07-09 剣聖の試練でした
エクストラクエストを受領したアイネは、その手にした薙刀を振るう。一流の生産職人によって製作され、更に一流の鍛冶職人の監修を受けた姫巫女が強化した薙刀……強化率は、上限のプラス10に到達している。
更に、その持ち主たるアイネの技量も高い。薙刀は小学生時代、六年間ずっと学んでいたのだ。綺麗な太刀筋も、鋭い踏み込みも一級品である。
しかし、それでも届かない。
老人NPC・ジョシュアの技をモノにする為には、彼に一太刀を浴びせるというものだった。エクストラクエストの中では、攻略難易度が低い条件である。もしかしたら、ユニークシリーズではないのでは? と考えたアイネ。
それが間違いだったのは、言うまでもない。どれだけフェイントを混ぜても、ジョシュアは手にした剣と盾で攻撃を防いでしまうのだ。その動きは、老人とは思えない程に軽やかだった。
更に、ジョシュアも手を出さない訳では無い。その動きに無駄はなく、呼吸に乱れは見受けられない。そして彼の技は鋭く、年齢による衰えは一切感じさせないものだった。
「ふん、三十分か。ここまで粘ったのは、お前さんが初めてだな」
それでも、彼の声色からはその内心が窺い知れた。それはあえて言うならば、落胆だろうか。
その態度が、何故か癪に障った。
「まだまだ……身体がようやく温まってきた所です」
本当は全力でやっているのだが、アイネはそう言って薙刀を構える。祖父に似たこのNPCに、一泡吹かせてやる……そんな考えが頭に浮かぶ。
「強がりだけは一人前か。強がりを口にする余裕の無かったガキ共よりは、マシだがな」
そう言って、ジョシュアが剣を振り被る。彼のSTRはアイネよりも上であり、まともに受ければ相当なダメージを受けてしまうだろう。
故にアイネは、ジョシュアの振り下ろす剣を回避する。
紙一重で避けるのは愚策だ、彼の技量はここまでじっくり観察してきた。振り下ろす剣の軌道をずらすなど、彼にとっては朝飯前だろう。
剣を振り下ろしたジョシュアの動きが、一瞬止まる。その隙を突く以外に方法は無い。
「それなら……っ!! 【スティングスラスト】!!」
一気に間合いを詰めて、薙刀の切っ先を彼の肩に突き刺そうとして……そこで、アイネは気付いてしまった。
――当たらない!!
その予測通り、ジョシュアが身体を捻って薙刀を回避する。そして、その左手の盾をアイネに向けて突き出した。
「く……っ!! 【クイックステップ】!!」
必死の回避によって、直撃は避けられた。しかし完全に避け切る事は叶わず……アイネの左腕に、ジョシュアの盾が叩き付けられた。
「……っ!!」
ただの一撃で、アイネのHPが二割消し飛ぶ。ヒメノには及ばずとも、彼のSTR値は一般的なプレイヤーのそれを遥かに超えている事が解った。
「ふん……逃げる事しか出来んのか?」
そんなジョシュアの態度に、アイネの脳裏に過去の記憶が蘇る。
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それは彼女が、小学六年生に上がったばかりの頃だった。他のクラスメイト達が話す内容に付いていけず、愛は一人でいる事が多かった。愛がこのまま中学に上がれば、小学校のクラスメイトも全員が同じ学校に上がる事になる。
それが嫌だった愛は、祖父が出掛けている隙に母親に相談した。私立の中学を受験したい、と。少し離れるものの、通学圏内に初音大学付属があるのは知っていた。愛の学力なら、今から猛勉強すれば十分間に合う。
母親がそれを父親に相談し、そして三人で祖父に話をした。
「……ふん、好きにしろ」
祖父は興味なさそうに、愛が初音大学付属を受験する事を認めたのだった。
……
それから少しして、愛は祖父に呼び出された。祖父の部屋の襖を閉めて、立ったまま要件を聞く。それが、祖父の教えだった。
しかし、その日は違った。
「……座れ」
そう言って、自分の向かいに座る様に促す。そんな祖父に、愛は面食らった。こんな事は、今まで一度も無かったのだ。
しかしながら、言う事を聞かなければ怒鳴られるだろう。愛は素直に、祖父の言葉に従った。
「中学受験をする本当の理由は何だ」
最初に話をした際、愛は「より上の学校で学びたいから」と告げていた。しかし、それが本心でないと見抜かれていたらしい。
「……近所の中学では、何も変わらないと思ったからです」
愛の言葉を聞いて、祖父は眉間に皺を寄せた。
「愛、それは逃げるという事じゃあないのか」
咎める様な口調に、愛は怒鳴りたくなるのを怺えるので精一杯だった。
本当ならば、感情のままに怒鳴りたかった。誰のせいで、周りに馴染めないと思っているのか、と。
祖父の厳しい躾によって、娯楽など許されない。周りのクラスメイトがその話をしていても、自分は何の話だか理解出来ないのだ。
そんな鬱屈が溜まっていたせいか、愛は祖父に楯突く決意を固めた。
「お祖父様に私の考えは理解して頂けないでしょうから、この話はこれまでにしましょう」
そう言って、愛は立ち上がる。
「待て、愛。話はまだ……」
厳しい口調で愛を引き留めようとする祖父に、愛は我慢の限界を迎えた。
――誰のせいで……っ!!
苛立ちのままに、愛は祖父を睨み付ける。初めての、祖父に対する反抗である。
「私は……っ!! 私はお祖父様の言いなりになる奴隷じゃないの!! お祖父様なんて、大嫌い!!」
そのまま愛は祖父の部屋を飛び出し、自室に戻った。襖につっかえ棒をし、更に押し開けられないようにタンスやら何やらを置いていく。
そのまま毛布に包まって、愛は最悪の気分のまま眠りに付いた。
翌朝、陰鬱な面持ちで居間に行くと、そこに祖父の姿は無かった。
その数日後に、祖父が病で入院するという話を聞かされた。祖父が入院した後も、愛は一度も見舞いに行く事は無かった。
そして一月後、祖父との今生の別れを迎える事となった。
祖父の死後、両親から手渡された手紙。それは愛に宛てた手紙だった。
愛がそれを読んだのは、祖父の葬儀が終わってから一週間が経った頃だった。
そこには、愛の為と思って厳しくしていた事……そして、これからは自分のやりたい事をやるようにという文章が綴られていた。
それならそうと言って欲しかった。何故、ちゃんと口にしてくれなかったのかと愛は思い……そして、気付いた。
そんな祖父の本心を聞こうとせずに、ちゃんと向き合わなかったのは自分自身だ。ただ言われるがままに、その言葉や行動の本質を受け止めようとしなかったのは自分だった。
祖父との対話を避け、最後には投げ出し……逃げ出したのは、自分自身だった。
それから愛は毎日、仏壇の前で手を合わせる様になった。その日あった事を思い返し、祖父に心の中で報告する習慣が付いた。
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「私は、もう逃げない……」
「……何か言ったか、小娘」
ジョシュアの言葉で、アイネは思わず口に出していた事に気付く。しかし……口に出した事で、アイネはある事に気が付いた。
ジョシュアに一太刀を入れる、今のアイネに出来る唯一の方法。ぶっつけ本番で成功させる自信は無いが、他に手は無い。
「いいえ、お気になさらず……それでは……」
これまでは受けに回っていたアイネだが、ここで初めて自ら攻める姿勢を見せた。
「いざ、参ります……【スラスト】!!」
薙刀の刃が、ジョシュアの首元を狙って振るわれる。その攻撃を剣で受け止めたジョシュアが、つまらなそうに鼻を鳴らした。ジョシュアは左手の盾を突き出そうとする。
だが、アイネの攻めはここからだった。
「今……っ!! 【一閃】!!」
受け止められた薙刀に、アイネは力を込めて【一閃】を発動した。【スラスト】よりも威力、攻撃速度が高い【一閃】。
その変化に、ジョシュアはハッとした表情になる。咄嗟の判断で盾を捨て、両腕で剣を握り力を込める。剣で受け止めるのではなく、受け流す事でアイネの【一閃】を逸らしてみせた。
「ぬ……これは、中々……!!」
そんな言葉を呟くジョシュアの口角は、わずかに上がっていた。
相手はモンスターに比べてより高度なAIを有するNPCであり、彼に一太刀を浴びせられないならばPvPでも苦戦するのは必至。
ならば、やるべき事は一つだ。相手に先手を譲らない。受け身に回らず、相手の予測を上回る攻撃を繰り出し、自分のペースに持っていく。
その為に必要なのは意外性……【チェインアーツ】はうってつけという訳である。
ただし、そのリスクは計り知れない。ジョシュアを攻め切れなかった場合、アイネは痛烈な反撃を喰らう。そうなれば、一溜まりもないだろう。
それでも尚、やるしかない……他に、最適解を見出せなかったのだ。
何よりも、自分を試そうとするこの老人の前で……祖父に似たジョシュアの前で、日和った無様な姿を見せる事が我慢ならない。
全力を以って、この強い老兵の鼻を明かす。その為に、自分の出し得る全力を出す。それは、アイネの決意だった。
【一閃】を逸らされたアイネだが、それも戦術に織り込み済み。そして彼女の攻撃……【チェインアーツ】はまだ途切れていない。
「はぁぁっ!! 【スティングスラスト】!!」
至近距離からの【スティングスラスト】による突きは、ジョシュアの胸元を狙っている。盾を捨てたジョシュアは、それを回避する以外に手段は無い……と思われたが、彼は剣の腹でそれを受け止める。
「……むっ!?」
アイネはその切っ先の角度を自ら逸らし、ジョシュアの剣の表面を滑らせるようにして更に踏み込む。
「【一閃】!!」
ギリギリで【一閃】のクールタイムが間に合い、【チェインアーツ】が継続する。
ジョシュアの背中に放たれた【一閃】を、ジョシュアは屈む事でかわした。しかしそれは、ジョシュアにとっては屈辱以外の何ものでも無かった。
自分の攻撃を回避する異邦人達を、何人も撃ち倒しては死に戻りさせて来たジョシュア。そんな自分が、アイネの攻撃を回避させられたのだ。
「ちぃっ!!」
ジョシュアが、アイネの胴体目掛けて剣を横薙ぎに振るう。その一太刀に込められた力の前では、アイネは受ける事すら適わないだろう。
「【ハイジャンプ】ッ!!」
これで、5チェイン。アイネはこれまでの特訓で、何とか6チェインまで繋げる事に成功していた。ちなみに彼女が安定して繋げられるのは、4チェインまでといったところだ。
この跳躍の目的は剣を避ける為であり、高度を稼ぐ為ではない。そして空振りした剣を構え直す前に、アイネは6つめの武技を発動する。
「【フォールスラスト】!!」
上から急降下し、敵を串刺しにするという槍系の武技。それを躊躇い無く発動するのは、ジョシュアが憎いからではない。この男ならば、きっと致命傷を避ける事が出来ると確信しているからだ。
薙刀による直下突きを、ジョシュアは左に跳ぶ事で避けた。先程感じた屈辱を再び……とはいかない。理由は簡単で、それどころでは無いからだ。現に、彼の口数が少なくなっている。
過去最高回数の、6チェイン目が不発に終わる。しかしアイネは回数など、意識の外にあった。それだけ彼女が、この対戦に集中していると言っても良いだろう。
「むんっ!!」
ジョシュアはアイネの武技発動直後を狙って、剣を振り被る。アイネはそんなジョシュアに対し、先手は譲らないとばかりに強引に武技を繰り出す。
「まだまだぁっ!! 【ラウンドスラスト】!!」
薙刀を強引に持ち替えて、平行に構えたアイネは武技を発動。現実では不可能な芸当だが、これはゲームだ。システムアシスト……武技の型をなぞるという仕様によって、それは成功した。更には7チェイン目の発動。自己最高記録を更新した、その一太刀。
ジョシュアの剣と、アイネの薙刀がぶつかり合い火花を散らす。
しかしジョシュアのSTRの方が高い為、アイネは押し負けそうになる。だから、もう一工夫が必要だ。アイネは薙刀の刃の向きを、少し上に傾ける。刃が立っている方向に対して力が発揮されるのが、その武技の仕様なのだ。
「【一閃】!!」
武技を使用していないジョシュアに対し、アイネは武技発動時にステータス向上という恩恵を受けられる。【一閃】には発動時STR上昇という特徴もある為、一瞬だけならばジョシュアに匹敵するステータスを得られるのだ。
アイネの【一閃】がジョシュアの剣を跳ね上げ、その胴ががら空きになる。しかしアイネの薙刀の切っ先も、【一閃】によって上へと振り抜いてしまっている。
そんなアイネの取った行動は、意識してのものではなかった。祖父に習わされた薙刀の道場で、何度も何度も繰り返した型。無意識の内に、自然と身体が動いた。
薙刀術は、刃だけを使うに非ず。薙刀の柄が、ジョシュアの胸元を打ったのだ。
アイネの一撃は、一太刀と呼ぶにはあまりにもか弱いものだ。ジョシュアのステータスならば、蚊に刺された様なものだろう。
しかしジョシュアは追撃を繰り出すでもなく、自分の胸を打ったアイネの柄を見て佇んでいる。ちなみにアイネが動かないのは、技後硬直の後払い……【チェインアーツ】の弊害のせいである。
どれくらい、そのまま立ち止まっていたか。無言の静寂を終わらせたのは、ジョシュアの方からだった。
「……お見事」
そんな一言を口にすると、薙刀の柄に注いでいた視線をアイネに向ける。
「一太刀は一太刀だ。若い割に、良い攻めだった」
ジョシュアの表情は、今まで見せた表情とは違った。つまらなそうな顔でも、忌々しそうな顔でも無い。対戦中に見せた、獰猛そうな表情とも違う。それは……何処か満足そうな、穏やかな顔であった。
そんなジョシュアの姿に、アイネはふと祖父を思い出す。
例えば、テストで満点を取った時。祖父はそれを、手放しで褒めてくれたことがあった。
例えば、運動会のリレーでアンカーを務めた時。劣勢を巻き返しての逆転一等賞を取った時は、帰りに馴染みの和菓子屋で好物の大福を買ってくれた。
例えば毎年、アイネの誕生日のこと。その日だけは毛嫌いしている洋菓子店に自ら赴いて、バースデーケーキを買って来てくれた。
思えば祖父は、厳しいだけでは無かったな……と振り返る事が出来たのだ。
――今日は寝る前に、お祖父様に御礼を言おう……薙刀道場に通っていたから、出来た事だし。
そんな事を内心で思っていると、アイネの脳裏にアナウンスが響き渡った。
『エクストラクエスト【剣聖の試練】をクリアしました』
精神的な疲労感があるものの、得られた達成感は大きい。アイネはようやく、肩の力を抜く事が出来たのだった。
……
ここで待てと言ったジョシュアが、小屋に戻って数分。小屋の扉が開くと、ジョシュアはいくつかのアイテムを手にしていた。
「死んだ家内の物だ、持って行け」
「え!? よ、よろしいんですか!?」
「腐らせるにゃ勿体ねぇからな……お前さんに託す方が、あいつも喜ぶだろうよ」
ぶっきらぼうに押し付けられたそれは、古びた白い騎士服一式とスキルオーブ。そして……一振りの刀だった。
「この刀は……?」
「遥か東の地から来た、胡散臭い男から譲り受けた物だ」
またも、遥か東の地という単語だ。ジンが持つ【分身】のスキルオーブに、ヒイロが戦ったセツナ……西洋風の世界観に、ちょこちょこと隠されている謎の土地[遥か東の地]。
もしかしたら、その内行ける様になったりしないか? 少しばかり、そんな予感がしているアイネだった。
「あ……そう言えば、ジョシュアさん。技を教えて頂けるのではありませんでしたか?」
「ふん、俺の技じゃねぇ……死んだ家内の技だ」
そう言ってジョシュアが指を差した、黒いスキルオーブ。アイネはそれを見て、頭を下げる。
「ずっと、ずっと大事にさせて頂きます」
そう言ったアイネに一瞬だけ笑みを浮かべると、ジョシュアは踵を返した。
「……何かあったら、顔を出しな。話くらいは聞いてやる」
そう言い残して、小屋に帰っていくジョシュア。アイネはその後も、彼の去った小屋から視線を逸らせずに居るのだった。
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ジョシュアの小屋を後にしたアイネは、さしたる問題もなく仲間達と合流。そこでクリアしたエクストラクエストと、その報酬について報告する。
「じゃあ、剣聖って呼ばれていたのは……」
「亡くなった奥さんの方みたいですね。騎士服の情報を見ると、それが解ります」
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素材≪くたびれた剣聖の騎士服≫
効果:無し
スキル:【空欄】
素材≪罅割れた剣聖の鎧≫
効果:無し
スキル:【空欄】
素材≪罅割れた剣聖の刀≫
効果:無し
スキル:【空欄】
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更には表記を見ると、このアイテムが≪壊れた発射機構≫等と同系統の素材である事が解る。職人プレイヤーによって修復され、装備品として蘇る類の物だろう。
銃火器や大砲、呪いの篭手に魔楽器。それらの性能は折り紙付きであり、修復が成されればアイネの戦力……ひいては【七色の橋】の戦力強化に繋がる可能性が高い。
そして、もう一つ。彼女が手に入れた、剣聖の技が収められたスキルオーブ。その色はユニークスキルを示すであろう黒で、ただ一つのものである事が窺える。
そして、問題はその性能である。
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ユニークスキル【百花繚乱Lv1】
説明:聖なる力を宿す武具を自在に操り、敵を打ち倒す剣聖の技。
効果:聖属性を持つ装備使用時、武技のステータスに+5%、技後硬直時間-5%、クールタイム-5%。
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「おぉ……これ、武技を強化するスキルだね」
ヒメノの言葉に、アイネは頷いてみせる。武技を使用する際に気にする点と言うと、やはり技後硬直とクールタイムだ。5パーセントとはいえ、それが減るのは純粋にありがたい。
「レベル表記があるって事は、最低でもレベル10までは上げられる……5%って事は、レベルアップでプラス5%か? だとしたらレベル10の時には、強化率がプラス50パーになる可能性が高いな……」
真剣な表情でアイネのシステム・ウィンドウを凝視し、ブツブツと呟くハヤテ。分析しているハヤテの目は、コアなゲーマーのそれである。
そんなコアゲーマーに、ジンが真剣な表情で声を掛ける。
「ハヤテ、50%って事は……10秒のクールタイムが、5秒になるってこと?」
「そうッスね。これはかなり強スキルッスよ、特にプレイヤー相手には……ね」
プレイヤーは当然、武技の技後硬直時間やクールタイムを意識して立ち回る。そしてシステム的に設定された時間というのは、プレイヤーにはどうする事も出来ない。故に対人戦は、武技や魔法の読み合いが肝となるのだ。
そんな設定時間の短縮は、対戦相手にとっては初見殺しになり得るのだ。PvPにおいて、大きなアドバンテージになるだろう。
「新スキルを試す事が出来るのは、装備が完成してからだな」
「ですね。でも、それ以外にも……【チェインアーツ】の精度を上げておきたいんです」
「そっか……なら早速、ボス戦に行くかい?」
ヒイロの問い掛けに、アイネは頷いて答える。それを受けて、【七色の橋】のメンバーが並び立つ。
「よし、二度目のランドドラゴン戦だ。速攻で倒そう!」
「「「「「「おー!」」」」」」
「お……おー」