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sunny place!  作者: 桃川千鶴
2/5

1!

一応6月頭の設定です(≧∀≦)

「ちょっ、離してーな!」

母さんと父さんが何も言わへんから、不審者やないと思う。でも知らんヤツに抱きつかれんのは嫌や。

全力で引き剥がして改めてよく見る。

身長はウチよりちっちゃい160cmぐらい。自慢やないけどウチ165cmあんねんで。肌は健康的な小麦色。さっきのカンジから、腕には若干筋肉が付いてて、細すぎず太すぎずの丁度ええバランスのん。顔は整っている方やけど多分『カワイイ』っていう形容詞が似合うな。鼻はちょっとだけ丸くて、目はクリクリで二重。右目下には泣き黒子ぼくろがある。

なんかこの黒子に見覚えある・・・?

この間約7秒。その間、ヤツ・・はニコニコとウチを見ている。けどヤツの口が動いてからの次の一言は予想以上の斜め上発言やった。

「おかえり~、姉ちゃん・・・・


・・・・・。


はい?

いやいやいや、新手のジョークか?

生まれてこの方十五年と八ヶ月、ウチに弟とかおらんかったで。てか一人っ子やねんけど。

ウチの頭はオーバーヒートのパンク寸前になって、思考回路はショート5秒前。せっかく思い出せそうやった名前も焼け焦げてもうた。ホンマどうしてくれんねん。

さすがに見かねた母さんが救いの口を差し込んだ。

「ゆき、隣の家に住んでた貴斗くんよ」

「ほぇ?たか、と・・・?」

あかん、変な声出たやん。

確かにこの泣き黒子は、かつての隣人・貴斗のもんと一致しとる。あとは「言われてみれば・・・」のオンパレード。目も口も鼻も耳も見覚えあるわ。てか、弟ちゃうし。正しくは『弟分』やろ。

「うっそぉ」これは自然に出た言葉やわ。別に疑ってるとかやなくて、その、何ていうか、

「もう会われへんって思ってた?」うん、そうかも。だって連絡先とか知らんかったし、ウチらも引越したし。「俺も。でも母ちゃんが実は連絡取ってたとか言うし」あっ、一人称『俺』になってる。昔は『僕』やったのに。

「ちょっとお母さん、理恵子さんと連絡してたん?なんで教えてくれへんかったんよ」「あれ、言ってなかったっけ?知ってると思ってた」知ってたら毎日のように電話とかメールとかしてるわっ!

ウチの母さんと理恵子さんこと貴斗のお母さんは高校時代の同級生で、ウチらが生まれてからも親友って言えるくらい仲が良かってん。だからウチと貴斗が仲良くなるのも必然で、保育園に通う頃にはずっとくっついとった。それこそ初対面の人には「兄弟ですか?」って聞かれるくらいにお互いゾッコンしとったと思う。

「で、なんでここにおるん?」本日最大の疑問を聞いてみる。

「それがさ、母ちゃんが海外転勤になって。一緒に行くか聞かれてんけどやっぱ日本がいいなって思ったから」実の母より日本がええんか。でも顔見たらそんな事無さそうやなって思う。結構悩んだんやろう。

「ほんで、ここに住むことなったから」

「・・・マジで?」

「おう」

「ホンマに?」

「だからそう言ってるやん」

次の瞬間、ウチは貴斗に抱きついてた。

「ちょっ、ねーちゃん」今度は貴斗がウチを引き剥がそうと必死にもがく。けどそんなんお構いなしで腕に力を込める。

「うれしい」

「へっ?」

ボソッと呟いたら、不意打ち喰らったみたいに腑抜けた声が返ってきた。

「もう会われへんって思ってたのに会えて、しかも一緒に住むやなんて。うれしいに決まってるやろ」

「う、ん」

しばらく離れたくない。ずっとこうしてたい。

昔っから手を放すとすぐにおらんくなった。今やって腕に力いれとかな、どっか行ってまいそう。




「えーとっ」

「コホン」

父さんと母さんが咳払いして注意を向けさせる―――ウチと貴斗の。ウチらは結構長い間引っ付いてたみたい。

「先にご飯食べない?そしたら後で二人でゆっくりすればいいし」賛成。だってまた邪魔されそう。せやかて五年ぶりやねんで、懐かしいに決まってるやん。

夕ご飯は蕎麦やった。あぁ引越し蕎麦か、って思ってたら父さんが手に持ってきたのは―――カレー。しかも大盛り。

「えっ、蕎麦とカレー!?ありえへんしっ」「いや貴斗君が好きだって言ってたから」「いやいや明日のご飯でええやん」「あー明日の分もあるよ。僕は同窓会で明日いないから」あかん、父さんと話が噛み合ってない・・・。「私も遅いかも」はい、そーですか。二人とも好きにしてください。

「明日って土曜なのに文ちゃんは仕事あるんですか?」食事が始まると貴斗が母さんに質問した。文ちゃん(ウチの母さん)は溜め息をつきながら答えてる。「そうなの、もうすぐ社内で製品発表があるからそれの準備」へーって返事してるけど絶対自分興味無いやろ。ツッコミつつ貴斗の手元を見ると蕎麦がもう空っぽで、カレーも後半分になってる。カレー蕎麦やと思えば不味かない?

呆然としてるウチの視線に気づいたんか「姉ちゃんもカレー食べる?」いや、違うから!貴斗の喰いっぷりにびっくりしてるだけやから!

頭を横にフリフリして、その意志が無いことを精一杯表す。「てかいつもそんな食べるん?」「うーん…たまに?週一ぐらい」週一でたまになんかっ!でも育ち盛りやしなぁ。

「なぁ、姉ちゃん」「何や?」「姉ちゃんの部屋見たい」「・・・。部屋汚いからまた今度な」「汚くてもええよ」ウチが嫌やねんけど。見られて困るもんは無いけどあれはちょっと恥ずかしいわ。絶対入れへんビームを送ったら、あっちが折れた。「日曜に片付けてな」了解。それならええよ。頑張って片付けるからな!!

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