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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十章 あなたへのプレゼントでした
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10-21 結果発表【武器部門】

 装飾部門の一位が発表されると同時に、ジン達はユージンへメールを送った。メールは、最も付き合いの長いジンが代表だ。

『装飾部門第一位、おめでとうございます! それと、ユージンさんのアドバイスのお陰で僕も入賞出来ました! ありがとうございます!』


 それに対する返信は、いつも通りの速さだった。

『お祝いメール、ありがとう。それとジン君達も入賞おめでとう。どの部門でも、上位に入賞していて凄いね。武器部門も、期待しているよ』

 そんなユージンからの返信メールを、仲間達に見せていくジン。そのメールを見たドラグは、笑顔の裏で別の事を思案する。


――超有名な生産職人ユージンと、接点があるとは聞いていたが……こんなに親し気なメールを送り合う仲なのか。


 考えてみれば【七色の橋】と親交があるプレイヤーやギルドは、有名な存在や異質な存在が多い。

 自分が潜り込んだ【桃園の誓い】はかつて、【聖光の騎士団】主催のレイドパーティに参加していた猛者。同時に親しいプレイヤーとして、第二回イベントで猛威を振るった【魔弾の射手】のメンバーも居る。そして、ソロプレイヤーに徹するアイドル・リリィ。フリーランスの生産職人・ユージン。

 その人脈もまた、【七色の橋】の名を押し上げる要因と言って良いだろう。


……


 こうして三部門の結果発表を終え、いよいよ最後の部門の発表。前に出るは力の四天王ディスクであり、その筋骨隆々とした身体が威圧感を放つ。

『では、最後の献上品の発表と参ろうか! このディスク、武において一切の妥協はせぬ! 魔王様への献上品とあらば、尚の事よ!』

 野太い声で、そう言うディスクは真剣な表情である。


『まずはこれまでの発表同様、上位百位をご覧に入れよう! 黒子共よ、魔王様の御前に並べよ!』

 ディスクの号令に従い、黒子達が画面の端からササッと姿を現す。その動きに淀みは無く、更に丁寧な所作だった。それにしてもディスク、この中で一番四天王らしい振る舞いである。


 武器部門はそれぞれ、武器の種類毎に分類されて陳列されていく。剣でも直剣・大剣・短剣、杖も長杖・タクト・ステッキ。

 そうして並べられた武器の数々は、光を浴びてキラキラと輝いている。


『献上品の中でも、料理に次いで多かったのが武器であった。その数、八百一点と実に多かったな。鍛冶の腕に覚えがある異邦人が、多かったのだろう。しかし!!』

 クワッ!! と目を見開いたディスクの眼光が、モニター越しにプレイヤー達を射抜く。

『その中でも魔王様に相応しいレベルに達していない物は、御前に出す価値無し!!』

 爆弾発言なのだが、その背後で三人の四天王がディスクに見えない様に札を上げる。

我々(スタッフ)が』『ちゃんと魔王様の宝物庫に』『飾りました』

 流石にプレゼントとして贈られた物を、放置するなんてしないだろう。それは解っていたが、こうして教えて貰えると貰えないでは大違いだ。ナイス配慮である。


……


「いよいよ、武器部門……か」

「あぁ……成程、これは緊張するね」

 ヒイロとケインの言葉に、ドラグは視線を和らげる。彼は武器部門の製作に参加しており、彼等の製作過程もしっかり見ていたのだ。


――武器製作に、運営から得た知識なんかは無かった……純粋に試行錯誤した結果、完成したモノだ。気持ちは解らんでもない。


 それは鍛冶斑だけではなく、当然他の斑もそうだった。しかしドラグは【七色の橋】が運営メンバーから情報を得て、今の様なトップギルドになったと信じて疑わない。


 そんなドラグの勘違いはさて置き、メイン製作者であるカノンは険しい表情で固まっていた。鍛冶プレイヤーとして名を馳せる彼女だが、競合相手が非常に多い。

 故に、自分達の作ったモノが果たしてどれだけの成績を残せるのか……不安で胸がいっぱいなのだ。


 そんなカノンの手は、震えていた。その震える手に、そっと手を重ねるのはヒメノだ。

「大丈夫です、カノンさん。カノンさんと私達が作った刀なら、絶対にいい成績を残せます」

 自信に満ちたヒメノは、そう言って柔らかく微笑む。その笑顔に追従する様に、他の面々もカノンに笑顔を向けた。


 温かい言葉を向けられても、不安は拭い切れない。それでもカノンは、仲間達の思いやりに感謝する。

「うん……ありがとう、ね」

 そうして彼女は、薄っすらと微笑みを返す事に成功した。


************************************************************


 全ての準備が整い、ディスクがモニターを見つめているプレイヤー達に向けて呼び掛ける。

『ここに上位百品が出揃ったが、まずは己の作があるかを目を凝らして見るがよい!』

 すると、モニターいっぱいに陳列された武器が映る。それが数秒間隔で切り替わるのだが……有り難いことに武器と一緒に札が置かれており、その武器の名称が一目で解るようになっていた。


 しかも長剣は長剣のみ、短剣は短剣のみ……陳列が種類毎に分けられているのは、これが狙いだろう。

 一番ガサツそうなディスクが、一番見る人の事を考えているというのも中々に面白い。


 そう思ったのは、四天王達もだったようだ。

『成程ね、こういう札を用意すれば解りやすかったのね』

『ちゃんと種類毎に分けてんのも、見やすくて良いよな』

『うむ、中々に配慮が行き届いているではないか』

 自分達もそうすれば良かった……という三人に、ディスクは豪快に笑い飛ばす。

『ガハハ! 我はお主らと違って、細かい事を考えてはおらぬ! 単に我自身が、こうした方が解りやすいからだ!』


 そんなディスクに、魔王は微笑みながら頷く。

『自分が解りやすいようにするのは、相手に解りやすいようにするのと同義だよ……ディスク、凄いね』

『ははっ! 有り難きお言葉……!』

 魔王の言葉に、ディスクは跪いて頭を垂れる。やはりこの男、一番まともな四天王かもしれない。


『それじゃあディスク、進めよう……武器はどう発表するのかな』

『はっ……武器は並べられ、鑑賞するのみに非ず。故に十位以上は魔王様に手に取って頂き、振るって頂きたく存じます』

 つまり、武舞の様な形で武器の順位を発表するらしい。


『うん、解ったよ……それじゃあ、やろうか』

 魔王の言葉を受け、ディスクは立ち上がり一礼する。

『かしこまりました。それでは異邦人共よ、心の準備は良いか』

 そうして、いよいよ上位発表が始まる。


 ディスクは魔王の前から移動し始めると、一つの武器に手を伸ばす。そこにあるのは戦鎌バトルサイズ……その中でも、群を抜いて存在感を放つ一振りを手にした。

『十位、【白狼の集い】所属のヒューズ! ≪ヒューズのバトルサイズ≫!』

 手にしたバトルサイズを、よく見える様に頭上に掲げるディスク。次いで彼はバトルサイズを下げると、それを手に持ったまま魔王の前に歩み寄った。

『魔王様』

『うん』

 そしてディスクは跪き、両手で魔王にバトルサイズを差し出した。武器を献上するにあたって、最も相応しい所作だといえよう。


 そして、≪ヒューズのバトルサイズ≫を手に取った魔王。彼女は前に歩み出ると、バトルサイズを構える。

 すぅ……と息を吸うと、魔王は戦鎌を力強く振るう。更に一歩踏み出し、もう一度。連続して戦鎌を振るう様は一つ一つの動作が鋭く、前後左右からその姿を映すカメラワークも組み合わさり迫力満点であった。


 そうして最後に戦鎌を一回転しながら大きく振るうと、魔王は戦鎌を構え直して静止した。

『うん……すごく良い。これ、【白狼の集い】全員で作ってくれたんだって』

『魔王様の握るに値する品を用意した事、誇りに思うが良いヒューズよ』


……


 続けて発表されていく、武器部門の上位に入った品々。

 九位はフリーのプレイヤーであるカリンが製作した、長剣≪カリンのロングソード≫。

 八位はグッドマンが製作した、長槍≪ラグナロクランス≫。所属は……【リリィちゃんファンクラブ】である。ファンギルド、意外にもランクインしているのであった。

 続く第七位は長剣≪マオウカリバー≫……凄いネーミングなのだが、物自体は実に格好良いものだった。製作者はギルド【絶対無敵騎士団】に所属する、フデドラゴン。もしかして、ペンドラゴンなのだろうか。


 そして発表されるごとに魔王が見せる、迫力満点の武舞。その力強さと鋭さ、そして優雅さは圧倒的。魔王の名に相応しい姿を、プレイヤー達に披露するのだった。


「うぅ……武器部門も、中々に凄い品が多いね……」

 そう言って唸るセンヤに、普段は笑顔を絶やさないネオンも真顔である。

「結構、作り込まれた武器が多いよね……」


 そんな二人に、ヒメノは微笑みながら声を掛ける。

「大丈夫。皆で鍛えた刀だもん、きっと良い順位だよ」

 曇りない笑顔でそう告げるヒメノは、自信に満ちていた。

「そう、だね……大丈夫、私達の刀は……きっと、良い順位のはず……」

 カノンもヒメノに呼応する様に、自信があるのか無いのか解らない言葉を口にする。


「ああ。俺達のプレゼントは、他の物に劣っていないさ」

「そうだね、最高の一振りが出来たという確信がある」

 ヒイロとケインのギルマスコンビも、仲間を勇気づける様にそう言って穏やかに微笑んでみせる。

 内心では不安を抱えているのだが、彼等はギルドマスター。仲間達を安心させ、鼓舞するのが役割だ。故に、不安そうな顔は見せられない……という事だろう。


――ふーん……ケインは知っていたが、ヒイロもギルマスとしての役割をしっかり果たしている。この若さで、大したものだ……。


 ドラグは心の中で、ヒイロへの評価を上方修正する。最も、未だにレンと運営メンバーの繋がりによる情報入手については、盛大に勘違いをしているのだが。

 しかしながら、年若い彼にもしっかりとリーダーの器が備わっているのだと確信した。


――それに人見知りの割には、鍛冶に関してカノンは本気だ。仲間を、そして自分の腕を誰よりも信じている……成程、ただの弱気な娘じゃあ無いって事だな。そして……。


 ドラグはヒメノに視線を向け、そしてすぐに戻す。


――ヒメノ……彼女の言葉で、不安そうにしていた連中の顔色が変わった。彼女の言葉には、仲間を奮い立たせる力がある。それはプレイヤーとしてではなく……人間性による鼓舞、か。


 そうして、【七色の橋】の面々に不自然じゃない程度に視線を巡らせ……ドラグは、内心で納得した。悪い方向ではなく……良い意味で。


――【七色の橋】が強いのはステータスやスキル、そして情報だけでは無い……仲間同士の結び付きが、思った以上に深いな。


……


 プレイヤー達が一喜一憂する中、武器部門の上位入賞者の発表は続く。

 第六位はギルド【悠久亭】所属のコージーによる、大剣≪ヴィクトリーソード≫。魔王の身長は百六十センチメートル程だが、それを越す程の大剣であった。しかしそれを片手で手にし、魔王は軽々と振るってみせる。左手は、添えるだけ。


 そして五位は弓であった。≪神木の弓≫と名付けられたそれは、フリーランスの木工職人であるサリィの作だ。≪エンシェントトレントの枝≫を用いて作られたそれには、魔力を矢に纏わせる力があるらしい。

 魔王の魔力が篭った矢を一度放つと、激しい光が炸裂するというド派手な演出。これには、ジン達も驚いた。


 四位に輝いたのは【聖印の巨匠】のネフィリムが製作した大剣、≪王権のグレートソード≫。最後の≪王権≫シリーズである。

 魔王の元々の服や、他の≪王権≫シリーズ同様に模様が彫り込まれたその大剣。これもまた、他の≪王権≫シリーズを装備した状態で振るわれる。全てが揃った魔王の姿は、その称号に相応しい存在感を放っていた。


「いよいよ、三位……!!」

「あぁ……こいつはドキドキするな……」

 チナリとゼクスの言葉が、ギルド同盟全員の心情を表していた。


「絶対、いける……!!」

「えぇ……ここからよ」

 イリスとフレイヤも当初は不安そうにしていたが、先のやり取りで上位間違い無しと信じる事にしたらしい。その眼には、希望の光が点っている。


 そしてモニターの中で、ディスクがある物を手に取って掲げた。

『第三位は【魔弾の射手】所属、メイリア! 大盾≪護国の象徴≫である!』

「「「「「おやっ!?」」」」」

 聞き覚えのある、ギルド名。聞き覚えのある、アバターネーム。その名が発表され、意外な伏兵に全員が声を揃えて叫んでしまった。


『ネーミングも然ることながら、作りも実に良い。この大盾には、他の武器を収める細工が施されている。工夫を凝らした一品、見事なり!』

 ディスクの演説の後、モニターの中で魔王が武舞を始めるのだが……ジン達はそれよりも、その製作者に意識が行っていた。


「メイリアさんって、確か……」

「準決勝で、レーナ殿と組んでいた御仁でゴザルな……?」

 ミモリに視線を向けられ、何故か忍者ムーブで応えるジン。もう身体に染み付いている様だが、現実でうっかり忍者ムーブしたりしないのだろうか。


「他に【魔弾の射手】というギルドはございませんからね。間違いはないかと……ともあれ、親交のあるギルドです。お祝いのメールをお送りしては如何でしょうか?」

 シオンの勧めに頷いて、メールを送る事にするのだが……その代表者に選ばれたのは、やはりジンだった。


『メイリアさんとはフレンド登録をしていなかったので、レーナさんに送らせて頂きます。三位入賞、おめでとうございます!』

 そんなジンのメールに対し、レスポンスは早かった。

『ジン君、ありがとう! そういえば私達以外とは、フレ登録出来てなかったんだよね。今度、うちのホームに遊びに来てね! それと、ジン君達も入賞おめでとう! 皆凄いね、武器部門も送っているのかな? 応援してるよ!』

 レーナらしい内容のメールに、ジンは表情を緩める。


 またも仲間達にメールを回している間に、いよいよ第二位の発表となった。

『第二位は【森羅万象】に所属するガンテツの作、レイピア≪ガンテツの装飾剣≫である!』

 これまでの無骨な印象を与える武器とは異なり、ガンテツが製作した細剣レイピアは美しいという印象が先に立つ。

 しかしながら、見るべきはその美しさだけではない。その白銀の刀身が光を反射して、鋭く輝く。それはこの細剣レイピアの鋭さを、光で表現しているかの様だった。


 魔王の武舞が始まるも、ジン達はそれどころではない。なにせ、残すは一位のみなのだ。

「神様仏様魔王様ぁ……っ!!」

「……後は、一位だけ……!!」

 ハヤテとアイネが、揃って手を合わせて祈る。


「……大丈夫、絶対大丈夫だ……!!」

「はい……っ!!」

「必ず、入っています……!!」

 ヒイロ・レン・シオンが、緊張の面持ちでモニターを凝視する。その中では、ディスクが最後の入賞品を手に取るべく歩き出しあ。


 刀が置かれているのは、長剣と同じ右側の区画。その中でも、一番端に置かれていた。

 そもそも、刀はその一振りしか無い。刀を鍛えられるプレイヤーは、この場に居るメンバー以外ではユージンしか居ないのだ。

「右に行った!!」

「良いぞ、端だ端!! 一番端ーっ!!」

「刀!! 刀の方に行けッ!!」

 これにはダイスも、ゲイルやドラグまでもが声を上げる。


「お願い……!! 入っていて……!!」

「……行けー!! 刀!! 刀を手に取って!!」

「もう少し!! もう少し先!!」

 ネオンは目を閉じながら手を組んで祈り、その横ではセンヤが拳を握り締めて届かぬ声を張り上げる。ヒビキもそれにつられたのか、彼らしくない大声を上げている。


 そうして、ディスクが一位の品を手に取った。

「……あれは!!」

 ジンがそれを見て、立ち上がる。


『此度の献上品の中で、多岐にわたる品が届いたが……その中で最も情念が込められた品は、これ以外にあるまい』

 それを両手で持つディスクが、魔王の前に跪いて差し出す。


「ねぇ、あれ……!! あれって……っ!!」

「はいっ!! 間違いないです!!」

「うん……っ!! 私達が作った……!!」

 ディスクが手に取ったそれを見て、ヒメノとミモリが感極まった表情になる。そんな二人に挟まれたカノンが、口元を両手で抑えて瞳を潤ませた。


『【七色の橋】と【桃園の誓い】同盟、カノンの作!! 銘は、長刀【月虹げっこう】である!!』

 その宣言を聞き、大広間に居る全員が立ち上がって声を上げる。

「「「「「ぃよっしゃああぁぁ!!」」」」」

 これには鍛冶に参加したドラグも、スパイという立場を忘れて一緒になって喜んだ。最も、スパイなのだから同調した方が勘付かれなくて済むのだが……現在、彼は本気で喜びを分かち合っていた。


 そんなジン達の狂喜乱舞など知る由もないディスクは、刀を魔王に渡すとモニターに向き直って高らかに宣言した。

『ただ高価なだけの鉱石であれば、この刀は容易く折れてしまう事であろう。しかしただ鉱石を鍛えるだけでなく、手間暇を惜しまず玉鋼に加工した一振り。その美しさ、頑強さ、鋭い斬れ味……全てにおいて、見事という他ない』


 そんなディスクの称賛に、ギルド同盟の面々はおおいに沸き立っていた。

「は、はは……っ!! やっ……た!! やったなっ!!」

「うおおおぉ!! 一位だぜ、一位!!」

「えぇ、最高の結果ね!!」

「流石だわ、カノンさん!! 皆も!!」

 全員が互いに声を掛け合い、その最高の結果を喜ぶ。


 そんな中、魔王が刀を手にして呼び掛ける。彼女が装備しているのは、ギルド同盟が贈った装備一式。その身を包む≪星空の衣≫に、頭上で煌めく≪祝福のティアラ≫。胸元には≪魔天の首飾り≫が揺れ、その左腕には≪紅葉の腕輪≫。

 そして今、彼女はゆっくりと長刀≪月虹≫を腰に差す。

『製作者の、カノン……それにヒイロ、ヒメノ、ケイン、ドラグ。そして現地人のボイド、セツナ、ジョシュア、マーク。貴方達が贈ってくれたこの刀は、私が今まで手にして来た武器の中で最も素晴らしいよ……ありがとう、大切にするね』


 そう言うと、魔王は刀に手を置き……刀を鞘から抜き放つ。露わになったのは、漆黒に鈍く輝く刀身。その峰と刃の間に輝くのは、無色の宝石である。その表面はきめ細かくカットされ、光を当てると七色の輝きを放っている。これでディスクが称賛する程の強度を確保しているというのだから、セツナ様々である。


 そして始まる、魔王の剣舞。刀が通り過ぎた軌道に、宝石の輝きが一瞬残留する。それが消える前に魔王は刀を振るい、新たな輝きの軌跡を生み出していく。

 しばらくそうして、幻想的な剣舞を披露していた魔王は……一本の戦鎌を手に取り、刀と同時に振るい始める。


 刀と鎌という、ミスマッチな組み合わせ。しかしながら、何故かそれが調和している様に見えてしまう。

 更に大剣、長剣、弓、大盾と左手の武器を持ち替えながら、魔王は舞い続ける。それはどの組み合わせにおいても、自然なものに感じられた。これは偏に、魔王の高い技量によるものだろう。

 そして魔王は最後に、≪月虹≫のみを手にして勢い良く振り抜く。

 その圧倒的な武の舞に、誰もが言葉を失い見惚れてしまった。


 静寂が訪れる中、魔王は鈴を転がす様な声で言葉を紡ぐ。

『異邦人達……そして、彼等と共に在る現地人達。貴方達に感謝を』

 そう言って微笑む姿は、ただの可憐な少女にしか見えなかった。

次回投稿予定日:2021/6/2


魔王様の演武は、よくある格好良い武器を振るうシーンをイメージしてます。

更に具体的に言いますと、某悪魔も泣き出す狩人なあの人が新装備を手に入れた時のアレ。

あのシリーズ、実はかなりのファンだったりします。

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― 新着の感想 ―
[一言] >そんなドラグの勘違いはさて置き そもそもが守秘義務と言うのが発生するから例え親しい身内であろうと情報を教えると言うことはない訳だよね しかもバラしたら首どころの話ではなくなってくる訳だし…
[一言] ふむ、全作品上位入賞に一位獲得2種、普通に考えたらすさまじいけど、その前に住人から技術的な情報を獲得できることを公表しているから、文句の付けどころはないはずだよね あとは「ゲームだから」と…
[一言] 一位おめでとう! 石はダイヤモンドか 「月」という意味では ホワイトラブラドあたりですかね 魔王様の想像以上に武器の扱いの上手さに 魔王のファンクラブも歓喜してますかね。 ドラグは、 …
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