高校2年 川上愛花
「やっぱりミザリーなの?」
私は目の前に居る小柄な少女に再度確認する。
「久し振り・・・元気そうね・・・」
私の顔を見たミザリーはみるみる涙を浮かべる。
間違いない姿形はまるで違うが発しているは気は紛れもないミザリーの物だった。
「そうね、1ヶ月振りかしら」
「初めてよローブを着てないアイカを見るのは」
「当たり前でしょ」
ミザリーの言葉に思わずつっこむ。
仮装でもしない限りローブを着ている人はこの世界にいないだろう。
「それにしても・・・」
「この姿でしょ」
私の言葉にミザリーは両手を広げて笑う。
本当に驚きだ。
背も高く(約170cm)、凛々しい目元、引き締まった唇で美しいブロンドヘアーを靡かせていた異世界のミザリー。
今私の目の前にいるのは小柄(150cm前後)な背丈、大きな瞳は可愛いい垂れ目で小さな口元だけ以前と同じ様に強く引き締まっているミザリーだった。
「これではアルトが私を見ても分からんな」
「まあ外見ではね」
そう言った私はミザリーに抱きついた。
もう我慢の限界だ!
「ち、ちょっと!」
「可愛い!」
驚くミザリーに構わず私は頬擦りをする。
元々私は可愛い物に目がない。
目の前にこれ程可愛い女の子がいるのだから仕方が無いじゃないか。
「もう!」
抵抗していたミザリーだが私が身体強化の魔法を自分に掛けると諦めた様に大人しくなった。
「あれ?」
ふとミザリーの手首に刻まれた傷痕に目が行く。
手首には幾筋もの傷痕が刻まれていた。
「ああこれ?」
「初めから?」
「ああ、転移した時からな」
「ちょっと見せて」
私はミザリーの両腕を見る。
其処には傷痕だけでは無い。丸く火傷の痕まで沢山あった。
その原因は直ぐに分かった。
「煙草を押し付けられたのね」
「そうか煙草の火傷か、其処までは分からなかった」
ミザリーは特に気にする様子は見せなかった。
「エクストラヒール」
私はミザリーの腕だけでなく体全体に治癒魔法を施す。
ミザリーの体を柔らかい光が包む。
「ありがとう」
「どういたしまして」
ミザリーは体を、特にお腹の辺りを触りながら微笑んだ。
「酷くやられてたみたいね・・・」
ミザリーの仕草には見覚えがあった。
異世界で魔物に襲われ拐われた女性を助けた時、治癒魔法をかけた時にする仕草にだった。
ミザリーの体、特に性器の損傷が激しかった事を知る。
「ああ、前も後もボロボロだったよ」
相変わらず特に気にする様子も無いミザリーだが私の心に激しい怒りが込み上げる。
「気にするな、この体を痛め付けた奴等は全て報いを受けたからな」
「そうなの?」
驚く私にミザリーは冷たい笑みを浮かべた。
「ああ、私の意識が戻ったと聞いて焦ったのだろう。向こうから出向いてくれたよ」
「それで?」
私は不安になる、いきなりミザリーが殺人を犯して無いか心配になったのだ。
「安心しろ、殺しはしなかった」
「そう」
「だが二度と行為は出来ないだろうな」
「やっぱり」
何となく想像は出来た。
「奴等を治すか?」
「まさか」
ミザリーの言葉を即座に否定する。
1人の女の子をこれだけ痛め付けたのだ、其なりの報いは受けて然るべきだろう。
「それにしてもアイカの治癒魔法は凄いな」
感心した様にミザリーは呟いた。
「まあ、あっちではゴブリンやオークに襲われた女性を大勢治癒したしね」
「そうだったな、記憶まで消してな」
「うん体を治すだけじゃ心は治らないし」
「そうだな」
私の言葉にミザリーは苦しそうに俯いた。
(しまった!
私の軽はずみな言葉にミザリーはおぞましい記憶が甦ってしまった!)
「ミザリー・・・」
「気にするな、私の記憶は消さないでくれ。
これは私の背負うべき業なんだ」
「業?」
「ああ、記憶を消しても私がアルトにした事は消えない。いや消してはダメなんだ・・・」
苦しそうに呟くミザリーに私は何を言って良いのか分からなかった。
「あいつは居るのか?」
「あいつ?」
「・・・ナツキだ」
ナツキの名を出すミザリーの顔は苦悶に満ちていた。
本当は口にするのも忌まわしいのだろう。
「いるよ、早速殺す?」
「・・・いやまだだ」
意外なミザリーの言葉。
「なぜ?私は早く殺したくて堪らないんだよ」
「殺すのはアルトの前でだ」
「ミザリー・・・」
「アルトの前でナツキを殺す。
そして私はアルトに一言詫びて死にたいのだ・・・・」
悲しいミザリーの決意に私はどうして良いのか分からない。
『ナツキはすぐにでも殺したい』
『しかしミザリーは失いたくない』
「アルトに会ってからだ」
「そうだね・・・」
重い足取りで私達は職員室に向かった。




