元女神(ショタコン) 鶴野雫
異質な魔力を感じ校内にリサーチの結界を張った。
すると鶴野杏が襲われ様としている場面を発見した訳だが。
...次の展開に言葉を失った。
杏...いえ魔王のツゥ・ブアーンは婬魔サキュバスとして復活し、たちまち凄まじい性技で男達の性を吐き出させた。
その性技は異世界の物。
男達は何度も絶頂を繰り返すが杏は止まらない。
魔力を纏わした彼女の手は男達が用意していた大人のおもちゃ(この世界に存在する物、勉強済み)を使い死ぬ手前まで絞り尽くした。
『大変だ!!』
思わず見入っていた私は叫んだ。
慌てて愛花達に事情を説明し3人を視聴覚室に転位させた。
そして杏を有人達を会わせない様に私の前に呼び出した訳だが。
「派手にやったわね」
「まあな」
私の言葉に杏は動じる事なく応じた。
その態度は私の知る鶴野杏では無い、魔王の貫禄すら感じさせた。
「杏、もしかして魔王の記憶が?」
「有るぞ」
言葉使いまで違う、覚醒したばかりとは思えない。
まさか見落としていたの?
「そんなに警戒するな、魔王としての魔力は未だ封印されておるわ」
「そう」
杏の言葉に嘘は感じない。
だが魔王としてのと言う事は?
「サキュバス程度の魔力はあるのね」
「うむ、復活した様じゃの」
やはり、どうしたら良いの?
ツゥブアーンを封印し元の世界に戻す事は難しい。
送還を繰り返す事は神達の間で禁じられている。
それに元とは言え魔王。
密かに戻し、また魔王の力が覚醒する可能性は否定出来ない。
私がこの場で彼女を殺し愛花達から鶴野杏の記憶を消すしか無い。
しかしこの世界では私の魔力なんか知れている。
魔王の力が封印されているとしても簡単では無いだろう。
「そう警戒するな、お前だって分かっておろうが」
「何がかな?」
「その身体を捨て、本来の姿に戻れば私など直ぐに殺せるであろう?」
「ふーん」
妖艶に足を組み私を見つめる鶴野杏、さすがは最凶を誇った魔王と言った所か。
「だがお前はそれはしたくない」
「どうしてそう思うの?」
余裕を崩さぬ様に問い返す。
「ここで女神に戻ると鶴野雫としてのお前は消えるからだ」
気づいてたのか。
確かにそうだ、鶴野雫はまだ生きている。
何度もこの身体に入る事は出来ない。
その場で身体が耐えきれず鶴野雫は崩壊するだろう。
精神的では無い、物理的にだ。
「他の身体に入り直す事も出来るわよ」
「それは無いな」
「どうしてかしら?」
「簡単だシルコゥ、お前は有人を愛しているからな」
「な!?」
杏の言葉に心が抉られる、こんな気持ちは初めてだ。
「お前が鶴野雫の身体を手放せば[女神鶴野雫]は居なくなる。
別の身体に入り直したら鶴野有人に対する恋慕は消えるかもな」
全てを見透かした目で私を見る。
悔しいが否定出来ない。
鶴野雫の記憶が有人に対する恋慕を私に抱かせているのは間違いない。
女神として生きた長い時間、恋慕なんて感情は持った事が無かった。
初めてだこんな気持ち。
悪くない、寧ろ心地良い...有人...好きなんだ。
「貴女はどうしたいの?」
「察しが良いな、望むのは1つだ」
「何かしら?」
「このまま妾を鶴野杏としての一生を遂げさせよ」
「それだけ?有人と一緒になりたいとかじゃないの?」
意外だ、てっきり結ばれたいとか言うと思った。
「人間の一生は短すぎる、妾はこの人間の一生を有人と楽しみたい。
この身体処女で終わっても悔いは無い、全てが結ばれるのは死んでからで構わんのじゃ」
成る程、鶴野杏は死後の世界に期待なのか。
「そうは行くかしら?」
「どういう意味だシルコゥ?」
「この世界は私達が知る世界と違うのよ、死んだらそれっきりかもね」
「な、何だと!?」
初めて焦った顔を見せたな、やっと形勢逆転だ。
「まあ、暗黒世界に戻す事くらいなら出来ないでも無いかな?」
「本当か?」
「多分だけどね」
嬉しそうな魔王、出来ないかもしれないし出来るかもしれない。
永遠に閉ざされた暗黒世界に行きたいと思う事自体が私には理解できないからだ。
「頼む、もし叶えられるなら妾が持つサキュバスの技を教えてやるぞ!」
「は?」
何をこの魔王は?
「お前、処女であろう?女神であった頃からずっと」
「...う」
「妾の技術があれば男は天国、自らも天国体験間違い無しじゃ!」
まさか?でもさっきの男達の惨状を考えたら嘘じゃないわね。
「どうじゃ?」
「乗ったわ」
魔王と女神、ここに歴史的な締結を結んだ。
でも杏、サキュバスの技は愛花や霞に教えては駄目だからね。