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13話 「分身tueeee」

「空間把握には引っ掛かってないな」

 

 アインは、村から出て能力を見ていた。

 死龍王(カースドラゴン)が、近くに居るかを確認するためである。


「ふぅ……」


 それにしても気が乗らない。

 なぜなら、一人であるから。

 戦力的に考えれば、古代龍相手に一人はおかしい。

 おかしいのだ。


(ガリア、死龍王(カースドラゴン)がいる方向は?)


《ちょっと待って下さいね!》


 感覚共有というのは、とても役に立つ。

 嫌な感覚も共有してしまうが、それでも思考が共有出来るのは大きい。

 俺は、念話だなんて呼んでいるが。

 それに、ちょっと恥ずかしいことを考える前なんかは、一度能力を切らなければいけない。 

 丁寧な扱いが求められるのだ。

 

《分かりました。

 西の方向らしいですね!》


(ありがとう)


 これで方向は確認できた。

 距離は二キロメートル以上。

 十分対処可能である。

 問題は、対処の方法であるが……。


「そうだ、前のやつ残ってたよな」


 前に鳥獣族(ウィンデン)対抗のために用意していたものだ。

 再現可能にはなっているが、まだ使用はしていない。

 それを工夫して使用するため、色々思考を張り巡らす。


(核、本当に魔刀って俺の翼で出来ているんだよな?)


《はい、その通りです。

 翼の鉱物は魔結晶と言い、魔力を圧縮して固めた物です。

 それ故、魔力伝導率が非常に高く、強度は魔力の質に依存します。

 アイン様の場合、質が非常に良いため強度が高くなっております》


(なるほど。

 じゃあ、刀をベースとして再現は可能か?)


《はい、勿論可能です》


 おし、これで勝算が出来た。

 僅かなものだが、それでも無いよりはましだ。

 魔力消費が激しそうなので、本番に取っておくとしよう。

 楽しみだ。

 思わず、口元が綻んでしまうほどに。


「それじゃあ、行くか」


 翼を再現し、目的地に向かって飛び始めるため、空高く飛翔した。

 最初は、一気に気圧が上がり頭痛がした。

 しかし、動かないで空中で制止していると、それも慣れていく。


「ゆっくり上がらないと、結構辛いんだな……」


 頭を押さえ、自らの行動を反省した。

 胃から口へ込み上げるような、感覚である。

 

「大分落ち着いたぞ……。

 ここからは見えないか?」


 死龍王(カースドラゴン)の姿を目視しようと、良く目を凝らす。

 しかし、それらしき影はない。

 あったらあったで困るのだが、目標が見えないというのは、不安の種である。


「早めに突撃しても良いのかな?」


 アインとしては、早めに終わらせて皆の無事を確認したいところである。

 しかし、今行っても殺されるのがオチである。

 ならば、兵力が分散するときを待った方が良いのか……。

 それだと、死傷者が出る可能性が……。

 もう、何をしても駄目な気がした。


「どうすりゃあいいんだよー!」

 

 頭をかきむしり、悩む。


《アイン様自身を再現してはどうですか?》


 む?

 今、いけない提案が成された気がする。

 それをやってしまえば、俺がダメになるぅ!

 という提案が。


《そうすれば、兵力を分散することも可能です。

 制御(コントロール)は、私が行いましょう》


「分かった、今回だけだ。

 一回だけなら……。

 うん、一回だけだ!」


 一回だけなら!

 という甘い考えが、アインの頭をよぎる。

 

「じゃあ、再現してくれ!」


《はい、完了です。

 実行しますか?》


「え、早くない?

 段々能力使用のスピードが上がってきてるような気がするんだけど、気のせいか?」


《事前に処理してるだけでございます》


 おっ、能力に気を使われていた。

 そんなに俺って分かりやすい性格かなぁ。

 うーん……。

 そうかも知れない。

 これから、気を付けようっと。


「それじゃあ、実行頼む」


 この言葉が切っ掛けとなるように、アインの目の前に魔力が集中する。

 そして、アインそのものを形作っていく。

 繊細に、顔や髪の感じまで。

 そこまで要らなくない?

 って所もだ。


 無論、男の勲章はありません。

 だって気になって見たから……。

 つるっとお人形のようになっていた。


 それから、アインと同じ服が形成されていく。

 上に着せられていく感じだ。


《完了しました。

 アイン様(分身)は、使用された魔力がそのまま保有魔力となっています。

 ですので、保有魔力が切れれば、消滅しますのでご注意を》


 おお、保有魔力か。

 すると、魔力を溜めるための器官があるのだろうか。

 試しに聞いてみる。


《いいえ、器官というよりは、身体そのものに魔力を保有させるのです》


 とのことだ。

 中々奥が深い。

 

「俺の能力は使えるのか?」

 

 これは、一番気になっていた。

 なぜなら、そのうち分身が自我を持って、俺が本当のアインになるのだぁぁ!

 的な感じで襲ってきても困るからだ。


《使えますが、劣化版となります。

 それと、自我を持つことは有りません。

 分身にも感覚共有は可能ですが、空間把握で捉えられる範囲でのみとなります》


 ほお、感覚共有が出来ると言うことは、こいつに偵察させれば良いのか。

 危険が少なくて済むが、魔力が大量に持ってかれてしまうんだよな……。

 ようは、使いどころを考えろ!

 ということだろう。


「じゃあ、俺は真正面から行く。

 こいつは、横からつついて注意を逸らしてくれればいい。

 魔力切れさせないように、気を付けてくれ」


《はい》

 

 アインは、分身をもう一度見つめた。

 自分の姿を確認したかったのである。 


「俺って、そんなイケメンじゃないのね」


 軽くショックを受け、憂さ晴らしとばかりに魔刀を造る。

 そして、


「なんだよぉぉぉ!」


 思いっきり振り上げた。

 アインは、振り下ろすより上げる方がフォーム的に好きなのだ。

 

「ふぅぅ」


 満足したようで、魔刀を離そうとすると……。

 何故か、光っている。

 いや、黒光りしているのではなく、白く光輝いている。


「なんだ?」


 核に助けを求める。

 爆発しそうで、少し怖いから。

 その証拠に、刀(カタナ)を持つ手はカタカタと震えていた。

 

《魂を喰らったようです》


「は?

 俺、とうとう無差別殺人しちゃったの?

 ごめんなさぁぁぁい!」


 なにがなんだか分からぬままに謝るが、あっさりとした殺しだった。

 ついに、殺めてしまった……。

 無差別に!

 どうすればいいだろう。

 罪を償わないとぉぉぉ!


《いや、不死(アンデッド)の兵士(・ソルジャー)ですよ。

 今ので、腐敗竜(アンデッドドラゴン)が五十体ほど落ちましたね。

 それで、死龍王(カースドラゴン)の魂を喰べたみたいです》


 おっと、そっちがあったか。

 てっきり、無差別殺人鬼として後世まで語り継がれてしまうのだと思ってしまった……。


 てことは、死龍王(カースドラゴン)を遠距離攻撃することは可能なのか。

 これなら、勝てるかも知れない!


 あれ、気のせいか?

 若干の寒気が……。


「では、魔刀はどうなる?」


《はい、成長しますね。

 魂を喰らった者の特性に、活かす形で》


 特性に活かす?

 ってことは――――!


《攻撃範囲拡大、となっております》


 そっちかよ!

 てっきり、キラーが付くのかと思ったが、そんなに甘くないらしい。

 確かに数が多いから、嬉しいことには嬉しいが……。 

 なぁ?

 

《後、耐久度向上となっております》


 耐久度が上がるのは、かなり嬉しい。

 戦闘中に何度も壊れられたら、困ってしまうからな。

 

「じゃあ、しばらく遠距離攻撃で様子を見ようかな」


 これに決めだ。

 これで勝てたら万々歳。

 削りきれなくても、かなり弱っているだろうからいける!


 魔刀を腰に当て、一気に――――


「斬!」


 振り抜く。


――――ピュウン。


 どうだ、届いただろうか。

 実際のところ、さっきもそうだが加減が分からない。

 刀ってやつを振り始めて分かったことは、ただ軽いこと。

 そのため、余計な力をいれずに振るというかなぞる事をやっている。

 

 すると、またしても光った。

 今度は、切断面が赤みがかってきた。

 刃の部分である。


 紅に染まりし魔刀。

 カッコいいな!


《今ので、腐敗龍(アンデッドドラゴン)が百体ほど落ちました。

 ですので、貫通強化、魔力消費量減となりました》


「成長早……。

 てか、敵ってどのくらいいるんだろうかな?

 空間把握に引っ掛からないから、分からないんだよ」


《腐敗龍(アンデッドドラゴン)一体に含まれていた魂の量から察するに、一万は下らないかと》


「!?

 多くね?

 数半端じゃないじゃん!

 てことは腐敗龍(アンデッドドラゴン)一体の魂の量ってかなり少ないの?」


《魂の量は少ないですが、質はとても良かったです。

 流石、古代龍だけありました》


「魂の量を推し量る能力とか……やばくない!?

 ううん…………やっぱり、出来る限りは遠距離撲滅作戦でいこう!」


 色々考えるのは面倒なので、遠距離攻撃一卓に的を置こう。

 それでも倒せるかは分からないのだから。


 分身に魔刀を造らせ、一緒に刀を振る。


「「斬!」」


 分身の方は、若干斬撃の飛距離が少なかった気がするが仕方無いだろう。

 なにせ、分身なのだから。

 本来の力が出せたら、本体(オリジナル)を上回ってしまう。

 それこそ非常に危険である。


――――パアァン。


 今度は、遥か遠くで今までしなかった破裂音がした。

 二人で斬撃を飛ばしたからではあるまい。

 すると、考えられるのは――――


「相殺されたか。

 流石にあれだけ削られれば、防御もするだろうな」


 残る攻撃手段は正面突破しかない。

 しかし、怪我はしたくないのだ。

 それに、あまり目立つ行動をして、変な者に目をつけられても困る。

 

「仕方がないか。

 予定通り、正面突破するか!」


 翼をはためかせ、死龍王(カースドラゴン)が居るであろう方向に向けて前進する。

 勿論、分身と共にである。

 

 それにしても、死龍王(カースドラゴン)とはどんなやつなのだろうか。

 もし良い奴だったら友達になれるだろうか。

 いや、やってることは良い奴では無いだろうが。

 もしかしたら、カミラの事について分かるかもしれない。

 カミラが何を思って、俺にあんなことをしようと思ったのか。

 嘘までつく理由を教えてもらうのだ。

 

 そんなことを考えながら、アインは翔んでいるのだった。

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