゃないし!!


 や、やっぱり帰ろうかな……?

 しかし、朝早くから行動していた私のお腹は正直だった。自分の腹部から空腹を訴える音が鳴り、せめて何かを食べてから帰る事にするのだった。


……


 校庭の出店は人だかりが出来ていたので、私は校内の方へと向かう事にした。何だか、変なテンションの人が多いのは何でだろう。

「ほ、星波君に……彼女が……」

「絶望した……!! 今、ソウル○ェム持ったらマッハで真っ黒になる……」

「何故、寺野にあんな、可愛い恋人が……俺なんて、女子にキモがられてるのに……」

 あぁ、うん。カップルでも目撃してしまったのかな。


 ……だ、大丈夫だよね? あの人、彼女とか……居ないよね?


 そして私は、とある教室に気が付いた。へぇ、喫茶店かぁ。こういう文化祭の喫茶店は好き。皆で頑張って手作りしたお店の雰囲気とか、努力を感じられるんだよね。

 うん、このお店で軽く食べて帰ろう……ストーカーみたいな真似は、もうやめよう……。


 と思っていたら何か、目立つ集団が居た。美男美女揃いのその一団……色々ツッコミどころはあるんだけど、私にとってはある一点がすべてである。


 そこにAWOにおける、私達【聖光の騎士団】にとって最大のライバルギルドの面々が居た。どこからどう見ても【七色の橋】です、本当にありがとうございました。


 え、何でぇ!? い、いや……そうだ、あの人が言っていたじゃない。【七色の橋】のギルマスと忍者さんは、同じクラスなんだと。

 あれ? 彼等と話している二人の生徒……え!? ま、まさか……!?

「あ、いらっしゃいませ! お一人ですか?」

 ライデンさんっ!? ゲームより若いけど、面影がある!! う、嘘……本当に!? ハッ、黙っていたら迷惑だよね!!

「は、はい! 一人です!」

「では、お席にご案内致します。こちらへどうぞ」

 ……AWOとは違うけど、やっぱりライデンさんだぁ……。


 それにしてもライデンさん達と【七色の橋】以外、お通夜モードみたいなんだけど……。


************************************************************


 サンドウィッチとコーヒーを味わいながら、私はライデンさんを見ていた。隣はもしかして、ギルバートさんかな。うん、アバターが派手派手な分、地味に見える。可もなく不可もなしって感じだ。

 二人は【七色の橋】と楽しそうに会話していて、第二回イベントの事件は無事に解決したのだと実感出来た。


 しばらくして、【七色の橋】の人達が店を出た後。それを見送ったライデンさんとギルバートさんが、笑い合っている。

「明人、ありがとな。お前が居てくれたから、仁達と和解出来たと思うんだ……」

……ギルバートさん、もっとライデンさんに感謝して。ほら!! もっと感謝して!!


 そして、ライデンさんは本名はアキトさんって名前なんだなぁ……うん、素敵な名前。いや駄目だ! 今の私、かなりヤバい人だ!

 一目見る事ができただけで、満足しよう。名乗り出たって迷惑だろうし、帰ろう……私は彼のネトゲ仲間、それだけで十分だよ、うん……。


 伝票を手に、私は会計へと向かう。しかし、会計の人はそこに居なかった。

「あ、あれ?」

 私が戸惑っていると、慌ててライデンさんが来た。

「済みません、会計の担当が席を外してしまっていまして……伝票、お預かりしますね」

 流石、よく見てるなぁ……ライデンさんは、いつだって視野が広い。パーティやギルド全体を見ているライデンさんと、目の前のアキトさんが同一人物なのだと解る。


 しかしながら、よく見ているのはそれだけではなかった。

「……あれ? もしかして、ルー?」

 え?……え!? バレた!? 確かにアバターは、リアルからそんなに、弄ってないけど!


 私が黙っているからか、ライデンさんはバツが悪そうに頭を下げる。

「あ……失礼しました。済みません」

 ノー!! ルーです!! 私、ルーなんです!!

「い、いえ……あの、ライデンさん……ですよね?」

「あ、やっぱりルーだった。奇遇だね、今日は遊びに来たの?」

 き、気付いてくれたなんて……!! でも、それまでの経緯を考えると罪悪感が……!!


「え、えぇと……まぁ」

 この場でストーカーまがいの事をしたと聞いたら、ライデンさんの文化祭を台無しにしてしまうかもしれない。後で、AWOで会った時に謝ろう……。

「ゆっくりしていってね。今日はずっと店にいるから、何か困った事があったら声を掛けて良いよ」

 優しくされたら、泣いちゃいそうです。

「はい……ありがとうございます」


************************************************************


 昼休憩の時に少し時間があるというライデンさんと、ギルバートさん。二人に誘われて、私は一緒にお昼御飯を食べる事になった。罪悪感、パネェ……。

「へー、隣の県なのか。しかも同い年とはねー」

 ギルバートさんこと鳴州さんがウンウンと頷くが、今までの様な下心を感じない。逆に違和感だけど、本来はこれが普通なんだよなぁ……。


「豊塚さんって呼んでもいいのかな? アバ名だと、ちょっとアレだよね?」

「あ……はい、その……麻衣でも、大丈夫です、ハイ」

 明人さん……現実では地味目な見た目だけど、穏やかな口調と態度は大人っぽさを感じる。鳴州さん? うん、まぁ……アバターほど超美形ではないけど、普通な感じ。良くも悪くもない……この評価に、他意は少ししか無いよ。


「でも、わざわざここまで良く来たね。知り合いでも居るのかな?」

「……えぇと、それは……」

 口ごもる私を見て、鳴州さんが何かに勘付いたらしい。徐に席を立つ。

「わり、ちょっとトイレ」

 そそくさと去って行く鳴州さん……まさか、気付かれたかな。


 隠し通すのは、私のなけなしの良心が咎める。素直にバラして、謝ろう……。

「今日、文化祭だって……言ってましたよね」

「あぁ、ゲームでも話してたね。準備とかで、いつもよりログインが遅くなるから」

「……今日この地域で、文化祭をやってるのってココだけで……」

 調べてしまった事を、彼は気付いたらしい。

「も、もしかしたら……ライデンさんに、会えたりしないかと思って……その、ごめんなさい」

 気持ち悪いと、思われてないかな……嫌われたり、しないかな……。


 そんな恐怖を、明人さんが解消してくれた。

「そっか、わざわざ会いに来てくれたのか……会えて嬉しいよ、麻衣さん。良かったら、連絡先交換してくれないかな?」

 気持ち悪がられてない? 嫌われてない? 不気味じゃない? 私の不安を拭い去るように、明人さんが優しく微笑んでくれる。


「は、はい……!!」

「ありがと、良かったら連絡してね」

 ……あぁ、私はやっぱりこの人が好きだ。

次回投稿予定日:2021/7/5(本編)


「あれ? 鳴州と倉守は?」

「昼休憩。流石に一日中、働かせはしないよ」

「ふーん……で、あいつらに彼女が居たら?」

「一日中、みっちり働いて貰うに決まってんだろ?」

「最低だな、お前……」

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― 新着の感想 ―
[一言] ん? ライデンとルーに砂糖の兆しが! 塩!塩を用意するんだ!甘い空間魔法が発動しようとしてるぞ!急げ!ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘
[良い点] >……ギルバートさん、もっとライデンさんに感謝して。ほら!! もっと感謝して!! 素質を感じますねw
[一言] 鳴州空気読み、グッジョブ(*^ー゜)b
2021/07/04 05:53 しおりすぐ無くす読書好き
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