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婚約破棄された元聖女、魔王の息子に攫われて溺愛されています  作者: 百合川八千花


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22「結婚の約束」

「ありがとうアルティア! 式はいつにしようか!?」

「あー言っちゃった! 言っちゃった! もう引き返せないわ!!」


 あー言っちゃった! 言っちゃった!!

 言ってしまった、私はヴェルグを愛していると、結婚すると認めてしまった!


「いや、嫌じゃないのよ! でも心の準備をしてなかったの! 今は仕事で忙しいし、私が家庭に入るなんて想像もできないし、人生が変わっちゃうのに~~」


 心の声がなんのフィルターも通さずに声として出てしまう。

 慌てふためき頭を抱える私に、ヴェルグは「もう一度」といって優しく口づけをしてくれる。


「ちょっと、人前で……」


 私ときたら、混乱しすぎて自分がやったことも忘れてヴェルグを責めてしまった。

 そんな言葉が出てなおさら自己嫌悪する。

 ヴェルグは今でこそ私を好きって言ってくれるけど、私の嫌なところをどんどん見つけて嫌いになっていってしまうのではないの?

 

「何も変わらないよ」


 でも、ヴェルグは私の疑問に答える様に穏やかに笑っていた。


「結婚しても、君は君のままだ。やりたいことをやって、生きていてほしい。僕は、そんな君の隣にいるだけで幸せなんだから」

「ヴェルグ……」


 ヴェルグのまわりにさっきまであった、黒い心の闇にかかる瘴気はもうなくなっていた。

 むしろきらきらと輝いて、銀色の瞳が本当の星のようにまぶしく見える。


「僕はアルティアが好きなんだ。アルティアが正しいと思う道を進んでね」

「あなたも、隣にいてくれなくちゃ嫌よ」

「……うん!」


 ほんの少しだけ心を開けば、ヴェルグは手を広げて受け入れてくれる。

 私はヴェルグの好意に甘えすぎかもしれない。でも、そういうところが、愛おしくてたまらない。


「仲の良いことだな」


 私とヴェルグが見つめあっていると、アシュフォード帝王が穏やかに話しかけてきた。

 はっ、ふたりの世界に入りすぎた。我に返って礼をすると、よい、と王が制する。


「今の話を聞かせてもらった。救国の聖女の結婚となれば、国を挙げて祝わねばなるまい」

「そんな……恐縮です」

「余が祝いたい。それほど、お主には救われているのだ」


 その言葉に周りから拍手が上がる。


「是非、私共にもお祝いさせてくださいませ」

「ええ! アシュペー伯爵にも、聖女様にも救われておりますもの」


 その声は、心からの言葉もあるかもしれないし、王のご機嫌取りもあるかもしれない。。

 でも、私にはどちらでも構わなかった。

 私がヴェルグと結ばれることを、形だけでも祝ってくれる人がいることが嬉しい。


(……あの子たちも、祝ってくれるかな)


 頭に浮かんだのは、辺境の地にいるカイルやマルグリッド嬢、そしてかわいい生徒たちのことだった。

 彼らにもこのことを伝えたい。祝ってほしいとまでは言わないが、身分を偽っていたことを謝罪して、本当のことを打ち明けたい。


「みんな喜んでくれると思うよ。アルティア」


 私の心を読んでいるかのように、ヴェルグはそっと声をかけてくれた。


「陛下。自分の領地の民にも祝ってほしいのです。どうか呼び寄せる許可をいただけないでしょうか」

「そうだなアシュペー伯爵。好きなものを好きなだけ呼び寄せるとよい。いったん領地に戻り、よく考えよ」

「寛大なお言葉、感謝いたします」


 何もかも私の望み通りに進めてくれるヴェルグに、私の頑なな心がほぐれていくのがわかる。


「ありがとう、ヴェルグ」


 素直な言葉でそう言うと、ヴェルグは恥ずかしそうにはにかんだ。


  ◇ ◇ ◇

 

「上手くいきました? オルフィー様」

「ああ、アルティアは気づいていない。追跡の魔法は既に刻んである」

 

 アルティアを中心とした人の輪から外れ、カミーユとオルフィーはテラスでこそこそと話をしていた。

 夜のテラスは薄暗い。細い月のわずかな明かりだけが彼らを照らしていた。

 もうすぐ、新月になる。


「……聖女に気づかれずに魔法をかけるなんて。本当にできたんですの?」


 夜と同じくらい、カミーユの声も暗かった。

 真昼の陽光に照らされると花のように輝く桃色の髪も、夜闇に溶けて薄青に染まっている。

 朗らかで頭の足りない男爵令嬢だと思っていたのに、まるで別人だ。オルフィーは無礼な態度におこることも忘れ、カミーユの言葉におびえた。


「べ、ベルモンド王家は代々聖女を伴侶としている一族だ。それは聖女を支配下に置くことも可能ということで、彼女たちの一挙手一投足はすべて観測――」

「できる。の一言でよいのです。ごちゃごちゃ言われても、私にはわかりません」

 

 カミーユは冷たく言い放つと、ぷいとそっぽを向いて去って行ってしまう。

 オルフィーだけが、ひとり夜の闇に取り残された。

 

「……これで、いいのだろうか」


 いつからこうなってしまったのだろう。

 聖女アルティアを裏切り、若く可憐な令嬢を選んだ。そこに男の幸せがあると信じていたのに。


【愛しているよ。アルティア】

【私もよ。ヴェルグ】


 ……その声は、もう彼に向けられることはない。

 聖女の様子を観測できる魔法は、闇の中のオルフィーと光の中のアルティアを鮮明に比較していた。

読んでくださりありがとうございます!

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https://www.alphapolis.co.jp/novel/43656324/989027623

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