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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十章 あなたへのプレゼントでした
189/573

10-24 祝賀会でした

 第三回イベントの結果発表から二日後、AWOにログインしたジン達はギルドホームの大広間に集まっていた。


「それじゃあ、乾杯の音頭は……」

 ヒイロが誰が言うべきかと、問い掛ける様に視線を巡らせる。そんなヒイロに対し、複数の人間が自分の考えを口にした。

「ここはヒイロ君が良いんじゃないかい?」

「そうだね、会場は【七色】のホームなんだし」

「異議なし~! 私もそれで良いと思うよ!」

 そう言うのは、生産職人・ユージン。【桃園の誓い】のギルマス・ケイン、そして【魔弾の射手】のメンバーであるレーナだ。

 他に集まった面々も、三人の意見に同意する様に笑顔で頷いていた。


「で、では僭越ながら……第三回イベント、皆で上位入賞を果たせました。今日はその祝賀会です、おおいに楽しみましょう! 乾杯!」

「「「「「かんぱーい!!」」」」」

 今日の集まりは、そういう趣旨であった。

 この【七色の橋】のギルドホームに集まったのは、【桃園の誓い】と【魔弾の射手】。最も、社会人で忙しいらしいビィトとクラウドは不参加だ。しかしながら、お祝いの伝言はしっかり伝えられた。


 そしてフリーランスのプレイヤー達。ユージンは勿論の事、親交の深いリリィも今回は参加してくれた。ギルドに所属はしないが、フレンド付き合いはしてくれるらしい。

 それに加えジン達は、今回のイベントでお世話になった人物にも声を掛けた。

「いやぁ……こんな凄いメンツの中に、ワイがいてええんかな?」

「俺も、ちょっと緊張してしまうね」

 一人は、商人プレイを楽しんでいるクベラ。そして、ソロでプレイしているマキナである。

 ちなみに【遥かなる旅路】のカイセンイクラドンとトロロゴハン、タイチやルシアも誘ったのだが……今回は辞退するとの事であった。まだ親交が浅い内からお邪魔するのは、気が引ける……との理由からである。


 ともあれ、こうして盛大な祝賀会が開始されるのであった。


************************************************************


 プレイヤーは三十一人、PACパックは十一人。合計で四十二人……パーティ用に用意された料理も、この人数であるからとんでもない量になっている。料理は無論、今回のイベントに出品したモノも作られている。

 ギルドも何も関係なく、和やかに会話するプレイヤー達。この光景を見たら、他のプレイヤー達は喜び狂うか羨ましがるか……それか、驚愕で口をあんぐりと開けて固まる事だろう。


「成程、≪虹色の貝殻≫を砕くというのはマキナ君の案だったか」

「はい! 助けてくださった上に、アドバイスまで頂いたんです♪」

「い、いや、まぁ……はは」

 ユージンが感心し、ネオンが満面の笑顔で応じている。その横で、マキナは照れ臭そうに頭を搔いていた。彼もユージンの名は前々から知っており、そんな人物を目の当たりにして恐縮していた。


「本当にありがとうございました、マキナさん」

 穏やかに微笑むネオンに、マキナもまた笑みを浮かべる。見た目は成人男性くらいなので、事案かな? と思わなくもないのだが……。

「マキナ君は飲まないのかな?」

 ユージンがワインのグラスを差し出すと、マキナは苦笑してそれを止めた。

「こんなナリなんですが、未成年でして」

「そうだったのか、これは失礼」

 どうやら、マキナはアバターの外見年齢を弄っていたらしい。中身は未成年……という事は、彼も学生なのだろう。


「あの首飾り……とても素敵でしたね」

「そうね、私も目を奪われてしまったわ。レンさん、手先も器用なのね」

「ありがとうございますメイリアさん、ミリアさん。メイリアさんの大盾も、素晴らしかったです。ねぇ、ヒイロさん」

「えぇ、デザインもそうですし……武器を収められるアイディアも、驚きましたよ」

 こちらは、どことなく気品を感じさせる三人が談笑していた。レンに劣らぬ、ミリアとメイリア……この二人も、良い所のご令嬢と言われても納得出来そうな立ち振る舞いである。


 そんな三人に囲まれて、緊張気味のヒイロなのだが……レンと共に歩んでいく上で、こういった場面は必ず訪れるのだろうと思っていた。

 故に、今の内から慣れる必要があると考え、逆にこれはいい機会と前向きに捉えていた。

「ヒイロ様、なかなかに堂々とされておりますね。その調子でございます」

 レンの側に控えるシオンが、小声でサポートしてくれるのも心強い。とても頼れる存在である。


「へぇ、君等も大学生なのか。じゃあ同年代なんだなぁ」

「同年代と聞くと、何だか嬉しくなるですねー! 意味もなく!」

「いや、意味はあると思うよ? ほら、共感できる材料が多いとか……」

 こちらはダイスとドラグ、そしてシャインとルナ。共に大学生と聞いて、会話に花が咲いていた。

「年齢が離れると、会話の中にギャップを感じるよな」

「そうですねぇ……このメンバーなら、AWOっていう共通の話題があるから困らないんですけどね」

「ははっ、違いない!」


 同じく大学生なレーナとディーゴ、そしてジェミーは、ミモリ・カノンと会話している。こちらも、大学生同士である。

「ビィトさんとクラウドさんに、これをお土産にしてあげてね〜」

「あらら、済みません……ミモリさん、お手伝いしますね」

「ありがとうございます。二人もきっと、喜びます」

 タッパーの様な物に料理を詰めるミモリに、それを手伝うジェミー。そして、礼儀正しく頭を下げるディーゴ。見た目はとってもヤンキーなのだが、内面は穏やかで丁寧な青年である。

「あ、忘れないうちに……これ、俺が作ったモノなんですけど。良かったら、皆さんで」

「へ? わぁ、凄い! 美味しそうなケーキ!」

「ディー君、相変わらずマメだねぇ……」


 そんなミモリ・ジェミー・ディーゴの向かいの席で、カノンがフルフルと震えていた。しかしながら、今回はそこまで重症ではなさそうで……。

「……や、優しそうな、人……です、ね?」

「ジェミー先輩? あ、ディーゴ君ですね! はい、凄く優しいですよー。見た目はちょっと、理由があってああいう恰好なんですけどね。高校時代からの友達なんです!」

 人見知りなカノンも、ディーゴの放つ穏やかなオーラを感じたのかホッとした様子。そこへレーナが声を掛けて、緊張を解そうと奮闘していた。


 一方、社会人組も会話と料理を楽しんでいた。

「へぇ、じゃあクベラさんも初日からプレイしてたのね?」

「そうなんですわー。やっぱスタートダッシュは、大切でっしゃろ?」

 商人プレイヤーのクベラは、それぞれと満遍なく会話をして交友関係を構築していた。そして今は、同年代と見定めたケイン達に声を掛けたのだ。

 すると、ケイン・ゼクス・イリスと同い年という事が判明。そんな共通点に、会話が更に加速したのだった。ちなみに、同席しているチナリは彼らの一つ年下である。


「同い年の知り合いが増えて嬉しいな」

「ははっ、そうだな。周りがほら、あの若者集団だからね」

 最年長はユージンで間違い無いだろうが、それに次ぐ年長者がゲイル。それに続いてアラサーのフレイヤで、その後がケイン達だ。ちなみにシオンも、二十五歳で同じ年である。

 そこから下は、大学生と高校生・中学生。若年層の方が多いのである。


 そんな若年層に分類される、学生メンバー。こちらはリリィの参加で、話に花が咲いていた。

「この前、リリィさんの曲を聴いたんですが……凄く素敵な歌声で、何回もリピート再生しちゃったんですよ~!」

「そ、そうなんですか? 嬉しいですが、なんだか照れますね……」

 センヤのストレートな賞賛に、リリィは本当に照れ臭そうにしていた。そんなリリィに料理を取り分けながら、ヒビキはしみじみと言葉を口にする。

「まさか、AWOでこんな有名人に会えるとは思ってなかったです。本当にビックリしました」


 ゲーム内では、芸能人という立場について言及される事を、リリィはあまり好まない。しかしながら、【七色の橋】のメンバーは不思議と嫌な気持ちにはならなかった。というのも、彼等はリリィが芸能人であっても特別扱いをしないのだ。

 何故ならばゲーム内とはいえ、彼等も今や多くの人に注目されている存在だから。あちらこちらから声を掛けられて、リリィの苦労に共感している部分もあるのだ。


「そういや、リリィさんは今回はイベントに参加したんスか?」

「いえ、今回は全く。丁度、仕事の方が多忙で……」

 というのも、彼女には二つ年下の妹が居るのだ。その妹がここ最近、モデルとして活躍し出したらしい。

「あ、知ってるッス。【渡会わたらい 星依せい】さんッスよね?」

「ええ、そうです。バラエティ番組等の共演の依頼が増えていまして……」

前々からアイドルとして活躍していたリリィは、妹と共にバラエティ番組に呼ばれる事が増えて来たらしい。


 行儀よく料理を食べるリリィだが、少し疲労の色が見て取れる。気配り屋なハヤテ・アイネは、そんな彼女が心配になる。

「学業と仕事の両立をして、その上ゲームでも活躍しているんですよね……リリィさん、ちゃんとお休みできていますか?」

「ふふっ、大丈夫ですよアイネさん。ゲームが休息にあたりますから。フルダイブ中は、横になれますし。最近はプレイヤーの方に囲まれる事もなくなって、穏やかにプレイしています」

 その笑顔は、無理をした様には見えない。そのため、ハヤテ達もホッと一安心する。

 ちなみに彼女が囲まれなくなったのは、ユージンによる変装セットが功を奏したからである。


 リリィとハヤテ達が歓談する様子を見て、フレイヤはフッと優しい微笑みを浮かべる。

「最前線のレイドで会っていた頃は、あんな風に楽しそうな表情は見せなかったわね」

 それはフレイヤもなのだが、自覚は無いらしい。以前のフレイヤは取っ付きにくそうな、クールな女性という雰囲気だったのだ。


 それが今では……。

「フレイヤさん、何か食べますか~?」

「あら、ありがとうヒメノちゃん。うーん、今度はゲイルの作ったスープパスタにしてみない?」

「良いですね~♪ そうしましょう!」

 美少女と一緒に、楽しそうに料理をハシゴしていた。だって、VRなら太らないし……。


「うーん、美味しい~♪」

「本当、すっごく美味しいわね。GJ、ゲイル!」

 グッと親指を突き立てるフレイヤに、ゲイルは苦笑してサムズアップで返す。先日の「本人が本人に謝る珍事」以来、フレイヤの態度がより親し気なモノに変わったのを実感していた。


――全く……勘違いしそうだから、程々にして貰いたいモンだがなぁ……。


 フラグが立っている事に気付かないあたり、この人も相当に朴念仁である。

 逆に他人の心の機微に聡い忍者な彼が、そんなフレイヤの様子に気付いていた。

「フレイヤさん、また一段とフレンドリーになりましたね。前は、格好良い大人の女性! って感じでしたけど、今の……年上の、近所のお姉さんみたいな感じも素敵ですよね」

 ジンのそんな言葉に、ゲイルは視線を向けた。その表情は、苦笑いである。

「ジン君、恋人がすぐ側にいる中でそんな事を言って良いのかい?」

 ゲイルの忠告に、ジンはハッとしてヒメノを見る。そこには、むーっと頬を膨らませる恋人の姿。


「ジンさんはフレイヤさんの方が好みなんですか、そうですか」

「そういう意味じゃないからね!? 僕は好きなのはヒメだけだから!!」

 慌てて弁明すると、ヒメノはぷいっと顔を背ける。しかし、残念ながら……口元が緩んでいるのが、ジンにも解った。

「あんまりからかわないでね、ヒメ。心臓に悪い」

「バレてましたか」

 えへへと笑いながら、視線をジンに戻す。その表情から、本気ではなかったのが解る。


――甘い、甘すぎるぞ空気が!!


 無性に辛い物を食べたくなったゲイルとフレイヤは、同時にチゲ鍋(ユージン作)に手を伸ばし……おたまを手に取ろうとした所で、互いの手が重なった。

「「っ!?」」

 こちらもどうやら、無事に進展しそうで何よりである。


************************************************************


 飲み食いしながら会話に花を咲かせていると、時間が過ぎるのはあっという間に感じられてしまう。既に祝賀会が始まって、二時間が経過していた。

 楽しい時間を過ごして満足そうなヒメノに、ジンが声を掛ける。

「ヒメ、ちょっと良いかな?」

「あ、はい! どうかしましたか、ジンさん?」

「ちょっと話したい事があるんだけど、少し付き合って貰える?」

 真剣なジンの表情に、ヒメノは笑顔で頷いて応える。


 連立って大広間を出る二人の背中を見て、レンとシオンが口元を緩めた。

「ついにこの時が来ましたね」

「はい、いつ動くのかとソワソワしておりました」

 そんな二人の会話に、他のメンバーは何の話だろう? と首を傾げるしかなかった。


 ただ一人、ユージンだけは二人に同意を示す。

「ヒメノ君は喜ぶだろうね」

 そんなユージンの反応に、レンとシオンは我が意を得たとばかりに頷いてみせた。


「ユージン様もお気付きでしたか」

「イベント期間中に、ジン君から例の物について相談を受けていたからね」

 ユージンの言う”例の物”……という言葉に、レンは笑みを零した。

「ふふ……それは確かに、ヒメちゃん喜びそうです」

 親友の幸せそうな笑顔を思い浮かべ、レンは笑みを深める。


 まだ親しくなって一年も経っていないが、濃密な時間を共にしてきた親友だ。だからこそ、彼女には幸せになって欲しい。

 レンはそう思いながら、目の前に置かれたケーキを味わいつつ……ヒメノからの報告を待つ事にした。


……


 ジンのマイルームに連立って入ると、ジンはヒメノにベッドに座る様に勧めた。和室なので、椅子などは無いのだ。

「ジンさん、お話って……?」

 ヒメノの問い掛けに、ジンは緊張を抑え込む。その手の中には、一つの箱が握られている。たった今、システム・ウィンドウを操作して取り出した物だ。


「そ、その……お、お付き合いの解消……じゃない、ですよね?」

「激しく違うよ!! ってか、何でそう思ったの!?」

 予想外のヒメノの言葉に、ジンは慌てて否定する。違うんです、逆なんです。


 否定の言葉を口にしたジンに、ヒメノは俯き加減で心の内を話し始める。

「いえ、流石にそれは無いと思っていたんですけど……大事な話と言われると、ちょっと不安で……」

 その言葉に、ジンは内心で首を傾げる。


 一緒に登下校し、夕方まで一緒に勉強。休日は互いに予定が無ければ、デートなり互いの家に行ったりしている。

 ゲーム内でも、メンバーが揃うまでは二人でマイルームで雑談。イベントの為の素材集めや生産活動以外は、常に一緒に居る。

 顔を合わせない日は無いし、一緒に居られる時はこれでもかというくらい一緒に居る。これで別れ話を切り出す男が居るのだろうか? と、疑問を感じずにはいられない。


――……でも、ヒメが不安を感じていた事に変わりはない、か。


 乙女心は複雑なのだろうと無理矢理ながらも納得し、ジンはまだ俯いているヒメノに歩み寄る。緊張はもう、遥か彼方へと旅立ってしまった。今はただ、この可愛らしい恋人を笑顔にする事を優先しよう。

「うん、じゃあその不安を取り除こう」

 ジンはヒメノの左手を取ると、薬指に用意していた物を嵌める。

「……え、これって……」

 左手の薬指で、光を反射して輝くのは指輪だ。


 その指輪は、二つの円環が重なってエックス字を描いている。その交差する部分には、桜の花を象ったダイヤモンドが嵌め込まれていた。ダイヤモンドは無色透明ではなく、ピンク色に加工されている。

 その意匠は、どことなく魔王に贈られた≪紅葉の腕輪≫と似ていた。


「今回、装飾部門に挑戦したのは、これを用意する為だったんだ。ヒメに贈る物なら、自分で作りたかったから」

 左手の薬指に嵌める指輪となれば、ヒメノだってその意味合いに気付く。右手で口元を覆い、頬が赤く色付いていく。

 そんな愛しい恋人に向けて、ジンはハッキリとその言葉を口にする。

「ヒメ、僕と結婚して欲しい」


 ジンからの、プロポーズの言葉。それを聞いたヒメノは、勢い良くジンに抱き着く……が、勢いが付き過ぎていた。ジンのステータスではその勢いに耐え切れず、盛大な音を立てて寝転がる形となってしまう。

 と言うか、全力で飛び付いて来るヒメノを受け止められるプレイヤーなどごく少数だろう。AGI極振りなのだから、避ければいい? 避けるはずが無い。


「うぉっ……!?」

 背中から床に転がるジン、押し倒す形になってしまったヒメノ。

「ご、ごめんなさい……嬉しくて、つい……」

「うん、大丈夫だよ……」

 喜び勢い余ってしまったのは、ジンにだってよく解る。なので、怒りも呆れもしないが……照れ臭くはある。


 立ち上がって、見つめ合う二人。ヒメノは左手の薬指に嵌められた指輪を見て、幸せそうに微笑んでいる。

「ふつつかものですが……末永く、よろしくお願いします」

「こちらこそ。ずっと、ずっとよろしくね……ヒメ」

 自然に顔を寄せ合い、そして二人の唇が重なる。仮想現実世界での事とはいえ、繋がる絆は本物である。

 不安は既に払拭されており、幸せそうに微笑むヒメノ。それを愛おしく思い、強く抱き締めるジン。

 こうして、一組のカップルは夫婦としての一歩を踏み出した。


……


「で、明日にでも教会に行こうかと」

「成程、ジンが装飾部門に行った理由はコレか……」

「ジン兄はほんと、いろんな話題を巻き起こすッスねぇ……今度は結婚ッスか」

 大広間に戻ったジンとヒメノは、全員にゲーム内結婚する事を報告。ヒメノは女性陣に囲まれて、祝福の言葉を一身に浴びている。

 そしてジンは、男性陣に今後の予定について話しているのだった。


「しかし成程、これは見事だなぁ。ジン君、こういった才能もあるんだね」

 既にジンも、左手の薬指に指輪を嵌めている。銀色の指輪には、アメシストで作られたスミレが彩りを加えていた。

「いえ……これはユージンさんのアイディアなんです」

 ジンは苦笑し、自分一人では完成しなかったと口にする。実際にユージンが居なければこの指輪も、魔王に贈ったプレゼントもここまでの出来にはならなかった。少なくとも、ジンはそう認識している。


 そんな謙遜するジンに対し、ユージンは彼の努力について言及する。

「僕は、ちょっと手伝いをしただけさ。花と石については口を出したけれど、デザインや作りは全て自分で考えたじゃないか」

 確かに誕生花や誕生石を使うというアイディアは、ユージンから得られたものだ。しかしジンは、デザイン等は全て自分で考えて作り上げたのである。それは魔王に贈った≪紅葉の腕輪≫も同様だ。


「へぇ……この花の部分なんて、凄く繊細ですよね。それを嵌め込んでいる金属の部分も、凄く……あれ?」

 ジンの指輪を見つめていると、ヒビキはある点に気付いた。

「この、輪の部分に……すっごく小さく、文字が……」

 ヒビキの言葉に、ジンは苦笑しながら頷く。

「花言葉と、石言葉。ローマ字で彫り込んだんだ……何か恥ずかしいから、すっごく小さく」

「へぇ~。お前の方はどんな意味なんだ、ジン?」

 からかう様な表情を浮かべるゼクスに、ジンは苦笑して首を横に振る。

「恥ずかしいので、自分の口からはなんとも」

「よし、ググろう」

「待って!?」

次回投稿予定日:2021/6/8(掲示板)


糖分此処に極まれり。

リリィに結婚行進曲を演奏して貰おう(真顔)

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― 新着の感想 ―
[一言] ググりました。いやぁいいですねぇ…(しみじみ) 作者さんセンスありますね!
[良い点] ベッド「耐えた」
[一言] 一言でいいんです。一言でいいから糖度注意報を出して欲しいです。朝食時に読むのですがただの焼いたパンがめちゃくちゃ甘くなってしまっています。(笑)
2021/06/05 07:18 しおりすぐ無くす読書好き
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