お金を……みんなで使おう!
「それで本当の報奨金はいくらなんですか?」
「何度言われても、1000ですね。怪鳥ならまだ金塊山に何匹もいるはずですので」
「そんなの納得いかないよ!」
「俺たちがあんなに頑張ったのに……」
「ドラゴン一匹の10分の1なんて……」
「もし、数体いる怪鳥を絶滅してもらえるのならば、10000は出しますよ?」
「あんなのを……数体も……やってられるか」
「珍しくロアル様の力をほとんど借りないで倒せたのに……」
「みんな、そんなに落ち込まないで。貰えたのはお金だけじゃないでしょ?」
「経験値は不要だ」
経験値は得たよな。
「そりゃあ、少しは貰ったけどさ……」
「あんまりだよぉ」
◇
「ちょっとみんなに話しておきたいことがあるの」
「なんだ?俺たちは今、落ち込んでいるんだ」
「そうだよ、これはおスイーツを食べに行かないと体がもたないよ」
「……ふむ」
「えっと……前に話していた、伝説の魔法使い様が王都にいるって噂を耳にしたの」
「お?」
「それは……」
「知らない……」
そういえば言ってたな。
「それでいつか……。私たちのお金が貯まったらね、王都のほうに行けないかなあ、なんて……」
「なるほど……」
「王都……あこがれの地……」
「すぐには行けない。まだ行くことはできない」
今すぐ行こう、すぐにでも行こう。
「それでも、なあ……行きたいんだろ?ロアルさんは」
「ロアル様は伝説の魔法使い様に会いたくてって毎日悶えてるって、風のうわさで聞いたよ?」
「半分あってて半分あってない」
どういうことだよ、それ。半分あってて半分あってないけど。
「そ、そうね……。でも王都にはお金がなくては行くことはできない。
あの地へ行くには相応のお金が必要なの、みんなも知ってるでしょ?」
「はいはい、そーですね……」
「じゃあ私、おスイーツを食べに行ってくるね……」
「お金を……みんなで使おう!」
お金をみんなで貯めよう。頼む。
「え?」
「お?」
「ロアル?それは、お金は使っても……また入るってことよね?」
「まさか、それって……カジノに行くってはなしじゃねえよな?」
「そんなところに行ってもお金を無くすだけだよ……止めておきましょう、ロアル様」
「そうだ。頑張らなくてもお金は増えるんだよ」
違う。頑張って、みんなでお金を貯めるんだよ。
「まさか、その手があったとはな……。ロアルさん俺は一生ついていきます」
「……ねえ?ルビア、どう思う?」
「私は……反対」
「だよねえ?いくら運が良さそうなロアル様でも……」
「私はカジノへ行く。みんなには迷惑をかける……」
俺もカジノは行きたくない。みんなには迷惑をかけられないんだ。
「一人ででも行くってか……こりゃあもう仕方ないな……」
「これは、おスイーツどころの話じゃなくなってきたわね……」