元勇者(ゴミ) 笠井夏樹
『あいつならヤらしてくれる筈だ』
ある1人の女に狙いをつける。
女の名前は鶴野杏
あの女が持つ雰囲気。
間違いない、あいつは淫乱で、異世界にいた婬魔サキュバスだ。
楽しそうに愛花や岬、クラスメートの女達と談笑している。
だが何よりムカつくのは、その中心にいる男だ。
「鶴野有人...」
転校生の鶴野有人だ。
澄ました面しやがって、あの顔を見ているとアイツを思い出す。
アルト、剣士アルト。
話によると鶴野有人と鶴野杏は血の繋がらない兄妹らしい。
杏を俺の物にして有人の絶望した顔が見たい。
(だがどうやって?)
認めたくないが俺の勇者としての力は封印されている(実際は完全に抹消されている)。
正面から口説こうにも心の声がそのまま口に出てしまう状態では近づく事も出来ない。
「糞が...ムカつく」
一服する為教室を出て校舎裏に。
異世界から戻ってから吸い始めた煙草、親父が常にストックしているのから盗み放題だ。
「おい、本当に鶴野をやるのか?」
「任せとけ鍵は準備したからな」
「楽しみだな」
校舎裏から聞こえる声、間違いない学校で一番の不良共。
異世界から戻って来たばかりの頃、こいつらを叩きのめそうとして、逆に酷い目にあわされたんだ。
(成る程、鶴野を乱暴する算段か)
こいつらは1年前岬霞をレイプした奴等。
だがリーダーは1月程前に襲われて学校を辞めて行った。
噂によるとレイプした女の知り合いにヤられたって話だが懲りない奴等だ。
「...これって?」
これはチャンスだ、襲われる直前に駆け付ければ俺に好意を抱く筈、後は傀儡スキルで。
作戦は決まった。
翌日から鶴野杏の行動を常に見張る日々が始まった。
違うクラスの鶴野杏だが見張りは簡単だった。
何故なら去年岬を襲った時と同じ作戦と知っていたから。
「学習能力の無い奴等だ」
ある日の放課後、鶴野は1人視聴覚室に向かっていた。
(間違いない、今日鶴野を襲う気だ!)
鶴野の後ろを歩く男の影を更に後ろから尾行した。
「きゃ!!」
視聴覚の扉を開けた鶴野の背中を後ろから着けていた奴が押した。
恐らく視聴覚室内に仲間が居るんだろう。
「よし!」
俺は職員室に走る。
これで鶴野を助ければ俺に好意を抱く...
「待てよ」
助けに入ってまた心の声が出たらどうなる?
『良かったな、次は俺にやらせろ』
言うだろうな、間違いなく。
「止めた」
廊下の角で足を止める。
決めた、乱暴された後の鶴野を次は俺が襲おう。
奴等のおこぼれは仕方無い、先ずは性欲を充たそう。
「ん?」
10分もしない内に視聴覚室の扉が開いた。
(もう終わったのか?
もしかして鶴野が舌でも噛んだりしたのか?)
廊下の角に体を預け様子を伺う。
「馬鹿が...」
全く服装の乱れも無い鶴野が長い髪を手で掻き分けながら出てきた。
鶴野の姿が消えたのを確認し開け放たれたままの視聴覚を覗く。
「これは?」
俺が目にしたのは全裸で倒れる3人の男達。
何より異様だったのは、
「臭ぇ」
性臭の混じった糞尿の臭い、3人共締まりなく脱糞と射精を繰り返していた。
「お前も仲間か?」
余りの光景に言葉を失っていると後ろから声が、
「鶴野..川上...岬まで...」
「笠井よくも!」
「ち、違...」
鶴野有人が鬼の形相で俺に迫る。
その身のこなし、まさか?
(....まさか本当にアルトか?)
言葉は声に成らず意識を失った。