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花開くは何処  作者: Bucket
3/9

2.

「白緑の庭」は、あくまでも小説。

一方で、その派生で出来たグラフィック、箱庭系の登場人物たちは、目鼻立ちの整った、眼で見てすぐ分かる人物像ばかりだ。


「やっぱり、コスプレ説って。あると思うの。というか言われてばかりだけれど」


と、賀籠六絢月咲。


「コスプレかもな、不思議な人が居たって。つまり、〔いない人が居た〕事件。それか、事故かもだけれど」


九十九社にて。

絢月咲は、杵屋依杏とは面識がある。

数登珊牙にとっては、最近の知り合い。

九十九社へ来るのは、これが初めてだ。


桜は、まだある。

散っている所もある。

西陣地区。

黒敷よりは、多少凹凸がある。平坦ではない。


スラリと高い背丈。

依杏としては、自分の周りは「背の高い人物ばかりだなあ」と思うところなのだが、絢月咲もそのひとり。

肩より少し上の髪、ミディアムヘア? に、初夏仕様の服装。

足先は、スニーカー。ただし、薄い。


一方で、一応仕事の恰好の依杏は、素材は同じく薄い。

スーツ。通気性は良い。


「で。事故かもだけれど、って、事故だったんですか?」


お茶を渡しつつ。


絢月咲。


「とにかく被害者が出た。私としては、事件と思いたい」


「ふむ」


「で、被害者と反対側の人が居ないのよ」


「反対側の人」


と、脇から数登珊牙が現れる。


絢月咲の向かいに、依杏が座っている。

で、絢月咲の隣に、彼は無理矢理、腰掛けた。

依杏の中では、数登が一番高身長と見ている。

座高も高い。脚の長さは?


とにかく、仕事で近くで過ごしていても、数登という人物には謎が多い。

と依杏は思っている。今現在も。


「反対側は反対側です」


と、絢月咲。


「被害者を出した側ってこと。ただ、今は別に、事件の話を警察に言いに来た人、っていう設定じゃあないもの」


「犯人が居る案件かもしれない、ということですね」


と数登。


「そうそう。ただ、私は話をしに来ただけ。しかも、知り合いが関わっていて。忙しいから。私が代理」


と絢月咲。


知り合いはEguriだという。

絢月咲の言った忙しいというのも、その人らしい。


「いろいろ困っているんだって。その件はちょっと後回し。いま話そうとしていることには、関係ないから。たぶん」


絢月咲はテーブルに、数枚の資料? を並べた。


「とにかく、反対側の人が居ないって。ここで起こったの」


指で示す。

資料の写真は、緑豊かな風景である。


「Eguriの小説の舞台なんだって。内緒よ」


場所は通称、「空中庭園」。


「へえ」


と依杏。


絢月咲。


「で、反対側の人が、Eguriの小説からの派生から、グラフィックで出て来たんじゃないかって。噂ばっかりになっているの」


「は?」


と依杏。




「グラフィックだったんですか?」


「派生の箱庭系は〔ホワイトアウト〕っていうらしいけれど。それのキャラにそっくりだったって。居ない人が、空中庭園に居たってさ」


と絢月咲。


依杏。


「居た……って、無理ですよね」


「無理よ。でも、居ない人を実際に見た人が、居たんだって。被害者も、それを見たかもしれないんだって。彼を含めて、3人かな」


ここから個人情報。

Eguriの本名は、五堂というらしい。

空中庭園を造ったのは、彼女の父。五堂忍。


「道楽まじりで造った」


ぽかんとして、依杏が言う。


「金持ち」


「五堂絵卯さんが、その庭園を。小説のモデルにしていたんですね」


と、数登は再確認。


「そう。で、被害者は五堂忍さん。キャラにそっくりな〔居ない人〕が、今のところ犯人扱いされている」


新聞記事もある。

依杏は、それを見つめながら、頭が回転しない。

眼を通す。


「亡くなった、か……」




新聞記事によれば、空中庭園には○日の15時から、人が集まっていた。

五堂忍は、その中で唯一の被害者。


遺体に接する機会というのは、やはり多い。普通の人よりは。

九十九社は葬儀屋で、依杏もそうなった。

実際の場合と、紙面のみの場合と。

そして彼女は、いまだに遺体には、慣れない。


「また話が混同するけれど。絵卯の身辺情報から話す」


と絢月咲。


「ネット小説で売れたんだけれど、彼女自身は、顔バレしているんじゃないかって。ひどく悩んでいる」


「それだけですか?」


と数登。


絢月咲。


「違います。顔バレに至る結構困ったことが、かなり続発しているって意味です」


「なるほど」


「空中庭園の件も、そのひとつになっちゃったのよ。今回で。絵卯のことは、配信案件で知ったのがきっかけ。売れても、サポートは手薄なんだって」


五堂忍が死んだという、当日の空中庭園には6人が集まっていた。

緑豊かな場所。

とにかく、それ。

九十九社がある西陣地区からは、車でも1~2時間かかる。

温泉、トレッキング。富裕層。海晴地区。


五堂忍は事業展開が得意だった。

所有地の一角に造ったのが、空中庭園。

新聞記事の一筋。


「行ったことは」


数登は絢月咲へ尋ねる。


「ないない。ないです。絵卯とも、あまり交流はないですから」


と絢月咲。


「話はするけれど、6人の中には絵卯が居て、他の5人とも接触まったくなしだから。私」


依杏。


「みんな五堂姓なんですか?」


記事を見ながら言う。


「あ、違いますね。五堂姓じゃない人も居たって書いてある」


読みつつ。


「会社関連の話し合い。空中庭園は屋敷と繋がっている。話し合いが行われたのは、庭園のほうで。テラス? 開始は15時。屋敷のほうへ数人で、移動した時間帯あり。五堂忍さんは、庭園から移動しなかったって書いてあります。そう言ったってことですかね? 誰かが? 絵卯さんも、あんまり移動していないって書いてますね」


「そうね。忍さんは、絵卯とは沢山話したいこと、あったと思うし」


と絢月咲。


「ずっと庭園にいらしたんでしょうか。絵卯さんは」


と数登。


依杏。


「いや、あんまり移動しなかったとしか、書いていないですね。ああ、1回屋敷へ向かったって書いてあります。いろんな人が、庭園を空けていた時間帯があったんじゃないでしょうかね。読む限り」


絢月咲が読む。


「6人の名前。五堂以外もあるわよ。樅ノ木って人と、萩原って人。他は五堂。絵卯に、エリカさん、義明さん、忍さん」


「犯人説はありますか」


と数登。


絢月咲。


「忍さんには刺された痕があった。らしいです。致命傷になっている? 書いてあるけれど、ここにも。〔居ない人が刺したんじゃ〕って。証言。全身真っ白の女性。箱庭系に出る登場人物と、そっくり。記事にもあるけれど、一応その話だけは、絵卯からも聞いたから」


数登。


「話を追うに、忍さんを殺したのは、とにかく女性。という判断に傾きつつある」


「そうねえ。だから、余計に絵卯が困るし」


と絢月咲。




珊牙さんは、絢月咲さんの話には興味深々だなあ。

と依杏は、改めてぽかんとなる。

話が見えない。

ハッキリしない。

絢月咲さんを、空中庭園へ向かわせたいという、意図は読めるのだが。

と依杏は思う。数登がだ。


で。

依杏が読む。


「五堂姓の人が、五堂絵卯さん、五堂エリカさん、五堂義明さん、五堂忍さん」


小休止。


「五堂姓しか女性、居ませんけれど」


若干の沈黙。


「更にですが」


と数登。


「絵卯さんは、空中庭園、通称。その場所をモデルにして、小説を書いている。〔ホワイトアウト〕にも彼女は関係していて、現場で目撃されたのは、その登場人物ではないか、という状況。絵卯さんは、今の案件に一番近い存在、ということですね」


「困りまくりますね」


と依杏。


「ほんとに」


と絢月咲。




絢月咲とは、以前にも殺しの件で関わったことがあった。

九十九社として。

今回のは、明確な殺人だろうか?


記事内容。

五堂姓以外の名前として、樅ノ木有人、萩原洋一とある。

○日の15時から16時頃までの間、その中で2回。

全身真っ白の女性が目撃された、と書かれている。


「絵卯さんも、エリカさんっていう人も、どっちも真っ白じゃないですよね。少なくとも」


と依杏。

こんなの、疑いをかけられても、困るのである。

と思いつつ。


「あと。絵卯が忍さん、自分の父親を殺すほど憎んだっていう、証拠なんかないし」


と絢月咲。


「なるほど」


と珊牙。


絢月咲によれば、全身真っ白に該当する女性、そのキャラクターの名前は「アカリ」というらしい。

アカリが実体化したという証拠もなければ、凶器も残っていないと書いてあり。

九十九社は全体として、ただの葬儀屋である。

捜査機関でもなんでもない。

証拠もない。

実際に、空中庭園に向かって、見て来たわけでもない。

アカリは2回目撃されていて、そのアカリが犯人扱い。今のところは。

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