幕間 リジーの視点
悪夢のような一夜だった。
リジーは顔を洗った。昨夜はほとんど寝ていない。しかし、ダニエルたちはもっと寝ていないのだ。リジーは休めと言われて、ベッドで眠ったが、ダニエルたちは一睡もしていないようだった。彼らは朝、ようやくリジー達と代わり、ナリアお嬢様のそばを離れていた。
ナリアお嬢様を見守りながら、
「旦那様はあの後すぐに、イビキをかいて眠られていたけどね!」
信じられないというように、古参のメイドのナタリーは首を振って怒っていた。
「全く、まだ寝ておられるよ!本当に御立派な領主様だこと!」
と、鼻をならしている。ナタリーの不満をきいていると、どたどたという足音がドアの向こうから聞こえてきた。何事かと思っていると、部屋のドアが乱暴に開けられた。
「お嬢様の様子はどうだ!?」
執事のケニーだった。
「おやおや、何一つお嬢様のために動かなかった人間がいまさら何の用だい?」
すかさずナタリーは嫌みをいう。
ケニーは無視して、ズカズカ歩いてくるとお嬢様を見下ろして、顔を歪めた。
「なんと言うことだ……」
ショックをうけたように呟くケニーを見て、彼にも人の心があったのかとリジーは驚いていると、
「今日は、イザベル様がおいでになるのに!」
と叫んだ。
「お嬢様がこんな有様では、イザベル様のお相手は出来ないだろう!旦那様になんと説明すればいい?」
「私の知ったことじゃないね!」
ナタリーは突きはなすようにいった。
イザベル様は、金貸し業で財をなし、爵位を賜ったトロイエンベルク郷の娘だ。
トロイエンベルク郷は、品行方正で信用できる相手にしか金を貸さないことで有名だ。そのトロイエンベルク郷が何故、旦那様なんかにお金を貸したのかというと、娘のイザベル様の為だった。
イザベル様は成り上がりの新貴族ということで、社交界では冷たい扱いを受けていると聞く。同じ年のナリアお嬢様はイザベル様にとっては特別なお友だちだったのだ。娘に甘いトロイエンベルク郷は、娘の機嫌をとるために、旦那様にお金を貸したのだと、もっぱらの噂だった。
この後の修正していくところ、消した方がいいのかな?