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一話

異世界ものの二作目です。

一作目の「異世界の剣士」(http://ncode.syosetu.com/n9333cj/)

も読んで頂ければ幸いです。

 よくアニメの主人公で自分の力を隠している奴がいる。

 そいつらのことをクラスメイトが批判しているのを聞いた。

 

 曰く

 「なんで、隠してんの?それでほかの仲間に何かあったらどうすんだろうね(笑)」

 曰く

 「いつもは力隠してる自分かっこいいとか思ってるんだよ。」

 曰く

 「力を出さないのは面倒とかいって格好つけてる奴もいるしね。」

 曰く

 「力出さない理由があってそのせいで力出せないんです俺ってな(笑)。その悲壮感に酔ってるんだよ。」

 

 俺はこれを聞いて納得できなかった。

 そして、殴りたくなるほどの怒りが心を染めた。

 だが、実際にはしない。

 それは、面倒だからとかではない。

 じゃあ理由はというと、ただ単に殴ってもあいつらはわからないからだ。

 まあ、怒られたくないというのもあるけど。


 なんで、ここまで俺がいうかというと・・・・・・・・・


 まず、考えて欲しい。

 例えば、大勢の人間の中に怪人が居たとする。

 あなたならどうする?

 その怪人は身体能力も頭脳も何もかもが人間よりすごい。

 諦める?

 たしかに、最終的にはそうなるかもしれない。

 でもその前にあなたはこうするだろう。

 「その怪人から離れる」

 ほかにも

 「攻撃する」、「逃げる」、「罵倒する」などなど

 まあ、多くのことがある。

 

 ここでひとつ前の話題に戻ってみよう。

 ある主人公Aがある世界αで他の誰よりも強かったとする。

 そうした場合、主人公Aが自分の力をいつも一二分に発揮してしまうとしよう。

 すると、その世界αでの主人公は他の者から簡単に言うと迫害されるだろう。

 自分はそんなことしない?

 いいや、現実はそうではないだろう。

 あなたがそう思っていても本能的にしてしまうはずだ。

 まあ、それにそのときはしなくても一緒に居ればそのうちしてしまうだろう。

 だって、そんなもんなんだから。

 

 木の椅子に寄りかかっていた黒髪の少年武藤隼人(むとうはやと)は空を見上げた。

 そこには、一年前に来たこの異世界―パラレルワールドの未だ見慣れない空があった。

 

 「ご主人様、お茶持ってきました。」


 そう言ってきたのは、簡単に言えば美少女。

 詳しく言えば可愛い女の子だ。

 名前はアイラ

 姓?

 そんなものは元奴隷である彼女にはない。

 それに、この世界で姓を持っている者は異世界人と貴族、王族くらいだ。

 あ、あと勝手につけてる奴もいた。

 

 ・・・・・・・・・わからない?

 特徴を上げると、なんといってもあの獣耳だ。

 なんの耳かって?

 多分、ネコで、ターキッシュバンと呼ばれる種類のものに酷似している。

 え?わからない?

 ググると出る。

 

 他にも顔がちょっと幼さもあるが可愛い。

 ここで一つ注意だ。

 たしかにアイラは可愛い。

 それに、年の割には少し小さい・・・そこそこかな?

 まあ、一四歳で140センチくらい。

 ・・・・・・ありえなくはない。

 だが、だがだ。

 ロリコンではない!!!!!

 そこだけは要注意してほしい。

 思わず頬をスリスリしたり、笑顔に和んでみたり、餌付けしたりする。

 だが!

 再度言おう。

 ロリコンではない!!!!

 ここだけはわかってほしい。

 

 などと、脳内で誰かに訴えていた隼人はアイラの持ってきたお茶で喉を潤し、少し過去を思い返した。


 隼人は住んでいる場所が少し他と違ったようだ。

 隼人の一家が住んでいる家があるのは周りからは「廃棄所」と呼ばれているところだった。

 はっきり言って、貧乏だった隼人一家は通常の場所では暮らせなかったのだ。

 

 なぜここが廃棄所と呼ばれているかというとここにはなぜか犯罪者や、借金取りから逃げる者などのような者があつまるからだ。

 

 そこで、もとめられるのは躊躇なく人を殺す事。

 そうしなければ、強盗や強姦、殺人なんてここではざらにあるので、すぐ死ぬ。

 他にも、殺すためには毒薬や眠り薬などの薬の知識ともし服用しても大丈夫なような耐性、防衛の為の強さ、人を見る観察眼、人を簡単に倒すまたは殺す為の人体の知識など多々ある。

 

 もちろん隼人も全部所得している。

 そして、そんな何もない環境で育ったせいか人の繋がり、知識の宝庫である学校というものに憧れた。

 そんな時運良く一つの学校がある企画を行った。

 「低収入家庭保護」

 この企画は低収入の家庭の子供を無償で学校に通わせるというものだった。

 街でこれを見たときすぐさま家に帰って親に言ったのだ。

 そして、何回も説得するうちに親の了承を経て通うこととなった。

 

 小学校に入学した隼人はすぐさま学校で人気になった。

 知識を覚えるのが得意なのでいつもテストでは満点。

 運動も、他の子なんて足元にも及ばない。

 人を見る観察眼があるので、気遣いなどもお手の物だ。

 廃棄所での経験が大いに役立った。

 

 巡り巡って小学校卒業後、ある中学校に授業料やその他もろもろの全額免除という高待遇で迎えられた。

 初めは良かった。

 入学テストの結果は全て満点。

 その他の授業でも他の者よりも頭一つ、いやそれ以上話している。

 そう怖いくらいに出来すぎるのだ。

 

 そして極めつけは学校まで追いかけてきた廃棄所の人間だった。

 そいつはどこからか買った銃を所持していた。

 しかし、そんなのあそこでは日常茶飯事。

 そいつを一瞬で片付けた。

 

 だが、それが悪かった。

 銃を持った相手を一瞬で倒す完璧すぎる人間。

 その後人がだんだん離れていき、こちらを見てヒソヒソというのだ。

 

 「ばけもの」、「怪物」、「人間じゃない」・・・・・・

 

 だんだん隼人も人から離れていった。

 それでも小学生の頃からの日課である図書室での読書は欠かさなかった。

 この世は知識が大切だからだ。

 卒業する頃には図書室の本は読み終わり、図書館に通うようになっていた。

 この頃、すでに両親が病気で他界していたのも理由の一旦だ。

 帰っても誰もいない。

 孤独という悲しさを知った。

 

 この時隼人は思った。

 今現在なぜ孤独なのか?

 理由は簡単である。

 

 「自分が何もかも出来すぎる、ばけものであり、怪物であり、人間じゃないと思われているからだ。」

 

 それなら、それを隠せばいい。

 それをモットーに隼人の高校生活が始まった。

 

 高校では小学校の頃一番仲の良かった親友とも会えた。

 運動でも他の人に合わせる。

 テストでも、わざと間違え他に合わせる。

 そして、他との距離を縮める。

 高校では人気とまではいかないまでもそれなりに友達ができた。

 

 「やっぱり間違ってなかった。」

 

 この時、そう思った。

 もう孤独になることはない。

 

 幾月流れ、ある日親友である春風悠夏から言われた。

 

 「ねえ、なんで真面目にやらないの?」

 

 これには隼人もびっくりした。

 まさか、気づかれるとは思ってもみなかった。

 さすが親友である。

 

 隼人は中学でのことを悠夏に話した。

 悠夏は真剣にそれを聞いてくれた。

 そして、言った。

 

 「そのせいでか・・・。ごめんね、気づいてあげられなくて。」


 隼人は首を横に振って言った。


 「いや、そう言ってくれるだけでも嬉しいよ。やっぱり親友なだけはある。」

 

 しかし、その言葉で悠夏はなぜかため息をついた。

 

 「どうしたの?」

 「なんでもない。」

 

 返って来たのは素っ気ない返事だった。

 それでも、こうして話せるだけで隼人は満足だった。

 もう、孤独ではないのだから。

 

 その後、日課の図書館により本を読みあさり家に帰る。

 家といっても、もう昔の廃棄所の家ではなく。

 ちゃんとした一軒家だ。

 バイトで貯めたお金で買った。

 

 次の日、悠夏に悠夏の友達といっしょに街に行くのに誘われた。

 みんな男女ペアで来るのでいっしょに来て欲しいとのことだ。

 これに隼人は即了承した。

 

 よく遊びに行った悠夏の家の前で待っていると、なぜか着飾った悠夏が玄関から出てきた。

 

 「「なんでそんな格好!」」

 

 見事に一致した。

 まあ、隼人の言葉の後には?も続くが。

 

 「隼人それはないよ。」

 

 そう言われた、隼人の格好は学校の制服である。

 というよりも、これ以外は部屋着しかないのだ。

 それを悠夏に伝えると、急いで街に連れてかれた。

 まだ時間はあるのに・・・


 街につき悠夏にお金の心配をされた。

 しかし、その心配はない。

 バイトでかなり財布が豊かだ。

 親たちが稼いでたよりも稼いでいるくらいだ。

 

 そのまま、服屋に連れてかれ色々と悩んだ結果持たされた服を買い、すぐに着ることになった。

 集合場所につくと時間五分前だった。

 そこにいたのは男子三人に女子五人だ。

 

 「みんなごめんね。遅くなった。」

 「いやいや、ぜんぜん大丈夫だよー。」

 

 まだ五分前なのに悠夏が謝る。

 なぜ?

 しかし、それを聞いた他の奴らも疑問は持っていない。

 なので、ここは合わせておく。

 あと、全然のあとに大丈夫はおかしい。

 しかし、そこはスルーした良さそうな雰囲気だ。


 「こんにちは。遅れてすいません。」

 

 すると、こちらを見てほかの人が固まった。

 隼人はなぜ返事がないのか首をかしげる。

 それで何を思ったのか、女子の何人かがいきなり動いて悠夏を引っ張っていって何か喋っている。

 聞こうと思えば聞けるのだが、こういう時は碌なことは話してないので悠夏に大丈夫かと目で聞く。

 真っ赤な顔で背けられた。

 

 悠夏たちはまだ喋っており、もう一分前だ。

 悠夏の顔がいろいろ変化しているので見ている隼人は意外と飽きない。

 そして、やっと終わったのか戻ってくる。


 「話し終わった?」

 「・・・うん。」

 

 なぜか間があった。

 考えても無駄だろう。

 見たところこれは隼人のことを「彼氏でしょ?」とか言われて、急に意識してしまったやつだ。

 こういうことは何回もある。

 その度に「親友だ!」と言い返している。

 

 待ち合わせの時刻になったが、男子一人足りない。

 ペアの女子が電話をかけているのだが・・・ 

 

 「はあ?寝坊!?早く来なさい!」

 

 そう言って、女子は押し込むように電話を切る。

 そして、何事もなかったようにほかの女子と話し始めた。

 その二十分後やっと最後の男子が到着して移動を始めた。

 遅れてきた男子は何回も謝っていたが、ほかの男子が見る目は冷たい。

 隼人は孤独にならないようフォローを入れるのを頑張った。

 まずは、自分が話しかける。

 

 「こんにちは。俺は武藤隼人って言います。」

 「あ、こんにちは。暦祐輝(こよみひろき)です。」


 なんでも、暦くんは難関で有名な高校の生徒であり、今日も昨日遅くまでテスト勉強をしていて朝起きれなかったそうだ。

 ペアである女子の鳳城院麗音(ほうじょういんれいね)に言われて、テスト前だが来いと言われたようだ。

 

 暦くんは結構物知りで隼人が知らない意外なことを知っていた。

 テスト前ということで、勉強の話にほとんどなっていったが話していると暦くんがキラキラした目で見てきた。

 暦くんはいわゆるショタと呼ばれる人間だ。

 背が隼人より低いので見上げられる。

 

 これが、意外と可愛い。

 男なのだが。


 その後も話し続け、最初の目的地に着く頃には「尊敬する」とまで言われてしまった。

 しかも、当初の目的は忘れている。

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