表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/74

第24話:最適化された悪意

廃墟の入り口。

鉄の扉が、爆発音と共に内側へ弾け飛んだ。


「――こんばんは、ネズミさんたち」


土煙の中から現れたのは、揃いの黒いタクティカルベストを着た3人組。

年齢は20代後半。若いが、その立ち居振る舞いには一切の隙がない。


先頭に立つリーダーが、ゴーグルの位置を調整しながら、無機質な声で告げる。


組織オーダーより通達。『検体A-08(白石)』および『受信機アリス』の回収。抵抗する場合は四肢の破壊を許可する」


「……随分と上から目線じゃねぇか」


レンが前に出る。

ヘッドホンを外し、首を鳴らす。


「ここが誰のナワバリか分かってんのか? ……不法侵入だぜ、三下ァ!!」


レンが右足を大きく踏み鳴らす。

ドンッ!!

床のコンクリートが波打ち、指向性の衝撃波が3人組に襲いかかる。

並の人間なら内臓が破裂する威力だ。


だが。


「『衝撃インパクト』――予測範囲内クリア


3人組の巨漢の男が、一歩前に出た。

彼は避けない。防御姿勢すら取らない。

衝撃波を真正面からその身で受け止めた。


バァァンッ!!


轟音が響く。だが、巨漢は一歩も下がっていなかった。

いや、それどころか――彼の筋肉が、赤黒く脈動し、一回り膨れ上がっている。


「な……!?」

「痛み(ペイン)……良好グッド出力変換コンバート開始」


巨漢がニタニタと笑う。

彼のコンプレックスは「被虐嗜好マゾヒズム」。

受けたダメージや痛みを、そのまま筋力と身体能力に変換する【因果応報カルマ・バック】の能力者だ。

高火力なレンにとって、最悪の相性カウンター


「次はこっちの番だ」


巨漢が床を蹴る。

速い。その巨体からはあり得ない速度で、レンの目の前に現れる。


「ガハッ……!?」


拳がレンの鳩尾に突き刺さる。

レンがくの字に折れ、部屋の奥まで吹き飛ばされた。

壁に激突し、瓦礫が崩れ落ちる。


「レンくん!!」

「チッ……!」


白石が即座に反応する。

彼女は自分の姿を消し、敵の死角へと回り込む。

狙うはリーダーの首元。


(見えてないはず……このまま、不意打ちで……!)


彼女がナイフを振り上げようとした、その瞬間。


「――そこだね、お嬢さん」


3人目の細身の男が、白石の方を指差した。

彼の両目は閉じられている。だが、その額には、タトゥーのような「第三の目」が開いていた。


「『不可視』……視覚情報の遮断か。だが、熱源と空気抵抗までは消せていない」


細身の男の能力は【全方位監視パノプティコン】。

強烈な「猜疑心パラノイア」から生まれた、全てを見通す目。

白石のステルスが、あっさりと看破された。


「嘘……きゃあっ!?」


細身の男が投げたワイヤーが、見えないはずの白石の足を正確に絡め取る。

彼女は床に引きずり倒され、姿が強制的に露わになった。


「白石ッ!!」


俺は叫んだ。

強い。今までの暴走した生徒や、個人のエゴで動く蔵木とは違う。

こいつらは、チームとしての連携と、能力の相性が完成されている。


「残るは……君か」


リーダーが俺を見る。

そのゴーグルの奥の瞳が、冷徹に俺をスキャンしている。


「『相馬カケル』。……データにない能力者。君の処理が、今回の最大の不確定要素だ」


リーダーが腰のホルスターから、特殊な警棒を抜いた。


「だが、問題ない。全ての行動は予測可能だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ