表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

第三話 「崩壊した過去のこと」

俺たちは宿屋を出てからすぐにでもラスボスの居る "???" というエリアに行きたかったのだが、一度は行ったことのある村にしかワープできない仕様なので徒歩を余儀なくされていた。

もともとワープ機能があるゲームなのでGMの固有スキルとしてワープは無いようだった。


「サイゴノファンタジーだったらチョボボに乗っていけたのに…」


城菜が悪態をつく。

このゲームでは馬などの乗り物が存在しない。


「もう! アテナンも飛ばずに歩いてよ! なんか一人だけ楽してるみたいでなんかズルいよ!」


確かにふわふわと浮いていて移動することは苦痛じゃなさそうだ。

俺と城菜は歩くごとに鳴り響く鎧の音で体が重い気がしてしまって、気分的に疲れる。

だがそれは疲れた気がするだけであって、このゲームでは疲労度は無い。


『別にこの世界は仕様上、歩いてても疲労度とかないんだから一緒だよ?』


そう言うと一緒に歩き出す。

神にしてはアレだが、ルックスが10代後半そのものなのもあってなのか、たまに大人びてるなと思う時がある。


「アテナって何歳なんだ?」

「私も気になるかも!」


『うーん…じゃあボク、何歳に見える?』


ルックスなら10代後半だが、それはないんだろう。

検討がつかないが、神なんだし3桁か4桁くらいはいってるか。


「100歳は超えてるんじゃ…うごがっ!!」

「ちょっ?! 来駕!?」


瞬く間に俺のHPが1になった。

仕様上、視界が真っ赤になる。

アテナは目を閉じて俺に向かって二本指を指してブツブツ言っている。

なにをしたんだよ。


『まだ19歳なんですけど』


…意識が遠のく。


「えぇ?! 何するの! ヒール!!」


HPが5割ほど回復した。



『次は本来立ち入れない運営のテストエリアに飛ばして監禁だからねっ』


神を怒らせると怖いな…。

ていうか座標位置ズレバグみたいなのを故意的に起こせるのかよ…。


「19歳って俺らと同じなんだな…」




そうしてしばらく歩いていたらストーリーでは2番目に来る村 "リャンム村" に到着した。



『あれ? おかしいな』


アテナがそう言ってから俺もすぐ異変に気がついた。

NPCが一人もいない。

こんなイベントあったか?


「だーれもいないね…」


明らかにおかしい。

名前に村がついているが、ここは村にしてはかなり人口の多い設定でNPCだけでも賑やかだったはずだ。


『ここ、見て』


村のマップの一部に10mほどの大穴がある。

大穴の中は光が屈折を繰り返し、渦のようになっていて底が計り知れない。


「なんだよこれ…」


『すごく嫌な感じがするからボク確認してくるよ』

 

アテナの表情が険しくなった。


「「…?」」


『…ボクはいま来駕たちの元の世界線に行ってたんだ』


時が止まるってこういうことか、全くわからん。

単身でなら世界線の移動くらいできるわな。


『このゲーム、元の世界線で削除されることが決まってたんだね…』


そうだったのか…まあマゾゲーすぎてプレイヤー人口が少ないもんなぁ。


『消されることが決まったゲームは世界線が崩壊しちゃうんだ』


「それって最後にはどうなるの…?」


『…………この世界線の全てが消えて無くなる』


「その中にいる俺達はどうなるんだ?」


『いまはこの世界の住人だからね……当然一緒に消える』


ちょっと待ってくれ、まったく飲み込めない

いや "飲み込みたくない" が正しいか。

城菜は絶望しているようだ。

俺もだった。


「そうだ! アテナンがラスボスのとこワープして倒しちゃえばいいんだよ!」


得策だ、それでいいじゃないか。

俺は安堵した。


「さすがにゲーマー魂なんて言ってられないしな、死んじまうわけでもなく消えちまうのはきつい」


『そうしたいのは山々なんだけどね』


嘘だろ? この流れではなにも聞きたくないぞ?


『ボクはさっき元の世界線に確認に行って戻ったその瞬間からずっと世界線崩壊の進行を遅らせてるんだ』


「遅らせながらラスボスを討伐することはできないのか?」


『できない…とは言わないけど…』



- - -




ボクが誕生日を迎えた朝のことだった。

パパからの呼び出しにサプライズに違いないとワクワクして向かった。


だがそれは望まないサプライズだった。


 「パパはあと1ヶ月も生きられないんだ」


とてもショックだった。


「お前はこれから正式な神になるんだ、よく聞くんだぞ」


ボクはそれから説明をしてもらったが混乱していた。


現神権者が残りの寿命を、誕生日を迎えた血縁者に伝えると神権は継承される

神の寿命は神権をもった日から100年

容姿は神権をもって20歳を迎えたその時から変わらない

神は人間と結婚し子を作る、だからボクにはママがもういない



ボクはその説明もママもどうでもよかった。

ボクはその最悪なサプライズを受けたあとにプレゼントだと言われ、クレヨンとスケッチブックを渡された。 


ボクは自分の部屋に戻るとクレヨンもスケッチブックも投げ捨てた。

ボクはずっと泣いていた。

そうして気がついたら夜になっていて、パパも気を使ってか何も言ってこない。


クレヨンとスケッチブックを拾い上げる。


『あ…』


…ボクは一世一代の大嘘をパパにサプライズしようと思った。




『ボク特製の絵本をパパにプレゼントしよう! 一緒にこの物語に入ろうよ!』


よくパパと一緒に絵本の中に入ったことがある。

今度はボクが神の力を使って連れてってあげるんだ。


「そうかそうか、それは嬉しいよ」


パパにはもう神の力はないため、今度はボクが連れて行く。


「これは…家か?」


パパとボクのお家の絵を一生懸命思い描いた。

内容は "パパとボクがずっと一緒に、幸せに暮らす" という短いものだが、永遠の物語のつもりだった。

永遠の物語のはずのパパとボクだけの世界が間髪を入れずに壊れ始める。



『どうして…』


パパは笑っていた。


「絶対に叶わない内容の矛盾した物語だもんな、お世辞にも物語は完結できないさ」


『ならボクがずっと…! ここで世界が壊れるのを食い止めるから…!うぐっ…!』

「無理だ、それに…俺はここで最期を迎えられるなら本望だ」

「アテナ、ありが


無理やり元の世界へ転送された。

永遠の物語だったはずの中に入ろうにも、何度試しても入れない。

絵本の世界は完全に崩壊してしまった。


『…んなさいパ…パ………ごめんなさいパパぁあっ…!ううあああああ!!」




- - -



なにも言えなかった。

いや、なにも知らなすぎた。

まさに天真爛漫な彼女のその人格からは想像もできない過去だった。


"友達になろう" なんて言われて友達になった気分で居ただけではないか後悔した。


『ボクはもうなにも失いたくないんだ…だからこの世界から抜けだすまでは絶対に壊させない』


『そのためにボクは、全力を尽くしたいんだ』




「何回でもどんな願いだって叶える約束だろ?」


『…え?』


「俺たちを責任を持って絶対に外に出せ」


「ちょっと、来駕それはあんまりじゃ…

「もう何回も願いを叶えてもらったろ? 外に出て "神様と友達" をしないと契約不履行になっちまうってだけだよ…!」


ちょっとおかしな日本語になっちまった。


「来駕…たまには良いこと言うんだね…」


「なんてみんなして言って笑ったってかぁ!?」





「よっしゃ!最後の村まで向かおうか!」


『「おー!」』


「待て、無視しないでくれ!拾ってくれ!」


- - -


一刻の猶予もないため移動しながら情報の整理をしている。

あれから4日ほど通して歩いている。

疲労がたまらないため限りなく歩くことができるが、精神的に疲労はピークに達していた。

会話もない。


アテナは過去のこともあり、世界線崩壊の抑制を片手間でやるのは嫌なようだった。


戦闘に加わるくらいは大丈夫なようだった。


『…ボクがもっと確認していたらこんなことにはならなかった』


かすれた声でアテナはボソっと言った。

抑制に集中しながらもずっと罪悪感に蝕まれていたのかと思うと胸が苦しくなった。

どうしていいかわからなかった。


『調子に乗った、ボクのせいだ…』

『ボクは初めての友達に浮かれてたんだ…!』

『過去にあんなことがあったのにボクはなんて馬鹿なんだ!』

『ボクが…

俺は気付いたらアテナを全力で抱きしめていた。

アテナの体はとても冷たかった。


「ホントに大馬鹿な神様だな…」


「そうだよアテナン! 私も来駕もアテナンを恨んでなんかいないよ?」


『ありが…とう…!』


アテナは泣いてしまった。


「少し休もう」


俺達は道中の宿屋で休むことにした。


『なんか汚いとこだね! ボクは神様だぞ! この待遇に不満を訴える!』

「そうだねこれは…テンション下がるねぇ…」


アテナも調子を取り戻しつつあるな。


『そうだ来駕』


「ん?どうした?」


『この度はご迷惑をーってことで、一緒にお風呂に入ってやる!』


「それはいい提案だ! 相手にしっかりそれ相応のお詫びをするのは大人として当然の

城菜にひっぱたかれた。


アテナは笑っている。


よかった。

アテナのあんな顔はもう二度と見たくない。



それから俺達はこれからの動向を話し合った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ