新しい町
宿屋で目を覚ますと、ロアルの体力は完全に回復していた。
そういえば、昨日は大きなケガはしなかったな。
……それよりもみんなが無事で本当に良かった。
……あのダークエルフ。そして獣人……。
もし今度、出会ったら俺の剣で……。
いや、やっぱりやめよう。
話をしない魔物と違って、向こうは人間みたいだし。
いくら魔王軍でも、やり辛いよな……。
いや、でもこう思ってると俺の場合、逆にやっちゃうか……?
うーん……困ったな。
◇
「ロアル様!こっちこっち」
「ようやく、お目覚めか」
「今日はみんなも遅かったけど、ロアルが一番遅かったね」
「ルビアがいつも早すぎるだけでしょ?
みんな疲れてたんだよ。特に私は遅くまでみんなの回復を……」
「……そうだったね。何だか配慮なくて、ごめんごめん」
「いや、ごめん……。そう言いたくなる気持ちもわかるよ。私も待つの嫌いだもん」
「まあまあ、そんなに言い合わないでさ、とにかくみんな無事だったんだから良かったじゃん?」
「……私は迷いなく進むだけだ」
俺は集合場所の広場の場所がわからなくて、ちょっと迷った……。
「そ、そうだね……。私たちは魔王を倒すために迷ってはいられない」
「あんなことがあっても、今日もいつものロアル様ね……」
「まったく、器が大きすぎるぜ」
昨日の夜、まずはみんなで一緒に新しい町を見て回ろうと約束していた。
俺のパーティメンバーは傷も浅く、何ともないみたいで安心したんだ。
町の冒険者たちは、負傷した人もいたみたいで、回復を願うばかりだ……。
「ねえ、それで、今日はどこに行く?」
「まずは、ギルドに報告でしょ?それ以外に考えられないわ」
「わかってるよ、もちろんその後の事だよー。どんなお店に行こうか?」
「まあ、こんな時だ。明るいところに行きたいもんだね」
「……」
無心。無心。
◇
「それでは手続きはこれで。
ロアルさんのパーティは三日後にこの町の北東の金塊山に魔物討伐、ということで」
「はい、わかりました」
「えーっと……?失礼ですがリーダーの方は?」
「ごめんなさい、私がこのパーティの指揮を担当している者で」
「そうなんですか?……ではこの用紙に変更届けをお願い致します」
「え?」
「パーティの指揮をする者がリーダーになる。このギルドではそういう決まりになっております」
「っ……そうですか。……じゃあみんな、それでいいかな?」
「もちろんいいよ!」
「俺は構わないぜ」
「……」
「じゃあ、それで!」
◇
「私がリーダーで本当に良かった?」
「そりゃあ、そっちのほうが何かと便利だろ」
「この町の決まりなんじゃ、しょうがないね。
ロアル様はリーダーじゃない、メインアタッカー様ですから」
「私は落ち着いてはいられない」
俺は……とてもほっとしているよ。
「ほら、早速燃えておられるよ。大丈夫、三日後にはまた暴れられるからね?」
「腕が疼く……」
体はもう大丈夫だよ。
「剣士としての闘争本能が抑えきれないようですな」
「ほらほらみんな、茶化さないであげて。それで?これからどこに行く?」