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悪い奴は誰?  作者: じいちゃんっ子
第3章 日常編
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元聖女(悩める乙女) 川上愛花

「それじゃ宜しくお願いします」


「分かった、ありがとう愛花」


「ありがとう愛花ちゃん」


眠ったままの有人を鶴野雫に任せて私と霞は学校を後にする。


有人達3人は雫の運転する車で自宅に戻るのでとりあえず安心。


「私達も帰ろう」


「そうだな」


霞も落ち着きを取り戻した、可愛い寝顔の有人にすっかり安心したのだろう。

駅で霞と分かれ私は自宅に着いた。


「ただいま」


「おかえり愛花、遅かったわね」


「うん文化祭の準備で」


「来週だったね」


「ええ」


玄関で母と軽く話す。

1ヶ月前に異世界から戻った時は号泣してしまい随分家族に心配を掛けたが今はもう大丈夫。

やっぱり家族は良い。


「ふう」


自分の部屋に入り今日の事を振り返る。


(杏の記憶が戻って、女神と魔王が手を結んだってどういう事?)


そんなの酷いよ、私がアルトと命懸けで救った異世界の人に申し訳無いと思わないの?


しかし杏と過ごした1ヶ月の記憶が私を悩ませる。


杏は良い子だ。

元魔王と聞いて私は常に警戒していた。

杏の考えている事をずっと見ていたが彼女の頭の中はいつも


(兄ちゃん(有人)好き!)


(愛花なら兄ちゃんと付き合っても許してあげる!)


(霞と友達になれて嬉しい!)


それは嘘では無いだろう。

私には嘘を見抜く力がある。

隠蔽する事は出来ないだろう。


本当に有人(アルト)が好きな女の子、それが鶴野杏。


「アルト...」


そして次に思い出すのは今日の有人の事。

霞は途中から覚えて無いだろう。

私は霞の記憶を一部消したのだ。


有人は部屋の惨状を見て完全に混乱した。

立ち尽くすクズ(夏樹)の姿に激昂し、掴み掛かった。


『笠井、貴様!』


そう叫んだ有人は殺気を迸らせながらクズを叩きのめした。

その様子に私はただならぬ物を感じた。


『よくも...よくもミザリーを!』


そう叫び一撃でクズの意識を奪ったが有人は止まらない。

クズの骨を全て砕き、両目をくり抜いた。


『どうしたの有人!?』


慌てて有人を抑えるが振りほどかれてしまった。


『もう奪わせない、杏は俺の大切な家族なんだ!

貴様なんかに奪われてたまるか!』


その言葉に私の心は抉られた。

有人の中に眠る記憶、異世界で起きた悪夢。

大切な物を奪われた記憶は決して消え失せないと知った。


『有人落ち着いて!睡眠(スリープ)!!』


私は魔法で有人を眠らせた。


『アイカ...絶対に傍を離れないで...』


そう言って有人は崩れ落ちた。


『勿論よ有人、いいえアルト』


(愛してる)、そう言おうとしたが。


『...アルト』


(ミザリー)の呆然とした声で我に返った。


(不味い、霞が自殺する!)


慌てて霞の記憶を奪ったのだ。


「やっぱりクズ(夏樹)は殺すべきだったな」


全ての元凶はあいつだ。

それなのに何故か殺すのを躊躇ってしまった。

今日の真相を、奴の記憶から知ったから?


違う、本当は分かっている。


異世界で婚約者のミザリーが居るにも関わらず私はアルトが好きになった。

奪ってしまいたいと考えた事も正直ある。


夏樹がミザリーに使った傀儡のスキルは少しでも相手が自分に恋慕の気持ちを持つと発動するとシルコゥから聞いた。


もし異世界に居た時に私が傀儡のスキルを持っていて、アルトが少しでも好きって気持ちを私に抱いてくれていたら?




私は傀儡を使わなかったと言い切れるだろうか?




そう考えると夏樹を殺せなかったのだ。



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― 新着の感想 ―
[一言] 恋慕ではなく羨望なのかなぁと思いました。 私がそうだったらと考えるのってとても難しい。 それが嫌悪する対象だったらなおさら。 すべてを満たすことなんてできないって伝わってきて苦しくなります。…
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