早生まれ撲滅プロジェクト
初投稿です。
私の国は独裁国家である。人々が平等に安心できる生活を作るために共産主義を抱えて連邦国家から独立した。
独裁者の政策の中に「早生まれ撲滅プロジェクト」というものが存在した。具体的に何をするのかと言うと、女性が子供を生む時期が制限されるのだ。
出産が許される月は4.5.6の春と初夏である。他の月に子供が生まれるとその家庭には罰則が与えられ子供は処分される。病院も勿論4月~6月以外で助産を行ってはならない。
出産を制限するなら必然的に妊娠も制限する必要がある。性交が許される月は7月と8月。それ以外の日に性交を行った事が明らかになった場合、罰則が科せられる。言うまでもないが風俗も7、8月以外に経営する事は問答無用で犯罪扱いとなる。
そもそも何故人の誕生日を制限する必要があるのか。これは早生まれの人が被る人生の不利益について触れる必要がある。
我が国が独立する前、連邦国では「1月~3月生まれの人は生き辛い世の中である」という考えが存在した。入園式、入学式、入社式。何においても基本4月は新年度の始まりの月として扱われている。そうなると同じ学年での一番年上は4月生まれ、一番年下は3月生まれという状況が発生する。幼い頃の1年の差は大変大きいものである。体格や体力、脳の発達、年上が年下に勝るものなど幾らでもある。それが駆けっこのようなたわいの無い遊びでも年下にとっては自信の喪失には充分繋がるのだ。自信は人生におけるキーといっても過言ではない。何においても自信は成功に嫌らしくまとわりついてくる。幼少の経験が後の社会格差に繋がっていくのである。このような事態を無くすために独裁者は誕生日を制限し人生のスタートを同時に設定しようとしたのだ。
ルールが出来るとそれを利用する者も少なからず出てくる。私もその中の1人であるのだが、裏社会で産婦人科をやっている。1~3、7~12月のいずれかで出産日を迎えてしまう人は病院ではなく私のところへやって来る。今日1月13日は1人の女性が連れられてこられた。彼女は独裁政党に所属する政治家の妻である。産んだ赤ん坊は双子で2人とも男の子だった。
恐らくこれらの子は誕生月が4月と言い聞かせられながら育てられるだろうが、「早生まれの不利益」の概念が真理ならばそのうち大きな成功を収めるに違いない。悪平等によって更に富裕層と格差が広がるとは皮肉である。