表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポラディアスの星  作者: 千代乃
一章
7/15

手当て

 とにかく長い夜だった。

 使用人たちは怒鳴りあいながら、私を何とか助けようとしてくれていた。

 私はかなり朦朧としていたが、それでも、

「お嬢様は助からない。下手なことをして後で責任をとらされるのは嫌だ」

 と、少なくない者が遠巻きに見ていることには気がついていた。だから、ああでもない、こうでもない、侍医はいつ着くのか。と、イライラしている者のほうが、保身よりも、私のことを考えてくれているのだと分かった。


 猟犬に噛まれた場所は、肉が裂け、腫れあがっていた。私は素っ裸に剥かれて、ジャブジャブ洗われた。裂けた肉の間まで指で洗われるのは、絶叫ものだったが、ダニエルに、

「これは必要なことなんですっ、お嬢様!頑張って下さいっ」

と泣きながら叫ばれると、思うままに叫ぶことは出来なかった。奥歯を頑張ってかみしめた。とてつもなく痛いから涙がボロボロ出てくる。


 その後は傷口に、値段とアルコール度数がとてつもなく高い酒がかけられた。

「やめてー!痛いよー!」

もはや自制心も何もない。私はひたすら泣き叫んだ。このときには、ダニエルに従う使用人たちはすでに腹をくくった顔をしていた。もう私の叫び声などには動じなかった。


 ダニエルの命令で、一番手先が器用で、一番肝のすわったメイドが、裂けた皮膚を縫合していった。驚くべき集中力で、彼女は見事全ての傷口をふさいでいった。


 そして全てのやるべきことがなされ、やっと私に布団がかけられたとき、空はすでに白みだしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ