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悪い奴は誰?  作者: じいちゃんっ子
最終章 異世界帰還篇
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聖女アイカ~私の為すべき事

「...ここは?」


 気づくと私は大きな部屋に倒れていた。

 確か私は...

 そうだ、高校の文化祭で使う備品を探す為に倉庫に居た...いや違う。


 なんだったかな?

 大切な人を探していた様な...


「目覚めましたね、愛花」


 突然声が響く。

 見上げる先に、1人の美しい女性が微笑んでいた。


「...違う」


 女性を見た私は思わず呟いた。

 何が違うと言うのだろう?

 しかし女性の姿に感じた違和感は拭えなかった。


「貴女は?」


「私はゼン・ザイン。この世界を()統べる女神の1人」


「女神?」


 やはり違う。

 女神を名乗るその女性には見覚えが無い...


 何をバカな事を。

 第一、女神様なんか実際にいる筈が...会った事が無いのに...


「どうされましたか?」


「いえ...」


 私の様子に女神を名乗る女性は首を傾げた。

 一体どうなっているんだ?

 この状況は普通で無いのに、何故か受け入れてしまっている自分がいた。


「え?女神様?マジかよ!」


「...ナツキ」


 はしゃぐ声に振り返る。

 1人の男が満面の笑みで女神に駆け寄っていた。

 男の名前は笠井夏樹。

 私と同じ高校に通う同級生。

 しかし、彼の顔を見た途端、私の心に抑え様の無い嫌悪の気持ちが芽生えた。


「貴方達にお願いがあるのです」


「分かりました」


 女神の言葉を制止し、了承する。


「え?」


「魔王を...倒すんですよね」


 なぜか言葉が止まらない。


「分かってるな川上!お約束だぜ!」


 隣でナツキが手を叩く。

 奴の顔は見たくない。

 単なる同級生、特に悪い印象があった訳じゃないが。


「...そうです。

 魔王が復活しました。

 まだ人間に対して本格的な侵攻をしておりませんが」

「未然に防ぎたいと」


 ナツキを無視しながら女神との会話を再開する。

『早く、早くして!』

 心の中は、そう叫んでいた。


「なんだよ、つまんねえな」


 無視していたナツキが呟いた。

 奴の表情から不満が見て取れた。


「つまらない?」


「だってよ、攻める魔王軍を撃退しながら、魔物を倒して回るのがファンタジーの王道だろ?」


 やっぱりコイツはクズでバカだ。

 性格なんか知らない筈だが、ナツキの発言に納得してしまった。


「ついては、貴方達にギフトを授けます」


 女神は私達の様子を無視しながら両手を広げる。

 そのポーズは見覚えがあった。


「チート!チート能力を下さい!!」


 バカ(ナツキ)が喚く。

 女神はバカを無視すると、私の頭に手を触れた。


「先ずは貴女から」


 女神の指先から何かが入って来た。

 懐かしい感覚、これは間違いない。


「聖女ですか」


「そうです、あらゆる魔法を学べば全て使える様になります」


「ありがとうございます」


「やっぱりか』

 なぜか、そう思った。


「次!次は俺ね!」


 バカが私を押し退け、女神の足元に膝ま着く。

 両手を握り、眼を瞑る姿に呆れてしまう。


「勇者!勇者のギフトを...」


「分かりました」


『止めた方が良い』

 女神にそう言いたかったが、声が出ない。

 どうしてだろう?


「あとは...女神様ちょっと...」


 バカが女神様に囁いている。

 ろくでもない願いに違いない。

 チラっと私を見るバカに殺意が沸いた。


「良いでしょう」


 表情一つ変えず、女神はバカに触れた。

 奴の願いは届いたのだろう。



「では、お行きなさ」

「あのシルコゥ様...」


「私はゼン・ザイン...」


「...すみません」


「誰だよシルコゥって』


 バカの呆れた声を気にしている場合では無い。

 どうしても聞きたい事があった。


「どうすれば元に戻れるのですか?」


「おい川上」

「少し黙って」

「...なんだよ」


 バカを睨むと怯んだ奴は俯く。


「魔王を倒せば戻れます」


「失敗したら?」


「ここから再びループするでしょう」


「ループ?元の世界で新しく転生するのではなくて?」


 何かが違う。

 何かは分からない、だがそう思った。


「...それは違います」


「そうですか」


「ループって、何回でもやり直せるって事だよな?

 最高じゃん!!」


「最高?」


「だってよ、上手くやりゃハーレム...いや思いのままに何回だって楽しめるじゃんか」


 バカの浮かれた言葉に唖然とする。

 コイツは無限に続くかもしれない日々をどう考えているんだ?


「はあ...」


「ではお行きなさい...愛しき者の友よ...」




 女神の言葉を聞きながら意識が遠退いて行く。

 再び眼を開くと、私は魔法陣の描かれた床に倒れていた。


「おお成功じゃ!」


 私達を見守る様に立つ数名の人達。

 その中に居る1人に思わず聞いた。


「国王陛下?」


「うむ、異世界の勇者達よ。

 我々の願いを聞いてはくれまいか...」


 やはり国王陛下だ。

 その言葉に私は頷いた。


「はい分かりました...」


「畏まりました、王よ!」


 こうして私は異世界で魔王を倒す事となった。

 王国は私に魔法を授ける為、あらゆる文献と、優秀な魔法使いを集めた。


「素晴らしい!

 もう全部の治癒魔法を!!さすがは聖女様!」


 集められた全ての怪我人を治癒すると魔法使い達が私を誉め称える。

 怪我人は全てバカ勇者が訓練と称し、痛め付けられた王国兵士達。


 いくらバカを咎めても止めようとしないので、私が全員の治癒魔法を行っていた。


 教わる魔法は未知の筈、だけど全く苦労する事が無かったのだ。


 もう魔法使い達から学ぶべき魔法は無い、しかしどうしても知りたい魔法が残されていた。


「転生魔法は無いのですか?」


「転生?

 あるには有りますが...」


 魔法使い達の表情が曇る。


「使えるのは神のみとされています。

 文献はありますが、誰も出来た事が無いのです」


「そうですか、でも知りたいのです」


「分かりました」


 こうして私は転生魔法を学んだ。

 残念ながら、魔力が足りず行使する事は出来なかったが。


「私はいつ出発するのですか?」


 王国に転移して2ヶ月、未だ出発出来ない日々に苛立ちながら宰相に尋ねた。


「申し訳ございません、討伐隊の人選が未だ」


「終わらないと」


「はい、剣姫様はこちらに向かっていらっしゃるのですが」


「剣姫?」


 宰相が言った言葉に頭が痺れる。


「ええ、辺境の地で剣姫のスキルを授かった最強の者です」


「ミザリー...」


「良くご存知ですね」


 驚愕する宰相。

 なぜだろう?名前と同時に1人...いや2人の女性が頭に浮かんで来る。


「どうしてかしら?」


「あと、ミザリー様の婚約者のアルト様もです。

 この者は何もスキルを授からなかったにも関わらず、最強の剣士と名高き男で...」


「アルト...」


 今度は痺れで済まなかった。

 顔に血が昇り、全身が熱くなった。


「すげえ!誰が相手でも負けねえぜ!!

 これで世界は俺の物だ!!」


 遠くでバカの叫ぶ声がした。

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