俺がスキル天邪鬼に唯一抵抗できる時
俺は自分の天邪鬼な性格によって一度死んだ。
だから今度は真面目に生きようと思って生きてきたのに。
俺が授かったスキルは、前世でこびりついていた天邪鬼だったのだ。
「……」
「今日もまた反対のこと言っていたんだよね?そうだよね?」
綺麗な青い長髪の彼女の名前はルビア。最初に仲間になった魔法使いだ。
彼女だけは俺のスキルのことに薄々気が付いているらしい。
彼女とは昔から縁があった……。人は長く一緒にいると、その人の心までわかるようになるらしい。
「違うけど……?」
そうなんだけどな。
「なに?寝ぼけてるの?それとも今日の疲れが今頃出てきた?」
「ああ、そのようだな」
いや、少し考え事をしていた。
「珍しくまともに答えたんだね。あ、これお酒じゃん。私たちにはまだ早いよ」
「そうだな」
もう飲めるだろ、そう思ったら最後。飲みたい時に飲みたいものは飲めない。
「おじさーん、ジュース追加でください、お金ならあるから」
「あいよっ、今日も二人でデートかい?お熱いねえ」
「もう、そんなんじゃないよ。ロアルは昔からの友達で、今は大事な仕事仲間なんだから」
「本当にそうなの?」
そうだよな。恋愛感情なんて持てない。
「ロアル、また私をからかってるんでしょ?もうやめてよぉ」
俺は彼女を傷つけないために、最近は距離を置いている。
すべて反対のことを言ってしまうのなら、絶対に真の自分の気持ちを伝えられないから。
例えわかっていても、こんな自分が許せない。
「もう少し話したい」
俺に構わないでほしい。
「う、ん……そうだね」
これがあるから嫌なんだ。
誘いはすべて断ろう。
そう思った瞬間、負けている。
こんな飲み屋だかバーだか、よくわからないところに来ていた。
「今日はさ、頑張ったよね」
こうなってしまったら、俺にできることは。
「これを読むな」
これを読んで。
「そう……わかった」
ルビアは俯きながら、そこに置かれた紙切れを拾った。
◇
今日はもう寝る。
これだけが紙に書いてある。それを大量にストックしてある。
いざというときはこれを出す。そして常に腹を空かせておく。
そして一人、宿へと戻る。
俺がスキル天邪鬼に唯一抵抗できる時。
それは人間の三大欲に忠実な時。
本当にどうしてもお腹が減ったら、スキル天邪鬼は陰を潜める。
本当にどうしても眠くなったら、スキル天邪鬼は陰を潜める。




