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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第七章 夏休みが始まりました

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07-20 幕間・【森羅万象】のギルドホームにて

 AWOのとある場所にある、一軒のギルドホーム。そこに、十人のプレイヤーが集まっていた。

「それじゃあ、第二回イベントの対策会議を始めましょうかぁ」

 ほんわかした笑顔を浮かべ、会議の開始を宣言する女性……彼女は大規模ギルド【森羅万象】のギルドマスターである、調合職プレイヤーのシンラだ。


「今回のイベントは、PvP……プレイヤーとの決闘となるわけだが……まず、気掛かりなギルドがいくつかある」

 ギルドマスターのシンラではなく、サブマスターのクロードが議題について話していく。それを誰も不思議に思う様子が無いので、恐らくはいつもの事なのだろう。

「まずは最大の脅威である【聖光の騎士団】……やはり、彼等も複数のチームで参加して来るらしいな」

 AWOの前身たるVRゲーム、DKC。その頃から【森羅万象】と【聖光の騎士団】は、幾度となく競い合ってきた。互いにライバルギルドとして、意識し合っているのだ。


 しかし今回、脅威となるギルドはそれだけではない。

「そして……【七色の橋】と【桃園の誓い】」

 クロードが名を挙げたギルド……その内の一つである【七色の橋】という名を聞いた途端、アーサーの表情が変わる。苦々し気な表情するアーサーに、周囲に座る三人のプレイヤーが気遣わし気な視線を送る。


 ――アーサーさん……やはり、あの忍者が邪魔なのですね。アーサーさんの為に、私があの忍者を……。

 ――人当たりの良いアーサーが、ここまで執着するとはねぇ。しょーがない、手伝ってあげようかねー。

 ――お兄ちゃん、忍者が嫌いみたい……私に出来る事が、何か無いかな……?


「オリガ、ラグナ。何か真新しい情報は見付かっていないか?」

 声を掛けられたのは、二人の少年。彼等は掲示板等で得られた情報を基に、他のギルドについての見解を語り始める。

「残念ながら、情報は大したものが出回ってねぇなぁ……【聖光】にはシルフィ・ベイル・アリステラ・セバスチャンが加入したって事くらいか」

「十分に脅威だがな。それと【七色の橋】にも四人……【桃園の誓い】にも四人が新たに加入したと聞く。特に【桃園】に加入したのはダイスにフレイヤ、ゲイル……最前線でも名が売れているプレイヤーだ」


 そして、オリガがチラリとアーサーに視線を向けた。すぐに視線を戻すと、ウィンドウのメモを見つつ口を開く。

「【七色の橋】は、元からあまり情報が無いんだよな。第一回イベントの後で追加された新メンバーは……」

 掲示板上で手に入った情報を語るオリガ。

 赤毛の少年、ハヤテ。黒髪の薙刀使い、アイネ。ここまでは、既に話題になっている。


「それと、騎士団詰め所で【七色の橋】の新メンバーについて確認した者が居たらしい。女子大生か新社会人くらいの女性二人……それが、ミモリとカノンというらしいな」

 すると、シンラがおもむろに立ち上がった。

「ミモリとカノン……!? その二人、もしかしたら生産職のプレイヤーじゃないかしら~」

「……あぁ、お前が勧誘出来たらしたいという、調合専門と鍛冶専門のプレイヤーか」

「……えー、取られちゃった~」


「まぁ装備を整えたり、自力でポーションを作るくらいは考えるか。よほどの馬鹿じゃない限りはさ」

「その為に、生産職をスカウトしたって訳だな」

「先日の遭遇時にいた、新しい三人……あの娘達は?」

「さぁ……素材集め要員だろうか」


 そこで黒髪の少女・アイテルが、押し黙ったアーサーの為にと口を開く。

「確かにイベントランカーが多い【七色の橋】は気になりますが、我々の敵では無いでしょう?」

 そんな彼女の言葉に、茶髪の少女・シア、銀髪の少女・ナイルが追従した。

「一芸に秀でてるだけっぽいからねぇ……総合力では私らの方が上じゃん」

「……勝てる」

 そんな三人の言葉に、アーサーはチラッと視線を向ける。すると、三人はアーサーに向けて微笑んで見せた。そんな三人に、アーサーもフッと笑みを浮かべる。


「慢心は禁物だが……まぁ、我々も第一回より力を付けた。負けるつもりは確かに無いな」

「最大の敵は、やっぱり【聖光】でしょうねー」

 クロードとシンラも、三人の言葉を否定する事はしない。第一回イベントで【七色の橋】やアークの後塵を拝す形になった事を悔しく思い、激しいレベリングを繰り返して来たのだ。

 今度は負けない……そんな思いを抱いているのは、皆同じだった。


 そんなメンバーの雰囲気を察し、一人の少女が手を挙げた。

「あのー、ちょっと良いかな?」

 その少女の名はハル。シンラの実の妹であり、アーサーの幼馴染である。

「私達も強くなったのは間違いないと思うんだけど……【七色の橋】が、更に強くなっているって可能性も考えなきゃダメじゃないかな?」

 ハルの言葉に、シンラとクロードは痛い所を突かれたという顔だ。


 そんなハルに、一人の女性が賛同する。

「私も警戒すべきと思います」

「エレナさん!」

 エレナと呼ばれた女性は、ハルに微笑みかけると他の面々を見渡して自分の意見を口にする。

「あの五人の内、何人か……もしかしたら、大半がユニークスキルを所有している可能性も有り得るでしょう。それに彼等は第一回イベントで上位にランクインしています。その報酬で、更なる強化を遂げていると考えるべきでしょう」

 エレナの言葉を聞いたアーサーは、眉間に皺を寄せて机の上で組んだ自分の両手を見つめる。


 ――あんなイロモノに、ハルを取られて溜まるかよ……っ!!


 つまりは、そういう事。アーサーはハルに想いを寄せており、そんなハルは忍者ジンのファンなのだった。それが許せなくて、彼はジンに突っ掛かったのだ。

 無論アーサーは、ジンとヒメノが恋人同士だという事は知らない。オリガとラグナはそれを敢えて伏せていた……アーサーがジンに敵意を抱く事で発揮する、底力に期待をしているのだった。


 【森羅万象】の代表者十人が集まる会議の席は、気まずい空気が漂っていた。そんな空気を呼び込んだのはハルとエレナだったが、彼女達の言葉は実に正論である。しかし、そうは思わない者も居る。


――またですか……ハルさんもエレナさんも、折角アーサーさんが笑顔を取り戻したというのに……!!


 お察しの通り、アイテルはアーサーに想いを寄せている。その為、アーサーが元気に笑顔でいる事が何よりも優先される……そんな考えの持ち主だった。その為ならば、他の誰が傷付いていても構わないとすら思ってしまうのだ。

 詰まる所、彼女はほぼヤンデレである。


 対して、シア。彼女も彼女で、アーサーを優先する傾向がある。それは彼女が現実ではアーサーと同じ学校……その上同じクラスであり、彼に対して好意を抱いている為である。


――あーあ、後でフォローしてやんなきゃ。おっぱいでも揉ませてやろうかな?


 彼女は、心の中にオヤジを飼っていた。普通のオヤジではなく、エロオヤジだ。下ネタとか大好きだし、普段からアーサーに下ネタでアピールしている女子生徒だった。最早JKの皮を被ったエロオヤジみたいな存在である。結構な問題児なのだが、成績は優秀らしい。


 そして、ナイル。彼女もやはり、アーサーに淡い恋心を抱いている。もう、アーサーは何なのか。

 きっかけは、AWOの前身であるDKCでの事。初心者で右も左も解らなかった彼女に、たまたまアーサーが声を掛けて色々とレクチャーしてあげた事だった。それ以降ナイルは彼をお兄ちゃんと呼び、行動を共にする様になって憧れの兄貴分から恋心を抱く相手に昇華したのだ。

 そんな彼女の内心は……。


――お兄ちゃんを元気付けられなかったな……失敗。


 ハルやエレナへの悪感情は無い様で、純粋に良い子なのが解る。しかしながら、彼女もやはりギルドそのものよりもアーサーを重要視している様だ。


 このギルドはシンラ・ハル姉妹と、クロード・アーサー姉弟……そして、そんな四人を取り巻くメンバーが中核となって大きくなっていったギルドだ。

 その十人が同じ方向を向いて団結していない状況が、どの様な結果を齎すのか? その答えが出る第二回イベントは、もう二日後に迫っていた。

【森羅万象】は、この十人が中心のギルドです。

このメンバー構成には、ちょっとした意図がありまして……。

詳しくは、後日。


次回投稿予定日:2020/12/19

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― 新着の感想 ―
[一言] アーサー君はヤンデレホイホイ。(ある意味主人公属性)
[良い点] >素材集め要員だろうか 友達を誘ったという発想にならないのは、大規模ギルドになってしまったためなのでしょうね
[良い点] アーサーがジンくんに突っかかる理由はやはり予想どうりでしたか。まあ、アーサーがどれだけ突っかかってもジンくんは大人な対応で流してしまいそうですね。陸上でもアーサーみたいな奴はいたでしょうか…
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