5.
依杏ら他2人がいる、現在のトランクルームで。
「空中庭園」に関わった人物で、携わっているのは五堂義明。
今、依杏の目の前にいる五堂絵卯。彼女は系列店を移って、黒敷に。
図書館もある。
そこには、萩原洋一が勤めている。
絵卯の言う、つけねらい。着け狙い?
それから、駐輪禁止の嫌がらせは、絵卯が五堂忍の「空中庭園」へ向かう、1ヶ月くらい前から、だという。
起こり始めたのが。
樅ノ木は「差し支えない」というが。
絵卯はそんな様子でもなく、言う。
「尾行されている感覚っていうか、狙われている感覚みたいな感じ」
樅ノ木にではなく、依杏に。
「実際に怪しい人物を見たとかでは、ないんですが」
トランクルームに来る前、樅ノ木の探偵事務所周辺で。
依杏の見た、フードの男。
もっとも、今の樅ノ木もフード服だが。
前者が怪しいとすれば? 怪しいのは、そいつか?
「五堂義明は、姉のエリカの旦那さんです」
と絵卯。
「同じ姓で、関係者だけれど。五堂っていうものに、あまり首を突っ込めてないです。私」
と苦笑。
「つけねらいとかいろいろ、ネット小説やってれば、駐輪禁止みたいな嫌がらせって、他の人にないっていうわけでも。ないみたいですし。大して前は、気にしていませんでした。実際に自分に、起こる前までは。私自身をつけねらっているかもしれない、っていうのもヤですけれど。自分の文章とか、それから派生した映像作品が狙われてたら、と思うと、そっちも嫌ですね」
「小説以外に、心当たりないんですね」
と依杏。
「嫌がらせの」
「ないです。ほとんど。顔バレした以外は、全然思いつかないです」
「じゃあ……」
と依杏。
「顔バレしたっていう心当たりは、あるんですよね」
少々、間。
「あ、待ってください。駐輪禁止のやつ、何回も、ですよね」
肯く絵卯。
依杏。
「何回もやるなんて、それこそ怪しまれるのに、やるんですね。駐輪をちゃんとしているのに、嫌がらせなんてしたら、なおさら」
「入口には防犯カメラね」
と樅ノ木。
「ここは、あるし。入口にはね。というか店に出入りする所って言ったらいいか。トランクルーム内は別だよ。とにかく、怪しい人物が入って来るんなら、即分かると思う。顔認証システムも導入してあるしな。ただ、何回も駐輪禁止の札を巻いて、怪しまれない人物もいるってことだ」
と、ニヒルに笑いつつ。
絵卯。
「だから、樅ノ木さんかと思ったんですよ。嫌がらせが……」
駐輪禁止の札を巻かれるのは、黒敷地区内の駐輪場に停める時。
と絵卯は更に、依杏へ言う。
ただ、つけねらいと感じる現象が起こったのは、黒敷の系列店に拠点を移す、その前からだそうで。
狭いトランクルームでは、結局絵卯の住所にまで、話が至ることはなかった。
ただ、依杏の目的は、遺品整理の九十九社というより、もっと別にある。
数登と同じく、怪しいことがあったら。無視できない。
ので、住所ではなく、絵卯が黒敷地区内で活動している時間帯を把握することになった。
そして、滞在。
依杏が張る時間帯としては、といっても後ろからの尾行には全然慣れてはいないが。
絵卯が黒敷地区内のコンビニで、シフトの入っている時間帯の前後。
帰宅時間も含め。
さらに、「アカリ」の件。
もし、黒敷地区内を依杏が張っている間に、「アカリ」が出たら?
で、樅ノ木は数登にも接触をはかることになった。
らしい。
今のところ、五堂忍を刺したのは、架空の人物ということになっている。
それが「アカリ」で、絵卯の小説に出てくる人物。の映像版ということになる。
架空の人物ではなく、コスプレだったら?
絵卯のつけねらいも、もし「アカリ」だったら?
空中庭園に居た、いない7人目だとしたら?
ただ、居ない7人目というのは、あまりにも架空の話になってしまう。
依杏の中では、五堂忍を殺したのは当日「空中庭園」に居た6人のうちの、誰かという予想で、変わらない。
そのうちには、絵卯と、「探偵」がバレても明かさない樅ノ木も含まれる。
セキュリティに工夫を凝らしたトランクルーム。
そして、あまりにも駐輪場のセキュリティ? を通過しすぎている、嫌がらせ犯……。
樅ノ木の動きは、相変わらず不信で、不思議そのものだ。
あちこち見渡すし、並木道で依杏が彼を尾行していた時と、同じ動き。
トランクルームを出て、廊下に出てから。
部屋の隅々まで、凝視し続けている。
彼は本当は、顔認証も、セキュリティも、信用していないのかも。
と依杏は思う。




