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9/11

MMORPG。

 私はパソコンを持っていなかった。いや、持ってはいたが、インターネットに繋いでいない状態だった。契約すれば良いのだが、ある日携帯電話を通じてパソコンからインターネットにアクセスする方法を発見した。

 二時間で十万円弱がかかった。わあ……。

 父親から叱られ、授業料として払うからこれで学べと言われた。そんな高校一年生の冬。


 その時はネットサーフィンをしただけだったが、もしネットゲームに手を出していたらと思うと恐ろしい。

 いつだかMMORPGをやっていた時期がある。やり込んだりする時間もなかったし、交流が苦手なので基本的に一人でプレイしていた。だが、MMORPGとは、Massively Multiplayer Online Role-Playing Gameの略で「大規模多人数同時参加型オンラインRPG」を指す。

 多人数で、するものなのだ。淡々と一人でレベル上げをするのが楽しいわけもなく、もちろん効率も悪い。いくつかやるのだが、すぐに飽きた。好みのキャラメイクではソロに向かないというのもあった。中堅クラスの入口までが、当時の私の限界でもあった。子供であったことから、パソコンを使える時間が限られていたのだ。それ以上はめぼしい進展がなかなかうかがえず、根気が続かずにやめてしまうのだった。


 小説におけるMMORPGは根気がいらない。読むだけでレベルは勝手に上がり、努力や我慢なしに話が進む。さらにVR(Virtual Realityの略、仮装現実)と来れば、暗い部屋で液晶画面に向かって背中を丸めるイメージはなくなり、強くなる爽快感だけを楽しめる。つまらない作業はいらない。たった一行で、一言で、時間のかかる作業は消え去るのだ。「主人公はそれからたくさん狩りをして、レベルが10上がった」と。これは、なんて楽だろう。

 ゲーム特有の、時間をかけ努力しないと得られないあの達成感、自分が強くなっていくあの充足感。それは、RPGによくある「レベル」という指標のもとで強化される。「スキル」を突然覚えるという設定がそれに並び、「ギルド」に入り「パーティ」を組めば仲間が簡単に手に入る。世界は既に「プレイヤー」を受け入れる体制を整え、雑魚でも安心のイージーモード。現実の厳しさはなりをひそめ、MMO、「『大規模多人数』同時参加型オンライン」は、『たった一人の個人』のために動き出す。


 これは作者の楽であり読者の楽だ。なんと、羨ましい。

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