ファンタジーショートショート:見捨てられた世界で
あるところに神への信仰を捨てた世界があった。人々は自分達の技術さえあれば奇跡も魔法もそして神への信仰すら必要ないと言い出したのだ。確かに強力なモンスターであったも自分達で作った武器で持って倒すことは可能となっていた。
しかしそんな世界を管理していた神は、その信仰が無くなったと判断するとその管理を放棄した。自分を信じていない世界の管理などする必要がないと判断したからだ。
この放棄によって世界の調整を行う者が居なくなり世界は、今まだに見たことの無い強力なモンスターが蔓延る世界になってしまった。その中でも最たるものが魔王の出現であった。この魔王の出現によってこの世界は緩やかな破滅へと歩みだすだろうと神は考えていた。
ここはある農村。今も村人達が畑仕事に精を出している。
「いやー今日もいい天気が続いて皆良く育ってくれてるなぁ!」
「んだなぁ!今年も豊作だべか!」
そんな事を話している村人達。とそこへ何者かの気配が生まれた。
「もうそんな時期かぁ」
「んじゃ皆で鍬持って魔王城に集合だなぁ!」
「行くべ行くべ!」
こぞって村人達は魔王城へ歩き出した。
実はこの村、魔王城を囲うように作られた村であったりする。しかもほぼ魔王城の体を成していない。玉座のみがあるだけの廃墟となっている。
そこへ黒いオーラが集りだすと、そこから人影が作られた。
「我こそ魔王なり!」
などと大声で叫んでいるとそこへ農民が現れた。
「おー魔王だ」
「みっけだぞー!」
魔王も突然現われた村人と自分の居る場所の廃墟具合に混乱する。
「な、何だ貴様らは!」
問いかける魔王に
「あーまぁ今年もご苦労様!」
「今年もいい栄養になってくれよ!」
問答無用で魔王に鍬を振り下ろすのであった。
「馬鹿な、この魔王が・・・」
その一撃で魔王を倒すと村人達はその魔王の死体をそのまま鍬で土と一緒に耕すのであった。
「魔王が出てくるってことはそろそろ種まきの時期かねぇ」
「んだなぁ。明日にでも種まきするかなぁ」
そこには魔王をほぼ肥やしの一種にしか感じていない村人達の姿があった。
それから暫くして、村には様々な農作物で溢れていた。
「いやー今年も豊作だべ!」
「んだなぁ!こうやって魔王を定期的に出現させてくれる神様に感謝せにゃ!」
「んだなぁこうやって食い物に困らないのも神様のお陰だべ。ありがたてぇ!」
神が自分が放棄したはずの世界から再び信仰が得られていると言う事に驚いた。とっくの昔に滅んでいるだろうと思っていたからだ。その世界がどうなっているのか神が覗いてみると、信じられないものがあった。
放棄したはずの世界。その中で人々は逞しく生き残り魔王を圧倒する力すら得ていたのだ。
「まさか強いモンスターを肥料にそこから作物を育てて自分達の血肉にしていったなんて・・・」
神は驚きながらも新たに信仰が得られている。と言う事も鑑み。
「この世界はとりあえずこのまま見なかったことに・・・」
滅ぼす事も修正することもせず、再び放置を決め込むのだった。




