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五話

 冒険を始めよう・・・と思ったのだがまずその前にひとつの問題を片付けなければいけない。


 「え?なんで?なんで奴隷の首輪が私の首に・・・え?なんで?あ、夢か。ははは、変な夢を見るなんてくーちゃんてば超お茶目♡」


 俺は現実逃避してるくーちゃんに左手から繋がってる鎖を引いてみる。

 

 「いやー、寝ぶふう。」

 

 そのせいで顔面からスライディングしてしまった。

 くーちゃんが。


 「痛い、夢じゃなかった・・・。なんでなのー。ていうか・・・。」

 

 そう言って、くーちゃんは俺を見てくる。


 「なんで、あの時のうるさい男の子がご主人様だなんて、ひぃ犯される。」


 ちょっと、むっとなったので睨んだらすごい誤解を受けた。

 俺は、どうしようかと悩んでると頭に説明が流れ込んできた。

 説明の赴くままにくーちゃんをこの世界から一旦消す。

 説明によると体の中にあるその者の器によって広さが変わる空間があって、そこに戻せるらしい。

 これは、契約した魔物や精霊など限定で人間などの奴隷は隷属となるらしい。

 隷属ではこの空間に戻すことは不可のようだ。

 

 「ふう、これで静かになった。」

 「ムー様、相変わらずえげつないですね。」

 「どこがだ?」

 

 隼人は本当に疑問に思い、首をかしげた。

 

 「これだから・・・」


 何か言っていたが、俺の耳でも聞こえなかった。

 多分、聞こえないようにつぶやいたのだろう。


 「それじゃあ、行きましょう。」


 さっきのことはなかったかのようににこやかに告げた瑠美がさっさと先に行ってしまう。

 俺も苦笑して追いかけた。


 とりあえず、この世界に来てそうそう廃棄所での経験が生かされた。

 普通は迷ったら動かない方がいいと言われたが、あそこでは違う迷ったら人の気配がする方向に行けだ。

 早速、気配を探り(瑠美が)人の気配が多い方へ足を進めた。

 

 1時間程度歩くと森を抜けることができた。

 昼だったらしく、木の屋根がなくなった途端かなりの量の光が目に舞い込んできた。

 反射的に目をおさ・・・・・・えるのは素人だ。

 あそこの人間は急な明るさの変化にも対応できるように育てられる。

 あそこでは不可能?何それ美味いの?状態だ。

 不可能ではなく、するのだ。

 できなければ死があるのみだ。


 「それにしても、多いな。」


 もちろん人がではない。

 魔物だ。

 ここらへんは弱いのだろう。

 いるのは、スライムばかりだ。

 

 「丁度、人が出てきました。」

 

 瑠美が言ったとおり今まさに俺たちと同じく連れてこられたであろう(装備がいいからだ)人の集団が街から出るとこだった。


 「それにしても人が少ないですね。」


 俺とおんなじことを感じた瑠美が呟いた。

 彼女が言ったとおり今出てきた連中以外に、街の外にいる人間がいない。

 いるのはスライムのみだ。

 現在、俺たちは街に向け進行中だ。

 

 そんな時、さっき街から出てきた数人が1匹のスライムに向かっていった。

 

 少々、オーバーキル過ぎないか?


 そう思ってた時が俺もありました。

 一人の男が声を上げながらスライム突っ込んでいき剣を振るった。

 型は悪いがそこそこ早さがある。

 終わったかと思った。

 確かに終わった。

 スライムがいたところで爆発が起こった。

 

 その原因はスライムが剣をかわすために後ろに下がったからだ。

 スライムは下がるとすぐに目の前に突撃する。

 男はスライムにぶつかられ吹っ飛んでいった。

 30メートルくらい吹っ飛び(・・・・)、男はバウンドして止まり光の粒子となって消えた。

 一撃でHPが0になった。

 この時から30分は魂がそこに留まり蘇生魔法か、蘇生アイテムを使えば生き返る。

 そのまま30分放っておくか、倒された者が戻りたいと思うと協会に魂が飛んでいきそこで新たな肉体が創られ蘇生する。

 そして、一定時間ステータスと所得経験値が下がるデスペナルティーを受ける。

 蘇生魔法か、蘇生アイテムで生き返るとデスペナルティーは受けないで済むらしい。

 その代わり、蘇生アイテムは売っておらずどこかで1つだけ取れる種をかなり上位の薬草系などと一緒に調合し、それによって出来たアイテムをまたほかのアイテムと錬金してやっと1つできるらしい。

 魔法の方はまず、使い手が少ないこととMP消費がかなり高くそんなほいほいと使えないらしい。

 

 「スライム強いな。」

 

 やっと俺の口から出た言葉がこの一言だった。

 そういえばと思い、スキルの《観察眼》を使ってみる。

 周りのスライムの情報がずらりと・・・

 

 スライム

 レベル3

 

 ここまではそうゲームと変わらない。

 しかし、この下が問題だ。


 nama:スライム(レベル3)

 male:?

 Age:?

 HP~599 / MP~279

 ATT~439 / DEF~689 / MIN~129 / INT~389 / AGI~199 / RES~34 / END~209 / DEX~239 / EYE~3 / JUN~249 / CHA~209 / LUC~109 / POW~126 / MEM~19 / BRA~50

 

 これがどれくらいの強さなのかはこちらを見ていただけるとわかると思う。


 nama:佐藤太郎

 male:男

 age:27

 HP~520 / MP~152

 ATT~391 / DEF~157 / MIN~127 / INT~262 / AGI~130 / RES~216(0.93) / END~211 / DEX~145 / EYE~0.3 / JUN~68 / CHA~205 / LUC~211 / POW~238 / MEM~647 / BRA~213

 ※()内は回復量の最大値HP、MPの低い方の300分の1の値。

 

 ちなみに言うと、この男が団体の中で一番強い。

 

 このことから、この世界はかなりの難易度で作られているようだ。

 最初は9人ほどいたのに、スライム1体を倒し終わったあとはわずか2人きりになっていた。

 その2人も戻る途中にスライムに襲われ光の粒子になり消えていった。


 「やばいですね。」


 隣の瑠美がポツリと漏らした言葉。

 もちろん、やばいのはスライムのことではない。

 俺たちだ。

 

 今俺たちの周りにはスライムがいた。

 その数なんと15匹!

 

 「なんでこうなった・・・。」

 「そんなの、普通に移動してたらいつの間にかまわりがスライムだらけになってたに決まってるじゃないですか!寝てたんですか!?」


 焦ってるせいか、少しあたりがきつい瑠美。

 とりあえず、出し惜しみなしだ。


 「行け!君に決めた。」


 かっこよくポーズを決めながらくーちゃんを召喚。


 「はあ、やっと出れました。ってなんで周り一面がスライム!?」


 くーちゃんはいきなり飛び上がり後ずさってきた。

 しかし、さがれるのはほんの少しだ。

 なぜって、すぐ後ろに俺がいるからだ。

 

 後ずさってたくーちゃんが俺の足にぶつかる。

 くーちゃんは恐る恐る後ろを向いて俺だと気づくと安堵のため息を吐いた。

 俺はそんなくーちゃんに笑みを浮かべる。

 それで、安心したのかくーちゃんは泣き出した。


 「そんなに嬉しいか?」

 「そんなわけないですよ~!」


 俺には、命令権がある。

 何をしたって?

 もちろんスライムに向かうよう命じただけだ。


 くーちゃんは泣きながら勝手に体が動きスライムに向かっていった。

 さあ、戦闘開始だ。

 一人?(神の数え方が不明)対三匹の戦いである。

 くーちゃんは攻撃を繰り出してスライムに攻撃する。

 だが、そこはやはり53(ゴミ)ステータス。

 あっさり、スライムに躱される。

 そのあとなんとか殴ったがすぐに囲まれリンチされてた。

 すぐに光の粒子となって消える。

 その直後、すぐに再召喚。

 クールタイムは0だ。

 

 その後、何回も消えては召喚されだんだんくーちゃんの目から光が消えてきた頃やっとスライムを駆逐した。

 倒した数は瑠璃13、くーちゃん2、俺0だ。

 俺はなにしてたって?

 そんなのくーちゃんを精一杯召喚してた。

 なんてったって終盤はスライムも本気を出してきたのか5秒くらいでくーちゃんが死ぬのだ。


 「ははははは。」


 なんか、虚空を見つめて笑ってるくーちゃんが不気味なので俺の空間に戻すことにした。

 死ぬ時とは違い、一瞬で消えるくーちゃん。

 ちなみにスライムを倒してもらえる経験値は1でお金は3銅貨だった。

 今ヘルプで調べたところ、お金の単位は

 最高が白金貨。

 1白金貨=10金貨=100大銀貨=1000銀貨=10000大銅貨=100000銅貨

 となる。

 今、これまたヘルプで調べたところ元の世界の1円=1銅貨らしい。

 

 やっとのことで街に着いた俺たちはまず何よりも宿を求めた。

 入ってすぐのところに宿があり、すぐに部屋を借りてベットに飛び込む。

 

 「瑠美、モンスター討伐は明日から頑張ろう。」

 

 俺はそれだけ言うとすぐに眠りに着いた。

 瑠美がなんか言っていたが無視した。

 俺はこんな難易度が高いゲームを楽しむつもりはないので明日からはどうしようかと考えていたがすぐにそんな思考も消え失せ眠りについていった。


 起きて窓開け外を見るとまだ空が白かった。

 すぐに服を着替えようとして着替えがないことに気づく。

 

 「今日どっかに買いに行くか。」


 お金は俺の所有物としてこちらの世界に持ってきてもらったのでたくさんある。

 嬉しいことに元の世界のお金じゃなく、こちらのお金に変わっている。

 この時、元の世界で稼いでいて良かったと心から思った。

 

 「ん、んー。あ、おはようございます。」

 

 なぜか俺の横で寝ていた瑠美が起きてきた。

 眠そうにしていることなんてありえない。

 そんなことをしていると寝首をかかれるからだ。

 まず起きた瑠美と話し合い生活用品を買いに行くことにした。

 

 起きて少ししたあとに、神とやらにメールを送っていたのだが返信には生活用品お全般はかさばるからと気を遣って持ってこなかったようだ。

 まあ、余計な気遣いなのだが。

 

 そのため、生活用品などは買いに行かなければならない。

 あとは、資金に余裕があるので家も買おうかと思っている。

 宿では、魔法の練習や実験などができないからだ。

 朝食を急いで食べ、まだ食おうとしてる瑠美を猫のように首元を掴んで持ち上げ連行する。


 街中はかなり賑やかでステータスを《観察眼》で見ると意外と異世界人(俺と同じ死んでこの世界に来た人達)が多い。

 中でも、武器屋、防具屋、道具屋などがそいつらが集まってる。

 

 ほかにも、NPCに聞くと街にはギルドがあるらしい。

 種類は冒険者ギルド、商人ギルド、錬金術師ギルド、教会ギルドなど様々だ。

 これは、俺らのようなプレイヤーがつくるものではなく、元からこの世界にあったものだ。

 

 異世界人に聞いてみると、大体の人が冒険者ギルドに登録しているようだ。

 あとは、複数のギルドに属しても可。

 ほかにも色々と聞き予定通り買い物に戻る。

 

 まずは着替えを求めて服屋に来た。

 使われているものはモンスターのドロップアイテムらしい。

 そのはずなのに、絹に似たものやポリエステルに似たものなどもあった。

 ひとまず、ジャージみたいなやつ上下三着とパーカーになぜか目を引いて買ってしまったマントが今回の買ったものだ。

 瑠璃は時間をかけて5着くらい買っていた。

 お金はもちろん俺の懐から出ている。

 まず瑠璃一文無し・・・ではないが持っているのは昨日スライムを倒して得た13銅貨だけだ。

 これじゃ、一着すら買えない。

 モンスターが強い代わりに街の定価はかなり安く設定されているが。


 この他にも、冒険者ギルドに行きギルド登録をした、ちょっと興味があったため錬金術師ギルドに行きそこにも登録した。

 どちらも登録に1銀貨必要だったが問題じゃない。


 登録を済ませたあとは早めの昼食をとり、今は家を買うために不動産屋に来ている。

 理想とするのは広い敷地があり、それなりに大きい家だ。


 その条件で見つかった3軒のうち入ってきた門の近くに有るのを買った。

 すぐに契約書を持ってきたのでお金を支払い、署名もした。

 鍵を持ってきて案内された。

 

 家の前について驚いた。

 確かに、敷地が広くて大きい家を所望したが・・・。


 「これは、家というよりも城ですね。それに敷地には噴水とかもありますし。」

 

 瑠美の言葉が的確にこの場所を表していた。

 これは家じゃなくて城だ。

 

 「あのー、これ城ですよね?」

 「・・・家です。」


 ちょっとその間はなに!?

 

 「だいぶ前にここにこの国の王族の親族の方が引っ越そうと思って立てたのですが、ここの周りの魔物は以上に強いので諦めたらしいです。しかしそれを知ったのは作り終えたあとで結局誰も済まない廃城ができました。」


 不動産の人がとつとつと話してくれた。

 まあ、もうお金も払っちゃったし、契約に署名もしてしまった。

 それに、特訓や実験に必要なスペースはあるので潔く不動産の人から鍵を受け取り瑠美と二人で住むこととなった。

 あと、鍵を渡す時の不動産の人の顔はかなりご機嫌だった。

 俺も、場所としても広さも悪くないし、値段もそこまで高くなかったのもあり機嫌よく城の中に入った。


 「あー、予想はしてた・・・。」

 

 まあ、何年間も放置されてたら当たり前のことなのだが、中はかなり汚かった。


 「これは掃除からですね。」

 

 隣で瑠美もげっそりしている。

 この広い城の中全部を掃除するのでそんな顔になるのも仕方ないのだが。


 「まあ、ここは腕の見せどころかな。」


 隼人はあっちの世界で世界最巧であり、最高の完璧執事と言われた能力を十全に発揮し、あっという間にきれいにした。

 3日かかったが。


 「広い、掃除しただけでここまでなるとはこの城なかなかやる。」

 

 俺をうならせるほどのものだった。

 瑠美は・・・・・・・


 現在睡眠中だ。


 「だが、つわれているわけではない!」


 誰に言ってるのかわからないがそう叫ぶ隼人。

 実を言うと瑠美と話し合って、瑠美にはこのあと、俺とパーティーを組みながら外で一人で魔物を倒してもらう代わりに掃除やらなんやらを全部引き受けたのだ。

 だが!だがだ。

 決して勘違いはしないで欲しい。

 

 俺はヒモではない。

 食料などはいまだ俺のお金から出てるし、ほかの生活用品も俺の金から出ている。

 

 「・・・昼飯作るか。」


 誰に言い訳してるのかと自問し、なんか虚しくなってきたので次の仕事に移る。

 俺は、掃除用具を片付け調理場に向かった。

 

 しかし、こんな世界だ。

 楽に生きられない。

 自分が戦ってる未来がありありと浮かんでくる隼人だった。

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