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断頭台の上の彼女

The celebration

 今日は記念すべき日だ。


 空は快晴。透き通るような青空が、どこまでもどこまでも広がっている。


 正に。今日という日に相応しい見事な晴天。あぁ、吹き抜ける風が肌に心地良い。


 だというのに。それだというのに。


 《彼女》の顔は曇っている。


 それはそうだ。当然だ。



 何故なら今日、これから…… 処刑が執り行われようとしているのだから。


 

 断頭台の上の彼女。


 僕は彼女を見守る。見上げる。見つめる。


 そうする事しか、もはや、今の僕には出来ないのだから。それだけが、僕に残された義務なのだから。


 これまでの彼女との日々が、僕の頭を駆け巡っている。


 断頭台の上の彼女。


 近年。隣国ではギロチンなる、二本の柱の間に吊るした刃を高速で落とし、柱の間に寝かせた人物の首を、痛みを感じさせる間も無く切断する執行装置が使用されるようになったらしい。首をスパリと切断された人間は、数秒間はまだ意識があるなんて逸話も耳にした記憶がある。


 その話のどこまでが真実なのか? それは、今回の事件の真実と同じくらい眉唾な精度の話。本当の悪はどこにあったのか?


 一つだけ確かな事実があるとするならば。


 それは、我が国の処刑において、未だギロチンは導入されていないという事。


 だからこそ。

 断頭台には首と頭がすっぽり納まるくぼみがあり。そこに寝かされ、動かぬよう固定され、処刑人の剣、或いは斧により頭部を切断されるのだ。


 革命裁判により下された斬首刑。そのオーダーは、もはや誰の手にも止める事は出来ない。


 群集。野次馬。雑音。


 張り詰めていた空気が、変わったのを理解する。さぁ… 時間だ。


 彼女の表情が、より一層険しいものへと変わる。そんな彼女に対し、何もしてあげられない自分がもどかしい。


 僕は、もはや彼女を見上げることすら叶わない。


 大きく振り上げられた刃が、日の光に照らされ一瞬だけ煌く。



 あぁ、今日は記念すべき日だ。


 美しい。


 美しい。


 きっと、今の彼女の姿は美しい。


 僕の彼女は、美しい。


 刃を振り上げる、そんな僕の彼女は美しい!!!


 あぁ、今日は記念すべき日だ! そうだ、何故なら今日は、彼女の、僕の愛する彼女の、《処刑人デビューの日》なのだから!!!


 美しい。美しい。断頭台の上の僕の彼女は美しい。


 死刑を宣告する為政者は変われど、処刑人は変わらず。


 そうだ! そうだ! そうだ!


 狙いを定め、力を込め、刃を振り下ろし。周囲に血潮の華を、血飛沫を、死の匂いを、血の生臭さを、腐った現実を、あの糞ったれの民衆どもに、為政者どもに巻き散らしてやればいい!!!! 


 さぁ、さぁ、さぁ、早く、早く、早く。


 ハリーハリーハリー!!!


 刃を振り上げる、僕の彼女の晴れ姿は… きっと、天使のように美しい。





 ザ シ ュ っ ★






 ………… 僕の彼女は美しい、僕の彼女は美しい、僕の彼女は美しい、僕の彼女は美しい、僕の彼女は美しい、僕のかの



 



DEAD END


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