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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十章 あなたへのプレゼントでした
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10-14 製作を進めました

 第三回イベントのプレゼント受付期間は、十月五日から二十日まで。そして今日は十月の五日……いよいよ、プレゼント受付期間となった。

 【七色の橋】のギルドホームでは、魔王へのプレゼント製作に取り掛かっている。無論、同盟ギルド【桃園の誓い】も一緒である。


 今回のイベントにおいて、出品するプレゼントは四種類。武器・装飾品・服・料理だ。そして【七色の橋】は既に、誰がどの部門を担当するのかが決定している。

 武器部門は、ヒイロ・ヒメノ・カノン。サポートをするPAC(パック)は、ボイド・セツナ・ジョシュアだ。

 こちらの班にはケイン・ドラグ・マークが参戦する事となった。


 装飾部門はジン・レン・ネオン。PAC(パック)はリン・カゲツ。

 このグループに参加表明をしたのは、チナリだ。そしてチナリに引っ張られて、ゼクスもこの班に参加する運びとなった。


 服部門にはシオン・センヤ・ヒビキ。PAC(パック)はロータス・ヒナである。

 そこに加わるのが、服と聞いたら黙っていられなかったイリスとフレイヤの二人。それもそのはず、彼女達は自作系コスプレイヤーだもの。


 そして料理部門がハヤテ・アイネ・ミモリ。PAC(パック)はカーム・メーテル。

 こちらは自分も料理をする面々が集まり、ダイス・ゲイル・ファーファがメンバー入りとなった。


……


 ギルドホームの厨房では、メンバーがせっせと料理に励む。広い厨房なのだが、流石に九人も集まると手狭になる。故にまずは、時間が掛かりそうなビーフシチューとケーキ作りが始まっている。


「ダイスさん、手慣れてるッスねー」

 ビーフシチューの具材を切る作業を補佐するダイスに、ハヤテは声を掛ける。手際も良く、危なげなく肉や野菜を切っていくのだ。

「まぁ独り暮らしして、三年も経っているからな。自炊は基本さ」

 大学入学と同時に、独り暮らしを始めたというダイス。最初は苦労したが、今ではすっかり家事全般になれたそうな。


 一方、ゲイルは魚や貝・海老の下拵えをしていく。魔王の好みから外れると解っていて尚、海鮮系の料理を作るのは如何なる理由なのか。

 それが気になり、アイネがゲイルに問い掛けてみた。すると彼は苦笑し、ある可能性について言及した。

「肉や甘いものばかりだと、飽きが来るんじゃないかと思ってな。この世界のAI(現地人)は高度な思考をするだろう? そういう盲点があったら面白いと思ったのさ」

「おぉ……」

「というのは建前で、俺が肉より魚の方が好きなだけだけどね」

「Oh……」


 そんな与太話をしていた面々だったが、ここでミモリのPAC(パック)であるメーテルが声を上げた。

「あんれまぁ、これは≪ブラウキングサーモン≫じゃぁないの! 珍しいもん釣って来たねぇ!」

 心底驚いた……と言わんばかりのメーテルに、ハヤテとミモリが顔を見合わせる。

「婆ちゃん、これってそんなに珍しい魚なんスか?」

 もしかしたら……という思いを胸の内に押し込めて、ハヤテは自然体で問い掛けてみる。本来ならば詳しく聞き出したいが、まだ契約したばかりのPAC(パック)なのだ。何が地雷で、好感度が下がるか解った物ではない。


 そんなハヤテの言葉に、メーテルは朗らかに笑って頷いた。

「そうさね、とても珍しい魚だよぉ。これ一匹で、屋敷が建てられるって評判の大物さね」

 メーテルの言葉を聞き、全員の視線が≪ブラウキングサーモン≫に向かう。こいつ、そんなに凄いの? 見た目はただの鮭だよ? という視線である。

 そんなプレイヤー勢に、カームが微笑みながら声を掛ける。

「煮てよし、焼いてよし、刺身にしてよし。そんな稀少品ですよ、これは。本当に、どうやって見付けたのですか?」

「……良かったら、今度一緒に獲りに行くかい? バンバン釣れるぞ……ってか、刺身文化あるのか」

 そう、サハギン迷宮を越えた先にある絶海の孤島……そこに辿り着いた海岸探索班の男性陣が釣って、このサーモンはまだ四匹程残っているのである。


「あ、あの! この果実とかは、ケーキに使えそうですか?」

 もしやと思ったアイネは、シオンとダイスが採取してきた果実を見せてみる事にした。

「……こ、こりゃあたまげたねえ」

 目を丸くして絶句するメーテルに替わり、ファーファが驚きの声を上げた。

「≪ジュエルベリー≫じゃあないですか!! こ、これも獲って来たのですか!? これは凶悪なモンスターである【メイティングワスプ】の縄張りにしか無いと言われていて……」


 間違い無い。このイベントに必要なのは、単なるレア素材では無い……PAC(パック)の存在こそが、このプレゼント作戦に必須の要素。

「お婆ちゃん、カームさん、ファーファさん……より良い物を作る為には、あなた達の力が必要だと思うの。私達に、力を貸してくれませんか?」

 ミモリはそう言って、しっかりと頭を下げる。そんなミモリの姿勢を見た他の四人も、一緒に頭を下げて見せた。


「なぁにかしこまっちゃって……当り前さね、あたしゃあミモリちゃんのPAC(パック)なんだよ」

「えぇ、私も気合いが入って参りました。料理人の誇りにかけて、最高の一品を作ってみせましょう」

「うふふ、良いですね良いですね。勿論、私も御手伝い致しますとも」

 プレイヤーメンバー達は作業の手を止めて、PAC(パック)メンバーから情報を得る事を優先し始めるのだった。


************************************************************


 一方、武器部門に向けて準備を進める鍛冶チーム。

 こちらでもPAC(パック)……ボイドとセツナの言葉に、プレイヤー勢が硬直状態になっていた。

「済まない、ジョシュアさん……今、何て?」

「ふむ、その様子だと知らなかったと見える。確かに見た目だけならば、その素材で良いだろう……しかし、性能を重視するならば他の素材にした方が良い」

 ハッキリと断言するジョシュアに、他の面々は何も言えない。


 どうしてなのか解らないカノンは、自分のPAC(パック)に視線を向けてみる。

「ボ、ボイド……さん?」

 カノンに声を掛けられ、クワッ!! と目を見開いたボイド。そして一つ頷いて、彼もジョシュアの意見に同意する言葉を口にした。

「……ジョシュア殿の言う通りです、親方。強度では≪ハレリオ宝石≫よりも≪ランドル輝石≫の方が、武器には向いています……済みません」

「あ、うん……謝らなくて、良い……ですよ?」


「さて、折角手に入れた≪アリージャ鉱石≫だが……これも、刀鍛冶には向かぬ」

「えっ!? そうなんですか!?」

 今度はセツナからの発言に、ヒメノが驚きの声を上げる。そんなヒメノを一瞥すると、セツナはフッと笑って語りかける。

「詳しく聞きたいか、姫君? 長くなるし、それがしの趣味も入る話になるぞ」

「多分、大事な事だと思うんです! 是非!」

 ヒメノの言葉は、他のメンバーの総意だった。反対意見が出ないのを確認したセツナは、やれやれといったジェスチャーをしながら語り始める。呆れている訳ではなく、物好きだなぁといったところか。


 刀……日本刀というのは、曲がらず、折れず、よく切れるという特徴がある。しかしそれには条件があり、その材料には玉鋼という金属が必須となる。そして玉鋼は、人の手によってしか生み出せない。たたら製鉄という製法を用い、玉鋼を生成する事が可能なのだ。

 そんな玉鋼に向いた金属は、不純物と炭素の含有量が少ないものである必要がある。


 そういった刀に対する知識を披露するセツナに、ヒイロは首を傾げた。

「それじゃあ、≪アリージャ鉱石≫はそのどちらかが多い……って事か?」

「いや、両方だ。これは魔力の伝導率が高く、加工も容易で仕上げをすれば美しい見た目となる。確かに金属としての価値は高いが……刀には向かない。どちらかというと、装飾品の方に回す物だな」

 セツナの言葉に、プレイヤーだけではなくボイドまで聴き入っている。


「刀ってぇモンは、玉鋼以外じゃ作れないのか?」

 ジョシュアの質問に、セツナが苦笑する。

「作れないという事は無い……が、より良い品を作るならば玉鋼を作るのが一番だ。そうだな……この≪ヴォノート砂鉄≫が良いだろう。後はホームの周りに生えている松を使って、木炭を作る。竹炭よりも松炭の方が、刀に向いている」

 必要な材料について解説するセツナに、ヒイロはこのイベントの趣旨を理解した。


――生産に必要な材料、そして製法……そういった要素について、プレイヤーよりも現地人(NPC)の方が詳しいのは道理だ。


 そうとなれば、やる事は一つだ。

「……砂鉄、これだけでは足りないかな」

 備蓄の砂鉄は、西側第二エリアの探索中に見つけた物だ。その量は少なくはないが、量が足りない。

「うむ、これでは足りぬな。何なら取ってくるか?」

 そこで、ケインが穏やかに微笑みながら申し出る。

「それなら俺達に任せてくれ。さっき聞いた、たたら製鉄……それなりに手間が掛かる作業なんだろう? なら、今ある分の製鉄を進めるべきだ」


……


 相談の結果、ケインとマーク……そしてドラグの三人で、≪ヴォノート砂鉄≫を求めて出発した。

 ドラグはその道中で、ケインやマークに悟られないようにメールを送信する事を画策する。


――このイベントの必勝法は、NPCの力を借りる事。どうせこいつらは、情報を秘匿するに決まってる……()()が、その情報を有効に使ってやろうじゃあないか……。


************************************************************


 その頃、縫製班。こちらはデザインについて、試行錯誤を繰り返す真っ最中である。

「十二単の様な物では、ゴテゴテし過ぎですね……」

「魔王はまだ幼い感じだし、こういうのは……いや、これは狙い過ぎか」

「うーん、いいのが思い付かないなぁ……」

 主に頭を悩ませているのは、シオンとイリス・フレイヤの大人組である。というのも、縫製に入る前にデザインを決めなくてはならない。しかしながら、彼女達には致命的な欠点があった。


 デザインされた物を製作する事については、三人は相応の腕前だ。シオンは既に取引掲示板でも販売実績があるし、イリスとフレイヤについては言うに及ばず。自作コスプレイヤーである彼女達に、縫製技術が無いわけがない。

 しかしシオンは、ユージンが作ったレシピを元に製作……イリスとフレイヤは、アニメやゲームのキャラクターのデザイン通りに自作。つまりオリジナルの服製作はした事が無かったのである。


 デザインが決まらなくては、必要な材料や量も決められない。予想していたよりも、難航していた。

 そうして三人が唸っている所へ、センヤとヒビキがやって来る。

「済みません、遅くなりました」

「こっからは私達も、一緒に頑張ります!」

 二人……ネオンを含めて三人は、VRMMOをプレイするにあたって家族との約束があった。夕食や入浴、勉強をしっかりとやった後で、ゲームをする事……当然といえば当然の約束事だ。


「あぁ、二人共……お疲れ様」

 力無く微笑むフレイヤに、二人は顔を見合わせる。

「どうかしたんですか?」

 気遣わし気に問い掛けるヒビキに、イリスが一枚の紙を差し出す。そこには和服の少女が描かれており、刀を持ってポーズを決めていた。

「イメージ的にはこんな感じかなって思うんだけどね……それ、ゲームキャラだから。パクリはダメ、ゼッタイ」


 そのデザインを見たヒビキは、チラリとセンヤを見る。

「センヤちゃん、デザインしてみたら?」

「んー? あぁ、そっか。私達の服は、シオンさんが型紙で作ってくれたヤツだっけ」

 そう言うと、センヤはペンを手にして白紙の用紙に向き合う。

「あんまり、期待しないで下さいね〜折角、【桃園の誓い】も一緒なんだから……この辺りはこうで……っと!」

 無造作にペンを走らせるセンヤは、まず女性の輪郭を描いていく。そしてサラサラと、服のデザインを書き加えていった。その画力は、中々のものだ。


「えっ!? えっ!? 早っ!!」

「えぇぇ……しかも上手い……」

 呆然としているイリスとフレイヤの横で、シオンはある事を思い出していた。彼女は悪意を持った者がレンに近付いていないか、身辺調査を行っている。その報告の中で、センヤの両親の職業についても知った……そう、彼女は漫画家の父親とデザイナーの母親を持つのだ。


 そこへ、ヒナが声を掛ける。

「センヤちゃん、ここの部分ですけど……ここを≪シルクワーム≫の糸で作れる物にしたらどうですか? 光沢があって、綺麗な感じになると思います!」

 そんなアドバイスに、プレイヤーメンバーは目を丸くする。高性能なAIだとは思っていたが、まさかこんなアドバイスをするまでとは思っていなかったのだ。


「これは、もしかして……? ねぇロータスさん、この黒い部分に向いている素材、何かありますか?」

 そんなヒビキの問い掛けに、ロータスは平然とした様子で回答する。

「そこの部分に≪シルクワームの糸≫を使うならば、同じく光沢を持つ素材がよろしいかと。例えば……≪黒曜の布≫という素材がございます。[ミラルカ]から南にある、[フロイド村]という村でしか手に入らない貴重な布ですね」


 やはりこういった素材等については、PAC(パック)の方が詳しく知っている。そしてただのNPCと違って、その情報を得る為にクエスト等が発生する訳ではない。

 ヒビキもまた、契約したPAC(パック)の重要性に気付き……そして、他の面々に相談をする事を決意する。


************************************************************


 そして、装飾品を製作するチーム。彼等は二階のロビーに居たのだが……そこへ、他の班のメンバーがやって来たのだ。

「……PAC(パック)契約を進めていて、本当に良かったよ」

「えぇ、まさかこういった情報を得られるとは……僥倖でしたね」


 会話しているのは、ジンとレン。報告に訪れた、料理班のハヤテ・鍛冶班のヒイロ・縫製班のヒビキだ。そして【桃園の誓い】のサブマスターとして、イリスが同席している。ケインが外出中の為、彼に断りを入れてあるのは当然の事だ。

ネオンとゼクス・チナリ……そしてリンとカゲツは、使用する鉱石の準備や宝石の研磨を進めている。


「で、問題はこの情報をどうするか……ッス」

「公開しなければ、アドバンテージにはなる。しかし……」

「僕らは、フェアネスを重視するギルドと見られていますよね? そうなると、情報を秘匿するのは反感を買うんじゃないかと……」

 ヒイロとハヤテ、そしてヒビキは真剣な表情で唸る。既に【七色の橋】はフェア精神や、スポーツマンシップに則ったギルドカラーだと認知されているのだ。

 レンとイリスは、男子達の様子を眺めて黙っている。


 三人の言葉に、ジンは思う……自分の行動で、仲間達をこうして悩ませる結果になってしまったと。

 第二回イベントにおけるアーサーとの試合と、決勝戦での一悶着。その場においてジンは、自分の中の譲れないものを押し通した。

 しかしその結果、自分達のギルド方針が周囲のプレイヤーからの認識というものに縛られてしまっている。


――迷惑、掛けちゃったな……。


 申し訳ないと思い、ジンが口を開こうとしたその瞬間。ブワッ!! という音を立て、ジンの目の前で扇子が広げられた。

「……レンさん?」

 ジンの思考を察知したレンは、彼にその言葉を言わせる事を良しとしない。故に、彼の謝罪の言葉を止めた。

「既にギルド方針については、話が付いています。私達を大切に思ってくれているのは解りますが、何度も謝る必要はありませんよ?」

 そう言うレンの口調は、彼女にしては実に珍しく強めだった。


 そして魔扇を畳むと、レンは表情を柔らかいものに変えてジンに問い掛ける。

「それで、ジンさんの意見は? 公開するか、否か……どう思います?」

 レンの変わり身と、彼女が表情を和らげた事でホッとした様子のジン。そんな二人を見て、ヒイロとハヤテ……そしてヒビキも、レンの真意を察した。


――わざと緊張させた後に安心させて、本音を吐かせるつもりだ……。


「……僕は、公開する方が良いと思う」

 やっぱりね……という表情をするレン。ヒイロやハヤテも、似たような表情だ。しかし、ヒビキだけは違和感を感じた。

 ジンの視線が、彼のPAC(パック)であるリンに向かっている。その眼差しは優しげで、慈しむよう。


「ジンさん。その理由は、フェアネス精神やスポーツマンシップとはまた別のことでで……ですよね?」

 ヒビキの質問を受けて、ジンは微笑みながら頷いた。予想の外の質問に、予想外の応答。ならば何故? と疑問を抱くのは、自然な事だろう。

 五人の視線を受けたジンは、真剣な表情で自分の考えを口にし始めた。


「今回のイベントは、生産プレイヤーの為のイベント。だけど、同時にPAC(パック)……いや、現地人(NPC)達の為のイベントでもあるんだと思う」

 ジンは、ハッキリとそう言い切った。その様子から、確信を抱いている……そう察したイリスが疑問を口にする。

「ふーん……ね、ジン君。その根拠は?」


「運営はおそらく、PAC(パック)契約しているプレイヤーが思ったよりも増えていないと感じたんじゃないかな。実際にフィールドを歩いていても、PAC(パック)を連れているプレイヤーは少ない」

 それは他の面々も、薄々感じていた事である。プレイヤー同士でパーティを組む方が、戦力・効率の面で上……そう考えているのだろう。PAC(パック)契約は、後回しにされているのが現状だ。


「そこで、このイベントだよ。PAC(パック)という存在が、プレイヤー(ぼくたち)にとって……言い方が悪いけど、有益だと実感させる」

 確かに今回のイベントは、PAC(パック)契約をしているプレイヤーが有利。それは恐らく、間違い無いだろう。

 それは、偶然そうなったのではなく……それを狙ったものだった。少なくとも、ジンはそう確信している。

「このイベントを通じてPAC(パック)や、現地人(NPC)達を大切な存在だと思って欲しい。それが運営の狙い……いいや、願いなんじゃないかな」

 そう言って、ジンは言葉を締め括った。


 つまりこのイベントは生産職プレイヤーの為だけではなく、PAC(パック)という相棒の価値を高める為のイベント。PAC(パック)を大切にし、更に絆を深める事を望むという、運営からの無言のメッセージ。


「……成程、実にジンさんらしい考えです」

「だな……よし、俺は情報公開に一票」

 穏やかな表情を浮かべ何度も頷くレンと、親友の意見に賛成の姿勢を見せるヒイロ。


「僕も、賛成です!」

「ふふっ、私も賛成……なんだけど、他のメンバーにも確認してみるわ」

  元気良く手を上げるヒビキは、流石ジンさん! みたいな顔だ。そして、システム・ウィンドウを操作するイリス。ギルドメンバー向けのメール送信で、全員の意見を確認する為である。

 その返答は、すぐに返ってきた。

「うん、OK! 今回のこの情報について、【桃園の誓い】の見解を伝えるわ。【七色の橋】の判断に、全面的にお任せで!」

「よーし、それじゃあ掲示板ッスね! 俺の順番はまだ後だし、ちょいと燃料を投下してくるッス!」

 【七色の橋】の掲示板担当(?)であるハヤテは、心底楽しそうに立ち上がった。掲示板民と戯れるのは、地味に楽しいのだ。


 手に入れた情報を、【七色の橋】が公開しようとしている……その件を()()に送ろうと、ドラグは慌ててメールを送るのだが……ケインに不審がられないようにする為に、遅れてしまった。

 その結果、今回のイベントにおいてPACパックが有用である情報を公開するのは……アレク達のスパイ集団ではなく、【七色の橋】となるのであった。

次回投稿予定日:2021/5/8


ドラグ、ざまぁ^q^

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― 新着の感想 ―
[良い点] 情報収集、乙ざまぁ! 諜報員たちも、実入りの無いスパイ活動をするより、始まりの街で『なんでも情報屋』をしたほうが良いんじゃないかなぁ……
[一言] ジンのフェアプレイ精神を、ギルドの方針として手に入れた情報を公開する【七色の橋】。そして、【七色の橋】のギルドの方針に賛成する【桃園の誓い】。 情報を公開するとは思わず、あわててその情報をア…
[一言] 便乗 ドラグ、ざまぁ^q^
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