鏡開き
高校2年の井野嶽幌は、悩んでいた。
その悩み姿を背中からみていた双子の姉の桜は、そんな幌の手元を見に、肩越しに覗き込んだ。
「あら珍しい。餅を前にして幌が悩んでるわ」
「姉ちゃん?」
肩に顎を直接乗せている桜に、幌が適当な口調で話しかける。
「どうしたの」
「いや、この餅を、どうやって食べようかなって思ってさ」
鏡餅だったそれは、円形の形状から、8等分されたピザのような形へ、そして、それからどうしようかと考えている間に、桜がやってきたようだ。
「焼き餅、お雑煮、安倍川餅。いろいろあるからどれを作ろうか悩んでててね」
「私は焼き餅が食べたいなぁ」
桜が幌に耳打ちすると、幌は決めたようで、肩にのっている桜を追い払ってから網を用意し始めた。