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第98話:英雄たちの成れの果て



ドォォォォン!!


轟音と共に、アスファルトが捲れ上がる。

Sランク能力者の死体兵器マリオネット

その力は、生前の全盛期、あるいは「泥」による強化でそれ以上だった。


「チッ、速え! さすがは元Sランクってか!」


レンが舌打ちしながら、不可視の音波の刃を放つ。

だが、相手の巨漢――全身が装甲化したサイボーグは、それを素手で弾き飛ばし、猛然と突っ込んできた。


「ゲンゾウ! アリスと白石を守れ!」

レンが叫びながら前に出る。


「言われなくても!」


ゲンゾウさんは重機関銃を構え、アリスたちの前に立ちはだかる。


「数が多すぎる……! このままじゃジリ貧だぞ!」


マリオネットたちは痛みを感じず、ダメージを受けても即座に泥が湧き出して修復してしまう。

ゾンビのような再生能力に加え、Sランク級の異能の嵐。

通常の部隊なら、ものの数秒で全滅していただろう。


『素晴らしい、実に素晴らしいよ!』


東京タワーの上部から、スピーカーを通した教授の声が響く。


『彼らは私の最高傑作だ。死してなお戦い続ける、忠実なる兵隊! 君たちごときに突破できるかな!?』


俺の中で、静かな怒りが沸点を超えた。

死者を冒涜し、無理やり戦わせる。

それが「進化」だと言うなら、そんなモンは俺が否定する。


「……全員、下がってろ」


俺は前に出た。

敵の集団が一斉に俺にターゲットを変える。

殺気、銃弾、衝撃波、斬撃。

ありとあらゆる致死の暴力が、俺一点に集中する。


「カケルくん!」

白石が悲鳴のような声を上げるが、俺は足を止めない。


(再生? 不死身? 関係ねえよ)


俺は右手を掲げた。

展開するのは「破壊」じゃない。

泥と融合した今の俺にしかできない、慈悲の「解呪」だ。


「土に還れ。……もう、動かなくていい」


虚無・浄化ヴォイド・クリア


カッ!


俺の手から放たれたのは、攻撃的な黒い霧ではなく、透明な波紋だった。

波紋がマリオネットたちを通り抜ける。


その瞬間。

彼らの体を無理やり動かしていた「黒い泥」と「機械部品」だけが、砂のようにサラサラと崩れ落ちた。

再生機能の暴走も、強制的な命令信号も、全てが「無」に帰す。


「……あ……」


巨漢が、女型が、そしてその他の異形たちが。

糸の切れた人形のように崩れ落ちていく。

その顔からは殺気が消え、ただの動かない亡骸へと戻った。


「一瞬で……泥だけを消したのか?」

ゲンゾウさんが驚愕の声を漏らす。「再生を封じるどころか、存在そのものを『無効化』しちまった……」


あたりに静寂が戻る。

立ち塞がる者は、もういない。


「御託はいいぞ、教授」


俺は東京タワーを見上げた。

赤い鉄骨が、夕暮れの空に突き刺さっている。

あの一番上に、元凶がいる。


「待ってろ。……今、終わらせに行く」


俺たちは動かなくなった亡骸たちの間を抜け、タワーの真下へと辿り着いた。

いよいよ、ラストステージだ。


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