そうじゃないから貧乏人
今日はこの町に来て四日目、最初の魔物討伐の日だ。
さすがにこの町にも慣れてきた。迷子しない的な意味で。
それにしても、この町はいいな。
町の入り口に強靭な見張りの人がいるおかげで、
前の町であった、急に町に魔物が入り込むというアクシデントも今のところはない。
いや、そろそろあってもいいぞ?
安心することは、スキル天邪鬼にとって良くない。
俺は常に危険と隣り合わせだということを、思っていなければならないんだ。
◇
「今日は早かったね、ロアルが二番乗りだよ」
「遅くて助からない」
いつも早くて助かってる。
「うん、助かってるよ。私は……」
「二人は何もしてない」
二人は何してんだ?
「……二人が来るまでちょっと話そっか」
「……いや」
ああ……。
「今日は町の北東の金塊山って呼ばれてる所に行くんだったよね」
「そうじゃない」
そうだな……。
「どんなところかな?金塊山って言うくらいだから金塊が所々に埋まってるとか?
さすがに、そんなことはないよねー?」
「そうじゃないから貧乏人」
そうだったら、金持ちになれるのに。
「この町に来てからいろいろ調べてたんだ。
ほら、伝説の魔法使いのこと。ロアルじゃ中々人に聞けないでしょ?」
「それは最高に助からない」
それはマジ助かる。
「……それでね、その伝説の魔法使いは王都にいるって噂を耳にしたの。だから……」
「おーい!」
「お待たせーー!」
「あっ」
「待たせてしまって、悪かった。
来る途中、こいつと会ったんだけど、アイテムの補充を忘れててな。急いで道具屋に駆け込んでたわけよ」
「違うじゃん、私だけじゃなくルクスもなんか買ってたでしょ?」
「いや、あれは付いていったついでにだな……」
「普通じゃない」
まあ、いつものことだよな。
「え?ああ、金塊山のことか。確かにあそこには最近鳥の魔物が狂暴化して生息いるらしいな」
「でもロアル様がいれば問題ないよね?」
「俺は弱い。しかし仲間は守る」
まあ俺は強いからな。仲間は守れないかもしれないけど。
「もう、またまた謙遜しちゃって……」
「悪いがそれは俺のセリフだ……いくらロアルさんでも取らないでくれ」
「じゃあみんな、揃ったから……出発ね」
ルビアの転移の魔法で移動。
◇
「ここが金塊山か。確かに山がキラキラしていて、一見山が大きな金塊のように見えるな」
「油断してはだめよ。これはその昔、魔王が空から魔弾を放ち、それがこの山に一斉に降り注いだものなの。
それを神聖なる魔法使いが浄化した跡だと言われているわ」
「なるほどなぁー」
「ルビア物知りさんだね」
「ちゃんと来る前に、チェックしてきたからね」
「えらいえらい」
「卑しい」
偉い。
「そうだな……。卑しい人間は人を騙して、これを金塊だと偽って売るという」
「本当に卑しい人たちだね……」
「だから、気を付けてね、いくら浄化されたといってもこれは元魔弾……。
魔王の力が秘められた悪魔の力なのだから……」
「魔弾か……。俺もいまだに直接見たことはないが、これがその……?
そういや魔神の武器からも、同じように魔弾が放たれると聞いたことがあるな……」
「……さあ、こんなところでゆっくり話していられる余裕はないわ、行きましょう。
目指すは山頂の怪鳥の魔物よ」