10-20 結果発表【装飾部門】
服飾部門と料理部門の発表が終わると、スペイドがプレイヤー達に向けて呼び掛ける。
『さて、次の部門だな。スティーブ、出番だぜ』
『ふふふふ……待っていたわよ、この時を!!』
オネェ、出陣。という事は、次は装飾部門の発表という事になる。
『魔王様の美貌を飾るに相応しい、装飾品の数々……大儀だったわね!! ま、アタシが作る物が一番なんだけども!!』
長い髪を無駄に掻き上げながら、スティーブはポーズを取る。その背後で、魔王が視線を逸らしたのだが……どうやら、スティーブの物よりも気に入った品があったらしい。
『まぁ今回は勘弁してあげるわ。ナンバーワンでオンリーワンなアタシが参加すると、アンタ達に勝ち目が無いもの』
無駄にテンションアゲアゲ、更にカメラ目線のスティーブは気付かない……彼の背後で、魔王様が「ごめんね……ごめんね」と呟いている事を。それを、他の四天王が宥めている事を。
『それではまずは、百位までを一斉に紹介するわ!! いらっしゃい、黒子ちゃん達!!』
スティーブが合図をすると、モニター視点で両端から黒子達が現れるのだが……何故か、バレエの様な動きである。
優雅な動きなのだが、外見は黒子。見事なターンを決めてソッ……とテーブルに装飾品を飾るのだが、彼も黒子。去り際にポーズを決めてフェードアウトするのだが、こいつも黒子。
黒子オンステージを見せ付けられるプレイヤーからしたら、溜まったものでは無い。
ちなみにスティーブさん、そんな黒子達に声を掛けておられた。
『うぅんっ、ありがとねぇ!!』
『ナイスターン!! イイわよぉ!!』
『諦めないで!! アナタなら出来るわっ!!』
『美しいわぁ!! 美しさの三密!!』
『キレてるキレてる!! 仕上がってるわよ!!』
ボディビルの掛け声だろうか。あと、彼のAIはバグっているのではないだろうか。
そんな摩訶不思議なスティーブ空間with黒子が沈静化すると、スティーブは満足そうに髪を掻き上げてカメラ目線で不敵な笑みを浮かべる。一点の曇りもない、完成されたドヤ顔だった。外見だけはイケメンなのが、非常~~~~にタチが悪い。
そして訪れる、耳が痛いくらいの静寂。すると徐に魔王が机に手を突いて深々と頭を下げた。
『本当の本当にごめんなさい』
しかも、魔王だけでなくチャリス・スペイド・ディスクも深々と頭を下げている。スティーブ以外のトップ全員による、誠意ある謝罪である。
『どうなさいました、魔王様っ!? アナタ達まで!! 何、何なのっ!?』
敬愛する主と、頼れる同僚達の突然の謝罪。その光景に慌て始めるスティーブだが、一切の自覚が無い。これっぽっちも、微塵も、微粒子レベルで存在しません。
『シャラップ』
普段よりも数段階低い声で、チャリスがスティーブを黙らせる。彼女が纏う雰囲気は、これまでのネタ要素モリモリ秘書とは一線を画す。
『謝罪は後日、書面にて正式にさせて貰おう』
そう告げて、重々しく黙礼するディスク。意外と脳筋では無いのかもしれないと感じさせる、大人の対応である。
『スティーブ、進めろ』
気怠さをどこかに置いて来たのか、抜身の刃の様な雰囲気を纏うスペイド。今の彼に触れたら、腕ごと斬り落とされてしまうのではなかろうか。
『アッハイ……』
そんな同僚達の塩対応に、流石のスティーブも大人しくせざるを得なかった。
……
「こいつに評価されるのは、新手の屈辱なのかしら」
スティーブの奇行にドン引きだった、【七色の橋】と【桃園の誓い】同盟。静寂を破るフレイヤの言葉に、ジン・レン・ネオンが視線を逸らす。
大丈夫、大丈夫だよ。魔王様がちゃんとしてくれるはず、多分。
『さて、それではいよいよ発表な訳なのだけれど……』
『おい、喋り方戻せ。真面目にやれ』
『あ、はい』
チャリス様の冷たく静かな恫喝に、スティーブさん陥落。gdgdである。
『んんっ……では、ここからは真剣な批評と参ろうか』
初登場時の様に、魔王軍四天王としての威厳を漂わせ始めたスティーブ。しかし、ここに至るまでのやらかしで台無し。彼がまともに登場した運営ミーティングの頃が、何故かもう遠い昔の事の様に思えた。
『まず装飾部門において重要視されるのは、その完成度。そして装飾品とは、それ自体がメインであってはならない』
先程までの奇行はさて置き、真面目に語り始めるスティーブ。その内容が評価に直結する事もあり、ジン達は嫌々ながらもちゃんと耳を傾ける。嫌々ながらも。
『装飾品は、引き立て役だ。何を引き立てるのかは、言わずとも解るだろう? 今回の場合は、こちらにおわす魔王様である』
つまり、ただの綺麗なだけの装飾品では意味が無いという事だ。
『作品を作り上げる技術も、煌びやかさも、無意味とは言わん。しかし今回は贈り物という趣旨を考慮し、魔王様の美しさを引き立てる品々を評価している。その旨、努々忘れぬように』
そう言うと、スティーブは贈られたプレゼントに向けて歩み寄る。
『まずは、この百の献上品を見よ。そして自分の贈った品を探し、次いで他者の贈った品を見るのだ。そこに込められた技術と情熱を、魂で感じ取りたまえ』
テーブルの上に陳列された、装飾品の数々。それがモニターいっぱいに拡大され、そして横にスライドする。
……
「ナイスカメラワーク、これでプレゼントが良く見える。ついでに、スティーブが見えなくてスカッとする」
素の口調でそう吐き捨てるハヤテに、誰も異論を挟まない。それだけスティーブの奇行と、現在の落差が激し過ぎる。あと、偉そうに語るのも不快感を抱かせる要因であった。
「あ、あった」
「私のもありますね」
「良かった、私のも百位には入ってたみたい」
ジン・レン・ネオンが、ホッとした様子でそう告げる。とりあえずは、第一の関門はクリアしたという事だろう。
「……あっ」
モニターをジッと見ていたジンは、あるプレゼントに気付く。その品は布製の装飾品であり、魔王のイメージカラーである漆黒。しかしながら光沢をもった布が光を鈍く反射して、暗闇というよりは夜空の様な印象を抱かせる。
何より、ジンはその品から感じ取るモノがあった。
――あぁ、流石だなぁ……ユージンさんは。
親交の深い、生産職のプレイヤー。その布製のプレゼントが彼の作品だと見抜いたジンは、早くも一位が誰なのかを確信していた。
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『それでは早速、十位からの発表と参ろう』
スティーブはそう言うと、テーブルの上に置かれている装飾品の一つを指差す。すると装飾品……一組のイヤリングが光を放ち、宙に浮き上がる。
『十位は【暇を持て余した我々の遊び】に所属するパールの作で、≪魔真珠のイヤリング≫である』
その宣言と共に、イヤリングはふわふわと魔王の前に向けて飛んでいく。魔王はそれを平然と見つめているのみであり、驚いた様子は一切無い。
『このイヤリングに使用されている≪魔真珠≫は、南方の海中でしか採取出来ぬ稀少品。また、他に手に入る≪王真珠≫や≪聖真珠≫ではなく、≪魔真珠≫を選択したのも良い』
ちなみに≪王真珠≫は見た目が派手だが、価値は≪魔真珠≫よりも低い。そして≪聖真珠≫はより価値が高いのだが、魔族に対してはデバフを与える素材になるのである。
スティーブが解説している間に、魔王は≪魔真珠のイヤリング≫を着用してみせる。
『うん、凄く良い……ありがとう、パール』
その付け心地に、魔王は笑みを零して感謝の言葉を口にする。耳を彩る装飾品である為、イヤリングが良く見えるように彼女の顔を中心にしてアップにされている。つまりは、その微笑みがモニターいっぱいに表示されている訳だ。これには、魔王様ファンクラブ(ファンスレッドの住人)達は大歓喜である。
『それでは、次。続いて第九位の献上品は……』
スティーブが再び指を差すと、光を放つティアラが浮き上がる。
そのティアラを見て、ネオンが目を見開いた。
「あれ、確か……」
「うん……! 私が作ったティアラ……!」
『【七色の橋】と【桃園の誓い】同盟の所属、ネオンが製作した≪祝福のティアラ≫である』
目前に運ばれてきたティアラを見て、魔王は興味深そうな表情をする。
『凄くキラキラしてる……これは、綺麗』
『魔王様の美しさにはその輝きも霞むというものですが、これはアイディアの妙ですな。このティアラに使用されているのは、≪アリージャ鉱石≫……更に砕いた≪虹色の貝殻≫になります』
PAC達のアドバイスを受け、≪アリージャ鉱石≫を使用して作られたこのティアラ……ただ鉱石を使うのではなく、鉱石に≪虹色の貝殻≫を砕いて付着させたのである。また七つの突起部には小さな宝石を散りばめており、それぞれ色を変えている。無論、七つの色はギルドのイメージカラー。
特筆すべきは、やはり貝殻と鉱石を掛け合わせるというアイディア。現実では困難を極めるどころか、不可能かもしれないアイディアではあるが……ゲームの世界では、可能だった。
そして≪虹色の貝殻≫を砕いた粉末≪虹の粉≫は、光を反射して七色に輝く。これを見出したのは、実は外部のプレイヤーであった。
「マキナさんにお礼のメールしないと……♪」
そう、≪虹色の貝殻≫を砕くというアイディアを齎したのは、偶然フィールドで出会ったマキナだった。
街で出会ったNPCから得た情報を、役に立てて欲しいとネオンにメールしてくれたのである。故にネオンは本人に了解を取り、協力者の欄にマキナの名前も入れてある。
そうしてシステム・ウィンドウでメール画面を開いていると、ネオンに宛ててメールが届いた。それは、これから感謝の言葉を送ろうとしていたマキナからのメールだ。
『ネオンさん、やりましたね。九位入賞おめでとうございます。今度、何かしらお祝いしましょう』
それは短くも、ネオンを賞賛する内容のメールだった。そんなマキナからのメールに笑みを深め、ネオンは手早く返信のメールを送る。
『マキナさん、ありがとうございます。マキナさんのアイディアのお陰です。心より感謝しています』
そんなメールでのやり取りをしているネオンを見て、四人娘が微笑ましそうな表情をしている。
「ふふっ、例のマキナさんだよね?」
「うーん、春の気配がするわ」
「今は秋だけど、ねー」
ヒメノ・アイネ・センヤが小声で楽しそうに話をしていると、レンが悪戯っぽい表情を浮かべる。小悪魔レン様モードだ。
「良いんじゃない? 年がら年中春爛漫なカップルも居る事だし……それももうすぐ、レベルアップしそうだけど」
最後のレンの言葉に、他の三人は首を傾げる。このメンツの中で、レンとシオンだけが察している……忍者なあの人が、鍛冶部門ではなく装飾部門にノミネートした本当の理由を。
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そして、続く上位発表。
第八位にランクインしたのは、≪シルクワームの糸≫で紡がれたリボン。製作者の名前が入っており、製品名は≪ココロのリボン≫である。
その所属は……なんと【忍者ふぁんくらぶ】である。そのギルド名を耳にした全員の視線が、ジンに集中したのはご愛嬌。
七位にはフリーのプレイヤーである、さかなの名が呼ばれた。その名前はかつて、ジンとヒイロが掲示板で見た木工職人の名だ。
そんなさかなのプレゼントは、≪エルフェンフラワー≫という森の奥にある秘境でしか入手出来ない花を使った≪精霊花の冠≫である。
次いで名前が上がったのは、【森羅万象】のフローリアの作品だった。こちらも作品名に作者の名が入った、≪フローリアの腕輪≫。
こちらにはジン達同様に≪アリージャ鉱石≫と≪ハレリオ宝石≫が用いられており、見事な作りである。
それでも第六位という事実に、ジンとレンの表情が一瞬揺らいだ。
「フローリアさんって、確か有名な人ですよね?」
「えぇ、【森羅万象】の中で最も腕の良い木工職人ですね。まさか鉱石を使った物も作れるとは思いませんでしたが……」
ジンとレンの会話に、二人が不安を抱いているのを察した周囲のメンバー。有名な生産職としては、既にさかなやフローリアの名前が出ているのだ。
「大丈夫だよ、私が十位内に入れているくらいだもの……二人の作品も、入っているよ」
「あぁ、俺もそう思う。二人が作った作品も、ネオンの物同様に素晴らしい物だったじゃないか」
ネオンやヒイロの言葉にも、レンとジンの表情は硬いままだ。
「どうでしょう……他にも【聖光】のサブギルドである【聖印の巨匠】のトールさんも、装飾で来るはずです」
「……後は、ユージンさんがいる」
ジンがそう断言すると、他の面々が驚いた表情になる。
「……ジンさん、見付けたんですか?」
ヒメノの質問に、ジンは確信を持って頷いてみせた。
「間違いなく、ユージンさんの物だった。装飾部門、思った以上に激戦区だよ」
……
『続いて第五位。【聖印の巨匠】所属、ヴィヴィアンの作だ。献上品の名は≪王権のマント≫である』
黒い布地に、輝く白い糸で縫われた刺繍。魔王の元々着ていた衣装に合わせてしつらえられたそれを見て、魔王は一時元の衣装に着替えて着用してみせた。
更にそれだけでない。服飾部門で二位に輝いた、【聖印の巨匠】のメンバーであるハインツの作……≪王権のコート≫も着用していた。
『このマント、先の発表で魔王様のお召し物を用意したハインツのコートにも合わせているな。ハインツとヴィヴィアン、恐らくは協調して献上品を用意したのであろう。魔王様はこの点を高く評価しておられるぞヴィヴィアン、そしてハインツよ!』
『それぞれの作ったものが、組み合わさるとマッチするように考えてくれたんだね。凄く嬉しいよ』
順位はともあれ、手放しで賞賛の言葉を贈る魔王とスティーブ。これは実に見事な案であり、誰が見てもランクインした事に異論の余地無しと感じられるものであった。
しかし、それを考えたのは彼等だけではない。
『続いて第四位……しかしその前に、魔王様には改めてお召し変えをお願い致したく……』
『うん、そうだね』
魔王の姿が魔法陣の中に消え、再び≪星空の衣≫の姿になる。更に、その頭上には七色に煌めくティアラ……ネオンの作った≪祝福のティアラ≫だ。
その様子から、どのギルドが製作した品なのか……それが窺い知れる。
『では改めて第四位だ。【七色の橋】と【桃園の誓い】同盟のジンによる、≪紅葉の腕輪≫である』
……
ガタッ!! という音が、ギルドホームの大広間に響き渡る。それは、【七色の橋】と【桃園の誓い】のメンバーが一斉に立ち上がった際に発せられた音だ。
「四位……?」
呆然とした様子のジンに、ヒメノが勢い良く抱き着く。
「やりました! ジンさん、四位ですよ!!」
……
『さて……この腕輪には、同ギルドのネオンが作った≪祝福のティアラ≫と同様に≪虹色の貝殻≫が使用されていた。更に評価を高めたのは……魔王様の生誕を祝う意味合いとして、実に的確なアイディアを用いている点だ』
腕輪を身に着けた魔王が、微笑みながらその装飾が見える様に腕を翳す。ジンが製作したその腕輪には、紅葉を象った宝石が輝いている。
『これは魔王様の誕生を祝う月を司る、トルマリンという宝石だ。その中でも最高級品質……【ディアマンテゴーレム】から手に入る、≪ランドルトルマリン≫を使っている所は実に見事。この宝石に秘された石言葉は、【希望・潔白・寛大・忍耐】となる』
ジンが用意したのはユージンのアドバイスを元にした、誕生石を用いた腕輪だった。勿論、象った紅葉の意匠もだ。
勿論それらのアイディアを使用する事について、ユージンの許しを得ている。
『また、この十月二十五日の誕生花である、紅葉を象った意匠も良い。この花が持つ花言葉は、【大切な思い出】に【美しい変化】……どれも魔王様に相応しいと言って良い! 見事な品である!』
柔らかな笑みを湛えている魔王は、嬉しそうに目前にあった装飾品を手に取る。
『ありがとう、ジン。素敵な贈り物だよ……あとね、第三位もこのギルド同盟の作品なんだよ』
『魔王様!? 発表は私の仕事ですのにっ!!』
『あっ……ごめんね、うっかりしちゃった……』
……
うっかり魔王が口走った言葉。それはつまり……。
「これ、来たんじゃね!?」
「あ、あぁ! 間違いないぞ!」
「レンさんの……!」
「ナイスうっかり!」
……
『うっかりじゃ、仕方ないっすね!』
『問題ありませんわ、魔王様!』
『うむ、スティーブ。さぁ、第三位を公表しようではないか』
うっかり魔王を擁護する四天王の同僚に、スティーブもそれ以上は追求しない。むしろ「確かにうっかりなら仕方がないね!」という表情である。もしかしたら、魔王様は日頃からうっかりしているのだろうか。
『ではそのまま第三位! 魔王様が既に身に着けておられる……【七色の橋】と【桃園の誓い】同盟所属、レンの作で≪魔天の首飾り≫である!』
……
「「「「「よしっ!!」」」」」
スティーブの発表に合わせ、ギルド同盟メンバーの大半がガッツポーズ。
ガッツポーズに参加しなかったのは、当の本人であるレン。そして、その脇で微笑みながらささやかな拍手をするシオン。そして、何こいつら……怖い……という表情のドラグのみ。そう、PAC達も一糸乱れぬガッツポーズでした。
この同盟、連携は十分だ。
……
『この首飾りには、中央に同じく≪ランドルトルマリン≫を用いている……その上、同じく≪ハレリオ鉱石≫を加工して作った四色の宝石だ』
中央の宝石……≪ランドルトルマリン≫は、ジンとは異なり丸い物だ。しかしその上下左右に配された宝石は、とあるシンボルを象っている。
そのシンボルは、プレイヤーならば誰もが見覚えのある形……そう、トランプのスートである。
『製作者のコメントによると、これは我ら四天王を表しているとある! 魔王様のお側に仕えし、我ら四人をだ! 実に……あぁ、実に小粋な意匠であろう!』
ハイテンションになるスティーブの横で、魔王は嬉しそうに首飾りを撫でている。余程、レンからの贈り物が気に入ったのだろう。
『うん……私と皆を表してくれたの、凄く素敵だと思う。レン、ありがとう』
魔王からの言葉に込められているのは、掛け値なしの賛辞と感謝。
……
「ふふっ、ハヤテさんのお陰ですね。ありがとうございます」
そんなレンからの言葉に、ハヤテはニッコリと微笑んで見せた。
「お役に立てて、何よりッス!」
ハヤテが四天王の名前に込められた意味を見抜いた事が、今回の上位入賞という結果を生んだのは確実だ。
「これで今のところ、三部門で十位以内。これは快挙だな」
そう言って拳を突き出すケインに、ヒイロは笑顔で応えた。
「はい。あとは……武器部門ですね」
武器製作に参加したメンバーは、揃って不敵な表情で笑う。
こうしてギルド同盟が祝勝ムードに包まれている間に、第二位が発表された。
第二位は【聖印の巨匠】ギルドマスターである、トールの作だ。その名も≪王権の指輪≫……最高の素材と、きめ細かい精緻な意匠。そして指輪の中央にあしらわれた宝石の中に、魔王の服や飾りに使用されているマーク……魔王国の国章が入っているという、なんとも不思議な作りであった。
そして、いよいよ第一位。
『第一位、魔王様の魅力を最大限に引き立てる献上品を用意した者の名は……』
スティーブが仰々しい言葉を並べる間に、装飾品の一つが輝きを放つ。
黒い光沢を持った≪黒曜の布≫で織られたそれは、魔王の頭上で広げられた。細長い布製の装飾品には、≪シルクワームの糸≫で模様が入っているのだが……それは細い糸が光を反射する事で視える様になっていた。更には視る角度を変える事で、模様が変化するという代物である。そして両端には、≪シルクワームの糸≫と≪金獅子の鬣≫を使い分けた刺繍が施されていた。
魔王はそれを羽衣の様に身に纏い、プレイヤー達に全容が見える様に立ち上がった。
その際、身に着けるのは上位の装飾品達。そして、服飾部門で第一位となったギルド同盟の作である≪星空の衣≫だ。
胸元には≪魔天の首飾り≫を下げ、右の中指に≪王権の指輪≫。左腕には≪紅葉の腕輪≫を装備している。
頭上に乗せているのは≪精霊花の冠≫であり、残念ながらネオンの≪祝福のティアラ≫は装備されなかった。それは≪ココロのリボン≫も同様だろう。
第五位の≪王権のマント≫が装備されていないのは、第一位の作品と装備枠が被るせいだろうか。
そんな数々の装飾品の中でも、一際存在感を放ち……そして魔王にマッチするのは、やはり一位の作品。その作品と、製作者の名をスティーブが高らかに宣言した。
『所属無しの異邦人・ユージン!! 献上品の名は≪夜天の飾り布≫であるっ!!』
次回投稿予定日:2021/5/30
装飾部門は、本気で激戦区でした。
でも何よりもダンシング・黒子が僕のお気に入りです。




