11-06 幕間・生徒達の独白
作者はドSなので、焦らしプレイに走ります。
済みません、冗談です。
最後の一人を描きたかったのと、5日間の合間にちょっとオマケをと思い、幕間をうpします。
俺の名前は、【茂田 武】。日野市高校に通う二年生だ。
サッカー部に所属する俺は先輩達からの信頼も厚く、後輩達も俺を慕って付いて来る。次期キャプテンの座は間違いないな。
加えて俺は学年二十位以内に入るくらいに成績も良いし、ルックスだってイケている。天は二物を与えずというが、容姿・頭脳・運動神経と三物を与えられた俺は特別って事かな?
去年の文化祭は、俺とデートしたいっていう同級生や先輩女子が殺到して参ってしまった。まぁ俺みたいに将来有望な男を見れば、女は遺伝子レベルで俺を求めるのだろうさ。ほら、優秀な男の遺伝子を求めるってやつ?
今年の文化祭も当然、俺とのデートを望む女の子達が殺到すると思ったのさ。だから、校内開放日は予定を開けていた……んだけど。
「ねぇ、見た!? 星波君の執事姿!! ヤバ過ぎない!?」
「あぁん、私の案内されたテーブルが星波君の担当だったら良かったのにぃ!!」
「仕方ない、午後にもう一回凸る!!」
「ガチ勢www」
どいつもこいつも、星波とかいうヤツの話ばかりしている。どうやら一年らしいが……執事? どのクラスの出し物だ?
予定が無い俺は、ブラブラと一年の出し物を巡る事にした。サッカー部の後輩達が声を掛けてくれるのが、何故か胸に染みる。
しばらく歩いていると、何やら長蛇の列が出来たクラスがある。しかも、並んでいる大半は女子生徒だ。ははぁ、ここに星波とやらがいるのか?
ふっ、この俺と張り合うだけのスペックがあるのか……並んで比較すれば、解るだろう。良いだろう!! その挑戦受けて立つぜ、星波とやら!!
……
そして、俺は肝心の星波とやらが担当するテーブルに首尾よく座ったのだが……。
「お待たせ致しました、こちらホットコーヒーと手作りサンドウィッチになります。コーヒーは淹れたてですのでお熱くなっております」
スマアアアアト!! なに、こいつ!! 丁寧だね!? しかも、うん……君はジ〇ニーズ事務所とかに所属しているのかな? してない? もったいない!!
「そういえば、サッカー部の茂田先輩ですよね?」
あれ? 俺の事知ってんの? 俺なんて、お前さんの事を今日まで知らなかったよ?
「あ、あぁ……俺の事、知っているのかい?」
「クラスの友人が、誇らしげに話していました。サッカー部には、凄い先輩が居ると。先輩が居れば、全国大会も夢じゃないとか」
……あいつらぁ(涙)。
「俺も僭越ながら、応援しています。今日は折角のイベントですし、ゆっくり羽を伸ばして下さい。では、どうぞごゆっくり」
イケメンが過ぎる……!! 負けたぜ……星波、お前がナンバーワンだ……。
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私は二年の【日高 都】……陸上部の副部長を努めている。
中々チャンスが無くて、彼に会えなかったけれど……文化祭の最中なら上級生が下級生のクラスを覗いても、不自然ではないわよね。
私が会おうとしているのは、寺野君……陸上界において期待の新星と呼ばれていた、彼だ。
不幸な交通事故で陸上生命を断たれたのは、私も知っている。自分で走れないのは無念だろう、気持ちは解るわ。
でも、彼はトレーナーやコーチ役をやらせても輝けるはず! これまで積み重ねてきたノウハウを駆使して、将来のスターを育て上げる! 彼なら出来る、絶対に出来る!!
なので、私から彼に直接頼み込むのよ。そして始まる、先輩と後輩のラブストーリー……ふふふ、悪くないわ。
こう見えて、出るとこ出てるし? 後輩達からは告白される事もあるし? 陸上部内では、厳しいけど優しい先輩として大人気な私ですから!!
寺野君も、きっと私みたいなタイプは嫌いじゃないはず。陸上という共通の話題もある事だし、急接近しちゃうのは約束された未来よね!!
……
えげつない行列に並ぶ私は、うんざりしていた。
「星波君のテーブル! 星波君のテーブルに案内されますように!!」
「キャー、やっぱり格好良い……! 執事姿とかまじエモすぎ!!」
「素敵過ぎ……文化祭デートに誘うしか無いわー!!」
星波君、ねぇ……あー、彼ね。まぁイイ感じだとは思うけど……私の好みからは外れるかな。
顔だけじゃ駄目なのよ、やはり。男は何を成し遂げたか、何を成し遂げるかよ。実績もルックスも兼ね備えた、寺野君みたいな男子がやはり最高なのよ。見る目無いわね、ミーハーな子達はこれだから。
そして私が案内されたのは、件の星波君のテーブルだった。周りの女子の視線が痛い。
「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりになられたら、お声を掛けて下さい」
立ち振る舞いは中々ね。まぁ、高一男子としてはだけどさ。
あ、寺野君居た。成程、彼は会計担当ね。それならさっさと注文して、さっさと会計に行きましょう。そうすれば、寺野君と話せるわ。
「えーと、アイスコーヒーとサンドウィッチで」
「かしこまりました、少々お待ち下さいませ」
手早く用意したのか、注文した品はすぐに出て来た。というか、数分で出て来るとは……中々に出来るわね。
耳を済ませると、パーテーションで仕切られたスペースから変な声が聞えてくる。「回転率を上げろぉ!!」とか「ポテトが足りねぇ!! 買って来い!!」とか「トラ○ザム!!」とか。最後のは何よ。
うん、サンドウィッチは手作りみたいね。中々に美味しい。コーヒーも出来合いじゃなく、ちゃんと淹れたものみたいね。意外としっかりしたお店だわ。
さぁ! いざ会計へ! そして寺野君と、ゆっくりお話を……!!
っていねえぇぇぇ!! なんでぇぇぇ!!
代わりに座っていた女子に聞いたところ、休憩中らしい。そりゃああるよね、休憩時間……くそぅ、もう模擬店に戻らなきゃ。
でも、諦めない!! こうなったら、明日よ!!
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あぁ、俺はなんてツイているんだ。あの【七色の橋】の二人と、同じ学校に通っているだなんて。
おっと、俺は【伊毛 映真】。日野市高校に通う、高校二年生だ。アナザーワールド・オンラインでは【エム】という名でプレイしてる。エムという名は、天才ゲーマーな仮面のライダーからとった……訳ではない。
俺が所属してるギルドは、フデドラゴンさん率いる【絶対無敵騎士団】。ギルドメンバーは三十人と、そろそろ中規模といった所だ。先日の、第三回イベントで五人くらいメンバーが増えたからな。
いつか必ず、【聖光の騎士団】を超える最強の騎士ギルドになるという目標を掲げている。
さて、俺を含めてこの学校には【絶対無敵騎士団】のメンバーが五人いる。その内の一人が一年なんだが、そいつがある事に気付いたのだ……【七色の橋】のヒイロとジンが、うちの学校にいると。
昼休みに様子を覗きに行って、俺は愕然とした……髪型は違うが、ジンそっくりの男子生徒は……なんと障害者用の杖を使っているのだ。
聞けば彼は、一年前に交通事故に遭って選手生命を絶たれた陸上選手らしい。成程、”ジン”があれだけ速いのは、彼が陸上選手だったのもあるのだろう。
そんな【七色の橋】の二人だが……俺はある事に気付いた。
「一般公開日になったら、【七色の橋】のメンバーが遊びに来るのでは?」
【七色の橋】が有名なギルドになったのは、その成績も当然原因の一つ。
しかし、それだけではないのだ。イケメン鎧武者に、格好良い忍者、ヤンチャっぽいイケメンの銃使い。イケメン三人衆もやはり、有名なところだ。
だが何より!! 美女と美少女だろう!! レンにヒメノ、アイネの巫女風美少女トリオ!! 和装メイドのシオンさんに、調合職人のミモリさんと鍛冶職人のカノンさん!!
しかも噂では、更なる美少女が三人追加されたと聞く。巫女風美少女トリオは既に……誠に遺憾ながら既に、彼氏がいるが!! まだ六人……フリーの女子が六人いるのだ!!
「俺はシオンさんみたいな、大人の女性が……」
「ミモリさんって、アレだよな……甘やかしてくれそうな、お姉ちゃんって感じで……」
「うーん、俺はカノンさんかなぁ。ほら、何かオドオドしててさ……守ってあげたくなる感じ」
「新人の三人って多分、この子達だろ? おしゃぶりに絡まれてた……青髪の娘、ギャンカワ……」
「ンンン? ピンク髪の子やばいな。めっちゃタイプ!!」
「俺は黒髪の子かなぁ……結構、キュートじゃん?」
既に、【七色の橋】とお近付きになる為の算段は付けている!! 第三回イベントでお互いに入賞したという事実が、俺達の距離を近付けるのだ!!
そこから交流を深め、ゆくゆくは……ちなみに俺はミモリさん狙いだ!!
……
彼等に近付く為には、まずは第一次接触を果たす必要がある。具体的には「あれ? もしかして……あの、AWOって知っている?」と声を掛ける。うん、自然!! これがやはりベストだな。
五人で連れだって彼等のクラスの列に並んでみるのだが……長蛇の列が出来ていた。何だよ、この行列のできる喫茶店は。
「星波君はどのテーブル!? あそこね!!」
「絶対にあの席に行ってやるんだから!!」
あぁ……星波ファンのせいか……クソッ、イケメンはこれだから!!
そうして順番を待っていると、ようやく俺達の番になったのだが……星波の担当テーブルから、大分離れた場所に通されるハメに。
「これじゃあ、偶然を装うのは難しいな」
「いや、標的をヒイロからジンに変えるんだ。見ろ、ジンは会計係だ。必ず接触のタイミングがある!」
「それだ! それでいこう!」
コーヒーとフライドポテトを平らげて、俺達は早々に会計へ。しかし、そこに座っていたのは寺野ではなかった。
「150円のコーヒー5つに、200円のフライドポテト2つですねー。お会計が1150円になりまーす」
地味めな眼鏡女子(メイド姿)が会計係になっていた。もしかして休憩だろうか……しかし、チャンスはまだある!! 明日の朝イチで、もう一度来よう!!
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私は【根津 茶久子】、花も恥じらう高校一年生の乙女である。
私のクラスには一人のアイドル的存在がいる。彼の名は、星波英雄……ジャ〇ーズも真っ青なイケメン男子だ。物腰柔らかで、成績も運動神経も優れている人気者。クラスの女子達は皆、彼に熱を上げている。
しかし私は、星波君よりも気になる男子がいる。その生徒の名前は、寺野仁。元・陸上選手だ。
元というのは、彼が不幸な交通事故に巻き込まれた事に起因する。彼はその事故で障害を負い、右足が不自由になってしまったという。
その為だろう……彼は入学当初、塞ぎ込んでいる様に見えた。
私も文系というか、読書が趣味の本の虫。それ故に、クラスの女子とはそんなに仲良く無い。
同じ様に、物静かな彼を見ていると……何故か、落ち着く自分が居た。
そうこうしている内に、私は彼を目で追うようになっていた。
しかしある日を境に寺野君は、徐々に明るくなっていった。昼食を星波君と食べるようになり、二人で携帯を見ながら話す姿を私は見守っていた。何を話しているのかな?
でも、寺野君が明るくなったのは良い事だ。何より、塞ぎ込んでいた彼が見せる笑顔は、輝いて見えた。
これは、間違いない。私はどうやら、寺野君の事が好きなのだろう。
……
それからも、私の寺野君観察は毎日続く。寺野君はすっかり明るさを取り戻していた……これは、私も変わらなければならない。
彼に好きになって貰う為に、やれることは何でもするのだ。脱・根暗女だ。
そうして夏休みに入る前……私は夏休みで会えない時間が増えるので、いつもよりも寺野君を長めに見つめる事にした。
彼等はいつも声を抑えているので、話の内容が全く分からない。なので、読唇術を覚えてみた。
すると【七色の橋】とか、【エクストラクエスト】とか、【第二エリア】とか……何の事だろう。そういえば寺野君と星波君、すっかり名前で呼び合う仲になっているんだよね。
……
夏休みに入って、私は寺野君の過去の情報を集め始めた。彼は、陸上界期待の星と呼ばれていたらしい。凄いなぁ。
寺野君はどんどん明るくなっていっている……私も、彼の隣に立った時に見劣りしない様にしなければ。
髪を染めるとか、そういうのは無しの方向で。きっと彼は、清純そうな女の子が好きなはず。お化粧も少し覚えて、髪も整えて……携帯の待ち受けにしている、こっそり撮影した寺野君の写真を見る。
「……夏休み、早く終わらないかなぁ」
……
二学期になって、寺野君の交友関係が広がったみたいだ。鳴洲君と倉守君が、昼食を共にするようになっていた。
最初はぎこちなかったけれど、段々と四人は自然体で話すようになっていった。良かったね、寺野君。
でも【ギルド】とか【イベント】とか、本当に何の話をしているんだろう?
……
どうやら寺野君は、彼等とVRのゲームをしているらしい。
数年前から、話題になっていったフルダイブ型のVRゲーム。成程、そこでならば寺野君は昔の様に走れるからね。
でも、なんか不穏な単語を口にしていなかった?
――ひめとけっこんしたんだ。
【結婚】って何のこと? いえ、私達はまだ高校生だもんね。結婚なんて出来るはずが無い。きっと、私の見間違い。そうよ、そのはず。
あぁ、そうだ。私も夏休み以降は結構、綺麗になったと思う。もうすぐ文化祭があるし、寺野君をデートに誘ってみよう。
これだけ寺野君の事を理解しているんだもの、きっと良いデートになるわ。そのまま、寺野君に告白されたりしちゃったら……ふふ、良いかも。
だというのに、寺野君はイトコを案内するからデートは出来ないらしい。
ううん、諦めちゃダメ。大丈夫、私はコミュ力も磨いたのよ。だからきっと、寺野君のイトコさん達も私を気に入ってくれるはず。
また、時間をおいてから誘う事にしようっと……。
次回投稿予定日:2021/6/30(本編)
自分で書いててなんですが、根津さんの闇が深い( ;゜Д゜)
えー、余談ですが次回及び次々回の作者の前書きがやたらとテンション高いです。
具体的に言うなら最高にハイッて奴だ!! ハイッ★ となっております。
意味不明ですね、私も見返して意味が解りません。
ただ、もうあきらめてそのままにしておきますので失笑して「作者がストレスでトチ狂ったな」と嘲笑して下さい。
あと、一つ言っておきます。
ここまでが(作者の主観で)微糖です。