表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/100

第95話:崩壊の序曲



『警告。施設自爆シーケンス、起動。……崩壊まで、あと300秒』


けたたましいサイレンと赤い回転灯が、ドーム内を染め上げる。

やはりか。

教授の野郎、自分が手に入れられないなら、俺ごと埋める気だ。


「はははは! おめでとう、カケル君! 泥との融合、見事だったよ!」


スピーカーから、ノイズ混じりの教授の声が響く。

彼はもう、安全圏へ逃げた後だろう。


「だが、その力は強大すぎる。……地上へ持ち出せば、世界は再び混沌に沈む。だから私が、ここで君というバグを処理してやることにしたよ!」


ズズズンッ……!


地響きと共に、天井の岩盤が爆破された。

巨大な瓦礫が雨のように降り注ぎ、逃げ道を塞いでいく。

地下水脈も決壊したのか、濁流が壁を突き破って流れ込んできた。


「やべぇぞ! ここは地下最深部だ! 生き埋めになったら、いくら俺たちでも……!」

レンが焦りを露わにする。

「カケル! 出口をこじ開けるぞ! 手を貸せ!」


「……いや」


俺は静かに首を振った。

以前の俺なら、そうしていただろう。

だが、今の俺には「視え」ていた。

この施設の構造も、教授が逃げたルートも、そして……この崩壊さえも、ただの物理現象に過ぎないことが。


「慌てるな。……道なら、ある」


俺は一歩、前に出た。

右腕を振るうまでもない。

ただ、視線を向けただけだ。


「邪魔だ」


虚無・界ヴォイド・フィールド


ヒュンッ。


音が消えた。

俺たちの頭上に降り注いでいた数トンの岩盤が、濁流が、そして爆風の熱が。

俺を中心とした半径10メートルの空間に入った瞬間、唐突に「消失」した。


砂になるわけでも、弾かれるわけでもない。

最初からそこに何もなかったかのように、存在の座標ごと削除されたのだ。


「……は?」

ゲンゾウさんが口を開けて固まる。「おいおい、冗談だろ……。今、何が起きた?」


「自分の周囲の空間定義を書き換えたんだ」


白石が、戦慄したように呟く。

「『この空間には、カケルくんたちが許可したもの以外、存在できない』って……。防御とか迎撃じゃない。これは、ルールの改変だよ」


俺たちは崩壊するドームの中を、悠然と歩き出した。

天井が落ちてこようが、床が抜けようが関係ない。

俺が足を下ろす場所が「床」になり、俺が進む場所が「道」になる。


『な、なんだそのデタラメな力は!? 自爆コードは正常に作動しているはずだぞ!? なぜ死なない!?』


スピーカーの向こうで、教授が絶叫している。


「うるせえな」


俺は天井の監視カメラを一瞥した。


「お前の遊び場はこにわはもう終わりだ。……すぐに行くから、首洗って待ってろ」


俺は右手を天井――「地上」に向けてかざした。


「レン、掴まってろ。……エレベーターなんてまどろっこしいモンは使わない」


「は? ……おい、まさか」


「直通で行く」


俺の手から、極太の黒い光線が放たれた。

それは螺旋道路も、地下都市の地層も、岩盤も全てを貫通し、一直線に地上へと続く「大穴トンネル」を穿った。

遥か頭上に、小さく、だが確かな「太陽の光」が見えた。


「……嘘でしょ」

アリスが呆然と見上げる。「空まで……繋げちゃった」


「行くぞ。……反撃開始だ」


俺たちは重力を無視して浮かび上がる瓦礫を足場に、一直線に地上へと駆け上がった。

もう誰も、俺たちを止めることはできない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ