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花開くは何処  作者: Bucket
4/9

3.


「2回ということは」


と数登。


「同じ人物が、現段階で犯人とされている〔アカリ〕を2回、見たということなのか。それとも、それぞれ別の人物が、〔アカリ〕を1回ずつ、見たということなのか」


依杏。


「どうやら2名らしいですね。記事によれば」


「〔アカリ〕を見つけたのが、2名。男女2人ですか」


と数登。




数登も依杏も、一介の葬儀屋であることには変わりない。


いわゆる「変な案件」が、知り合いやら個人から、舞い込んでくる。

依杏は、それがいつ頃から始まったのか、よく分からない。

数登と出会ってから、もう始まっていた。

葬儀社だが、九十九社はそんな場。


一応、空中庭園の件は、依杏の見た感じでは「小さな事件」。

話を持って来た、絢月咲は現場へ行ったことはない。

依杏も数登も同じ。あとは、絢月咲の話と、簡易見取り図による。

そして写真の数々と、新聞記事。


「顔バレを恐れている件もあるが、空中庭園の殺人? で、困っている小説家の案件」。

ところで絢月咲は、絵卯の顔バレの件には、結局触れず。

帰路に。




五堂忍が所有している、今では「していた」その、通称「空中庭園」。

絢月咲による簡易見取り図。

門構えには凝っている。写真には劣るものの、ツタも描き加えている。

実際の写真で見れば、外観は全て。

黒。

そして、瓦屋根。門。


そこから下方に向かって、小さい石段が、群れを成していく様子。

下りていくしかない、とでも言うような。

写真ではそこまでだが、絢月咲の見取り図はそこから石段を続けて、円形の「足場」に続く。

足場に続き、さらに石段、そして足場。


石段と足場のみで、構成されているような。

見取り図だけで見ても、庭園全体が「宙に浮くように」造られているような。

「空中」という通称は、それによるのかもしれない。


写真の数々。緑豊かな。

木の葉が辺りを覆い、その下にある石畳と、椅子とテーブルと。

それが手前にある光景だとすれば、絢月咲の見取り図では後方に。

太い柱がアーチになっている、ドーム空間。

それにも、簡単にツタが加えられ。


石段を下って、第1の足場から続く屋敷。

五堂忍を含む6名は、ここで集まった、とのメモ。


依杏は、検索。




絢月咲が五堂絵卯と、多少なりとも関わりがあり。

九十九社としては、絵卯と関わりすらない。

唯一、引っ掛かりのあるのは、屋敷について?


「〔アカリ〕が犯人としても。凶器に関しては、記事で触れてませんねえ」


と依杏。

いっぱしのつもりだが、傍らには数登のみ。

2人以外の社員は、葬儀仕事で出払っている。


「凶器が現場になかった」


という文言は、記事にあった。

凶器もそうだが、九十九社として知り合いもない中で、6人の詳細情報はない。

もっと言うと、7人?


依杏。


「会社関連の話し合い、かあ。屋敷とかあるし。宝物ありそうな匂いしかしないです。私」


「資産家ですものねえ」


と数登。


「犯人が、屋敷から凶器を持ってくる。という方法も考えられますね。6名は各々、庭園に居た時間と、屋敷に居た時間と。あるようですから。その他、詳細は不明。宝物説で話すなら、各々オフィスに並べる調度品を選ばせるために、忍さんが庭園へ招待をした。とも考えられなくもない」


依杏。

ひたすら検索。


海晴地区までは、かなり遠い。

地区の治安情報。

ただし、全く信用は出来ない。

実際に、検索できうる情報を合わせていっても、凶悪事件の起きるような感じには思えない。


記事によれば、空中庭園の件で、正式な捜査機関は動き済みなわけで。

聴取は終わっている。九十九社は捜査機関ではないし。

手に入る情報は、とても少なく。


依杏。


「とりあえず、五堂忍さんは狙われやすかったんですね。こんな庭園、造っちゃうんだもの」


数登。


「見取り図で言うなら、庭園では、ドーム空間にいらしたそうです。彼は」


「ふうん」


「ここにも、テーブルと椅子がある」


数登は、指で示しつつ。


依杏。


「15時から16時の間、ですよね。忍さんが死んでるの、みんな気付かなかったんですかね?」


「発見されたのは、16時以降だそうですよ」


「そこも、気になるところですね」


「犯人の7人目? そして忍さんを除いて5名。忍さんが刺されたところを、16時以前には見ていなかった」


「5人が凶器を持っていたことすら、不明ですねえ。刃物とは書かれている。記事に。〔アカリ〕って誰ですかねえ」


と依杏。


「さあ」


と数登。




「絵卯さんの困っていることって、この事件以外。一体何だったんですかね」


と依杏。


一体、何を困ったか?

依杏が検索を入れてヒットしたのは、とある事務所だ。


黄褐色の四角い建物。

おそらく賃貸物件だろう。

1階と2階で、経営を構えている? らしい?

ヒットしたのは黒敷地区だ。

九十九社がある西陣からは、車で10分ほど。


現在の依杏の住処からしても、海晴地区よりは。

移動の範囲内に、位置しているようで。


黒敷は無機質。

西陣は、割と緑がある。

で、見つけた事務所には、小さく「探偵」とあった。表には出ていない。ネットでだ。


「珊牙さんて、この人知ってました?」


と依杏。

数登も、画面を見る。


絢月咲に空中庭園の話を、持って来られてから。

一応、検索の前に、情報は集めていた。

「人の死」に関しての、データベースは豊富だ。遺品整理が表に立てる。

何しろ、葬儀社だから。


庭園の関係者の情報。

五堂絵卯の情報も、多少なりともあり。

ヒットした建物は、集まった情報のものと、一致する部分が多かったので。


「探偵か……」


依杏は思った。

この、黒いスーツの人と、関係がありそうだ。

資料を見ながら、思う。




絵卯が出入りしているかもしれない? 建物。

そこから先は?


実際に来てみれば。

表札もない。表立ったものがない。

1階から2階。探偵……。


バルコニーには回らない。

とりあえず、ブラインドの脇から、紙の束の折れ目が見えている。

絢月咲から話を聞いて、5日をかけた。


通行手段は自転車のみ。依杏は一人で来た。


もっと言えば、依杏よりも九十九社よりも、絢月咲のほうが情報収集に長ける。

捜査機関よりも?

エンターテインメントという分野は、恐ろしい。


人と人とのコネと、その間。

絢月咲は一応だがアイドルで、名が通っている。顔が出ていないだけで。

それは、五堂絵卯も同じ。


ヒットした建物の正確な位置情報は、絢月咲が動いたためである。

依杏には、無理だった。

絢月咲側は、絵卯が建物に来る頻度まで、割り出した。

で、依杏が来た。


そして、寒い思いだった。

探偵というワードに、敵意のある自分。

数登さんは、どうだろう?


敵意だけでは、なかった。

空中庭園に関わった6名のうち、絵卯が探偵に関わっていたとして?

その先は?

気になったのだ。


依杏は寒い思いをしながら、1ブロック前から張っている、つもり。

五堂絵卯に、鉢合わせ出来るか?


建物へ入ろうとすれば、入れそうだった。

締まりが手薄。

専用駐輪場に挟まれた、上へ続く階段。誰でもは入れそうなのである。


依杏は、絵卯を探す。

来ない。居ない。

絢月咲の描いた簡単な人相は、一応貰っておいた。

役に立つのか?




何より、絢月咲が触れずに帰ってしまった。

絵卯の「困りごと」。

探偵事務所に出入りしているというあたり、「困りごと」では、済まないのでは?


セキュリティが手薄な階段から、ひとり下りてくる。

依杏は、見ている。


人相の絵は、役に立たなかった。

下りてくる人物、辺りをよく見まわしているのが分かるのだが、フード付きの服だ。

頭をすっぽり覆っているせい?

明らかに、怪しい。


絵卯じゃないとは、思ったが。

興味が湧くと、すぐなのだ。

やっぱり、眼で追ってしまう。

依杏には、フードの男性とは分かった。

男性を追う理由はなにもない。絵卯とは全く対象が違う。

それでも、気になった。


彼は、明らかに周囲を警戒している。

なので、依杏も、「自転車のチェーンが切れたので、押して歩くしかない人」に徹してみる。


道路へ。

フードの男は、依杏に背を向けたままだ。

依杏は一方で、静かに尾行している。


彼が階段を下りきる際に、少し顔が見えた。

それで、余計尾行する気になった。

5日経つ間に、少ないデータベースから、人相を頭へ叩きこんだ。その甲斐?

黒いスーツの人相と、フードの奴は、顔が似ている。


何故か、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり。

わざとか? それとも?

全方向に、視線を回しながら歩くので、ますます怪しい。

依杏は、ひたすら彼の後方を、陣取った。


彼がタバコをふかす段になって、依杏は自分の自転車の、「切れたチェーン」を見つめたが。

切れてはいない。

尾行している、彼の向かい。


遠くから、こちらへ。

依杏が尾行している彼と、全く同じ姿。

すっぽり被ったフード。

前方を歩く、自転車を押した女性。


あれ?

依杏は思った。


すっぽりフードで顔を覆っている男は、すぐとって返して行った。急ぎ足で。

依杏が尾行しているほうは、代わりにフードを取る。

自転車の女性。


「樅ノ木さん」


と言っている。




「で、そのう。私に、ですか?」


「そ、そうなんですよ。あなたに」


聞き込みをしたくて?

捜査関係者じゃないぞ?

でも。


「えっと、私。こういう者でして」


依杏は名刺を取り出した。

杵屋依杏。

向かいには、自転車を押してきた女性である。


「五堂絵卯さんですよね。ええと……」


「尾行、下手すぎ」


依杏が尾行していた男、樅ノ木が言った。




依杏はざっと、絵卯に状況を説明。

と同時に、今居る場所にかなりびびっている。

閉鎖空間。


賀籠六絢月咲の話から始まり、空中庭園のことなど。

今いる閉鎖空間は、依杏も絵卯も望まない。

だから、びびっている。


「さすがに、ここ、やりすぎな気がしません……?」


と絵卯。樅ノ木へ言う。


依杏が咳払い。


「よく。というか、葬儀社ですので。空中庭園でのお話を伺いたくてですね。こちらでも、遺品整理でお伺いしたいと」


「やっぱり、ここってやりすぎですよ。樅ノ木さん」


と絵卯。樅ノ木に。


樅ノ木。


「防犯カメラとか一切ないんで。ここ。気楽にお話出来ますよ。あなたの言う」


と依杏へ。


「葬儀とやらから、なにやら。空中庭園について? ふうん」


嫌味がたらたらである。


「後ろをつけられるなんてなあ。一応、後をつける側なんだけど。俺」


絵卯は、首を傾げている。


依杏たちが居る閉鎖空間。

いわゆる、トランクルーム兼ワークスペース。トイレ完備。

料金貸し。

広いスペース。

そこへ3人。

黒敷地区内だ。


樅ノ木名義で借りているということで。

ゆっくり、話が出来るだろう? ということで?

2人は強引に連れて来られて。

ボックス型。長方形。

細長い。


依杏は、びびっている。

絵卯は、樅ノ木を見ている。

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