ポラディアスの星
静かな夜だった。
城塞都市ポラディアスの修道院長、ローレンは誰もいない礼拝堂で神に祈りを捧げていた。
突如、静寂は破られた。
聞いたこともないような轟音と、地響きに彼は立ち上がった。
──何が起こった!?
取りあえず礼拝堂を出ると、修道士たちの寝所の方向が騒がしい。そちらの方へ、駆け足で向かう。
──まさか、壁外からの攻撃か?投石器でも使われたのか?
近年、ならず者の集団が出没し、その被害が年々深刻になっていっているのは知っていた。小さな集落が襲われ、全滅したこともきく。
──連中は、破城槌や投石器ももっているときく。そなたのところも気をつけなさい。
以前会議で司教より個人的に忠告を受けたことを思い出していた。
修道士たちの寝所のある建物に近づくと、寝間着姿の修道士たちが出て来ていた。
「何があったのですか?」
ローレンに気づき、近づいてきた修道士に尋ねると、
「まだ確認はとれていませんが、建物の上部が一部破壊されたようです。」
と答える。
修道士の一人が、
「まさか攻撃されたのか」
と呟くと、別の修道士が否定した。
「だとしたら、たった一回の投石で済むわけがないだろう。隕石じゃないか?」
確かに、攻城されていればもっとうるさいはずだ。といって、誰かのいたずらとも思えない。自然現象と考えるのが無難だろう。
「どうやら、西側の塔に墜ちたようです。建物の一部が損壊しています。負傷者はいません」
修道士の一人の報告をうけて、ローレンは安心して言った。
「建物の被害だけならば、明日の朝、明るくなってから確認しましょう。今日はもう遅い。皆ベッドに戻りなさい」
ぞろぞろと戻る修道士たちを見送りながら、修繕にかかるであろう諸々のことを考えていた。このときはまだ、ローレンは日常の中にいたのだ。