夜航海
水尾引く
夜を渡る船
われた雲の
合間を行く
打ち捨てられた夢の
静かな残骸
闇の浅瀬で
白い月のさざ波をかぶる
伸びをするように
漕ぐ
健やかな
寝息のような速度で
平らな時間の
安らかさで
帆に受ける風の
やわらかな曲線が生み出す
面影の中
無邪気に
口ずさむ名の
あたたかさで
星に明かりを灯す
進み分け入れば
遠くなろうとも
あり続ける
それは
取り残された
小さな浮き
重なりあう夜の深さに
幾度となく
沈んでは
音もなく立ち上がり
断たれることのない波間
いつか
翡翠色の暁を望む