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ポラディアスの星  作者: 千代乃
二章
14/15

道中②

馬車が完全にとまり、わたしとリジーは顔を見合わせた。

外がやけにうるさいようだ。何かのトラブルだろうか。どうやら人の怒声のようで、何やら不穏な気配が伝わってくる。

「・・・リジー、下りてくるわ」

「お嬢様、いけません」

馬車のとびらを開けようとするわたしの腕を、リジーはしっかとつかんで止めた。

「でも・・・」

この馬車の構造上、一度外に出ないと御者のダニエルと意思疎通はできない。

「わたくしが降りますわ。お嬢様はここでお待ちくださいませ」

リジーはきっぱりいうと、わたしを押しやって外に出た。

わたしはしばらく、馬車の中でぽつねんと座っていたが、ドアを開けて馬車から飛び降りた。


「コンツェンのお嬢さんがおでましだ!」

男たちの声に、リジーとダニエルがこちらをふりむく。

「お嬢様!中でお待ちください!」

「われわれにお任せください!」

リジーとダニエルが口々に言う。

ここはデルラントという小さな村に入る少し手前の道だ。コンツェンの領地外の村だが、近隣のため交流があり村の代表者とは顔を合わせたこともあった。もちろんわたしは叔父の後ろについていっただけなのだけど。


馬車を止めているのは若い男たちのようだった。皆、身なりがぱりっとしているように見えた。なんというか、若い農民たちの服装にしてはキレイすぎる気がした。


彼らの手に、武器らしきものがないことにひとまず安堵した。しかし見たところ八名もいる。若い男が複数いるのもある意味脅威だった。貴人の往来を邪魔するのは法で罰せられることだが、この男たちは分かってやっているのだろうか?


「ごきげんよう。デルラントの若い衆のみなさま。わたくしに何か御用でしょうか?」


男たちの前に行き、ドレスの裾を少し持ち上げて礼をし、にこやかに尋ねた。

男たちは皆わたしと同じくらいか、少し上くらいの歳に見えた。本当に何の用かしらと思ってしまう。


「ナリア・コンツェン殿か」


やけに背が高く、がっちりと体格の良いリーダー格っぽい男が前に出てきた。わたしの全身をなめるように見て、顔の、頬の傷を確認してあざけるように鼻を鳴らした。


「貴殿の領ではゼウスの者たちを優遇し、先住民である我々の同胞をないがしろにしている!弁明はあるか!」


突然居丈高に怒鳴られ、わたしはびっくりした。なんて失礼な人なのかしら。


「ずいぶん礼儀正しい方なのね。あなたはわたくしをご存知のようですけれど、わたくしは残念ながらあなたとは初対面ですわ。まずはお名前をうかがってもよろしいかしら?」


むっとする顔をする男にわたしは微笑んで見せた。


「おれの名は・・・ゴードン・イーストという。さあ、名乗ったぞ。貴殿の番だ!」


他の若い男たちもぎらぎらした目でこちらをみている。


「ゴードンさん。お名前を聞かせていただいてありがとうございます。わたくしも質問にお答えしますね。答えはノーです。わたくしの領ではすべての領民が等しく法の下で平等です。国王陛下の名のもとに誓いますわ」


この答えは気に入らなかったようだ。


「貴殿はゼウスの金貸しとも親しいというではないか!」

「なぜ、外からやってきたゼウスの連中を同等にあつかうんだ?」

「ゼウスの奴らのせいで、職を失った人間もいるんだぞ!」


男たちは口々に大声で主張しはじめた。


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