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ぼくのエリノア  作者: 河喜多東舎


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1/1

アサガオの種

GWが終わったばかりだというのに空には夏みたいな雲が湧いていた。

ナユタは二段飛ばしで団地の階段をのぼり、玄関の鍵をあけてランドセルを床にほうりだした。

「あいてててっ」

台所にむかう廊下で何かが足の裏に刺さった。

片足立ちになって足の裏をさすると黒い粒がポロリと落ちた。

「なんだこれ?」

指でつまんで見ると、黒というよりは茶色で、缶詰のみかんみたいなかたちをしている。

アサガオの種だ。

「なんだってこんなところに?」

ナユタは学習机の引き出しに種をほうりこむと、台所で麦茶をたてつづけに2杯飲んだ。

それから居間の畳の上に置きっぱなしのゲームを引っ掴むと、団地の敷地内にある公園に走った。


公園に着くと洋平と琉人がすでにすべり台の上を陣取ってゲームをしていた。

「ウス」

「オス」

「ヨッス」

ナユタも座ってゲームをはじめる。

このメンバーで集まるようになったのは4年生になってからだ。

同じクラスでたまたま席が近く喋るようになり、放課後、団地の公園で遊ぶようになった。

5年生になると洋平と琉人は中学受験に向けて塾に通いはじめ、6年生になった今では3人で集まることはめったにない。

今日は久しぶりに遊べると思ったら一時間もしないうちに洋平が「オレこれから塾だわ」、琉人も「おれも」と言って自転車に乗って帰って行った。

ふたりの後ろ姿を見て、「おれも帰るか」とナユタはつぶやいた。

とはいえ、うちに帰ってもやることもないし、かといって団地の子どもたちのサッカーにまざるのもかったるい。

(そういえばうちにアサガオの種があったっけ)

ナユタは公園の脇の坂道をくだって100円ショップのあるスーパーにむかった。

そこで小さな植木鉢と園芸用の土と軽石を買うと「おれにもやることあるじゃん」とにんまり笑った。


アサガオを育てるのは1年生の夏休み以来、というか植物を育てたのはそれ一回きり。

けれどナユタにはうまく育てる自信があった。

1年生の夏休み、ベランダで育てたアサガオはたった一粒の種からベランダ全体を覆うほど葉と蔓を伸ばし、夏中花を咲かせていた。

お母さんは「どうせなら実がなるゴーヤーの方が良かったのに」とブツブツ言っていたけど。

あのときのことを思い出すと、ナユタは自分は『みどりのゆび』の持ち主なんじゃないかと思う。

運動も勉強もそこそこ、これといった取り柄もないけど、実は植物にかかわる異能をもってるなんて、かっこいい!

育ちすぎるとまたお母さんに文句を言われるので、今回は自分の部屋で育てることにした。

自分の部屋ならどれだけ大きく育てたっていいはずだ。家にほとんどいないお母さんが、ナユタの部屋をのぞくことはないんだから。

ナユタは窓際においてある学習机のど真ん中に植木鉢をおいた。ここなら日当たりはばっちりだ。

「早く大きくなれよ」

ナユタは台所からもってきた大きなヤカンで植木鉢にたっぷりの水をあげた。

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