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67.虚数の世界の記憶

……おおいぬ座ボイドを開拓した繊維獣は虚数の想像力で埋める世界に住んでいる。

好きな見た目しか感知しない生活、かなり快適だ。西暦二八五〇年「大黒災」の出来事、一〇〇年前だ。


Stjg!54という好奇心旺盛の繊維獣とその友達8g4rtt3は白熱な会話に取り込んでいる。


「なぜStjg!54は人類学に興味を持つようになったの?」


「だって、社会構造面白いじゃ、固有性というものバリューとして扱われているみたいだよ」


二体の友達はふんわりとボイドに揺蕩いながら、目的地へ推進している。

空洞、というのは人間が想像できる場所ではない。


通常の物体からできていないため、色彩、構造、重力全て実存しない。虚数の創造が唯一のルールであり、客観視できるのは、漆の海に泳いでいる奇妙な物体、黒い海に泳ぐ膨大な大きさの機械しか目撃しない。


だが、そこに存在する「宇宙人」は意外と人間の社会に似つかわしい組織たちを運用している。


虚数データから形成されている街と建物が創造し難いでも、その運用と構造は非常に高効率だった。


二体の機械体はデータが烙印されている漆黒の流水を通して奥側にあるデータの位置に急いでいる。


「ウバ、そんな急がないで、間に合うと思うよ?」


「だから、何回ウバと呼ばないでって言っているでしょう」


「わかった、わかった、8g4rtt3って、長いよ、……」


「言い訳でしょう、人間文明の本を読みすぎ!君、地球は次の開拓地になってから皆は狂乱に堕ちている、マジ、そんなにエキゾチックっけ?」


8g4rtt3はムッとする。


確かに昨今、人類学が流行っているのは間違いない。繊維獣はボイドではなく、通常の物体からなる世界を侵略する都度に、異文化フィーバーは「バズる」。


だけど今回は桁が違う。人類の古典と放送画像類をひた向きに消費する一般市民が急増している。


「だってさあ、局所銀河群の唯一の優生生命体じゃん、あの種は頭悪いのよ、自分は全ての中心と思い込んでさ、大体お互い同士の戦争で絶滅すると予想されているだろう。文明スケール零。七に過ぎないのにさ、めっちゃくっちゃ偉そうで、なってならない生命体の例として扱われているのに、なぜStjg!54はこんなにハマっているの?」


友達のひねくれた姿を見て、Stjg!54は付け加える。


「すまんすまん、聞きたくないよねえ、でも8g4rtt3くん、聞いたことがあるでしょう、愛だからさ」


「アイ?」8g4rtt3は意味不明の言葉を繰り返す。


 「相対的微量生存圏決まっているでしょう?」


「またあれかお前?Stjg!54、いい加減にこの怪しい都市伝説に耳を傾けない方がいいよ」


「都市伝説ではないよ、ws4アカデミアの学者達も論じているじゃ、つまり下級生命体から一応学習できるって」


「馬鹿馬鹿しい、45fea博士と5mi23f博士はもアカデミアから破門になった薮研究者よ、下等な生命体から何が覚えるの、タイプIVに近い我が種って全能だよ、効率の意味を掌握していない種と有効的な関係を築くのは、壊滅の大一歩よ」


今回拗ねるのはStjg!54の番だ。


「はい、はいウバくんじゃなくて、8g4rtt3くん……、子供の頃、楽しかったのにな、人間のあだ名をつけて、どうして今嫌がる?」


「あの、その時に幾多の下等な文明の一例として生命体交換ごっこしたし、子供だったし、それに今日みたい人類に対する熱気もなかったし……


それより繊維獣の可能性をもっと勉強したりとか?我々の存在はこの宇宙全体に広がり、繁栄と幸福を手に入れる稀有な種だよ、それで変なでっち上がった情けに動かされて、わたしたちより明らかに弱い種に足手間どいされるなんていらないでしょう」


8g4rtt3の頑強さはフールパワーだ。


「相対的微量生存圏ってまで行かなくても、技術と発展が遅れている種でも教えることがある、存在する価値があるってさ、どこが悪いの、もちろん私たちの存在の脅威になればわかるけどさ、人類の愛って面白いよ?」


「まあとりあえずついたのよ」8g4rtt3はいよいよの到着で無駄なやり取りしなくても済むというのはかなりホッとしているようだ。


繊維獣の二体は虚無にうねうねしながら虚数データから目的地にたどり着く。


データからなっている建物でStjg!54の視点から筒の様な形している。


ついた繊維獣は用意されたスペースにドッキングする。

エレベーター台は上に向かう。


講義室の様な形状の部屋に到着した間も無く、天井から責任者と思われる繊維獣はぶら下がる。


視野が許す限り聴衆側には少なくとも一〇〇体の繊維獣が参加しているようだ。


それぞれは個人用のエレベーター台にドッキングしたまま。


Stjg!54から見て部屋は杉の木材と翠色のベルベット内装にこだわった豪華なものだった。


繊維獣は創造できるものが無限大だ。波動の世界、どの文明でも可視化できる。


そもそも実在しないモノが現れることもしばしば見られる。


責任者たる一体は発語する。


「全体様、今日集めてくださりありがとうございます。定期的な技術及び生産性見込み評価の結果を報告させていただきたいと思っています。


それに基づいて速やかにに己体(おのれたい)適したランクに移ってください。毎回言いますが、評価は絶対です。誰か恣意的に決めつけることがなく、純一無雑で公明正大のデータに基づいているものです。


ちなみに、興味のある方のために言いますが、今回推測された誤差は0.00000000000000000001%とされています。


評価の結果に反論ありましたら適切な行政機関にのご報告の検討お願いいたします。おおいぬ座のこの虚数位置であれば……。えええーと、ペルセウス座・うお座超銀河団よりで、アラベール426あたりと思われます。座標を知りたい機体は後ほど、個別ドッキングでお願いします」


責任者の繊維獣は無機質で、平たい声で話し続ける。


「さて、ランク動かされた個体の個人名を挙げます…………「5go7,

下位2頭位5列目、4708ragu,上位1頭位4列目,

Noue081、下位1頭位9列目……」……「で8g4rtt3下位3頭位2列目でお願いします]、以上です」


「みなさんこれで告知事項が以上となりましたので、ランク変えた方、ただいま列を交代してください。他の機体は自由に行動してください、くれぐれもランクを勝手に変えようとしないで、ランク切り替えの方はこれからランク同士のとしかインテラクトできないです。名前をあげた個体、世界を変えましょう、解散です」。


Stjg!54は動揺している、胴体の電線から閃光が漏れている。


「8g4rttくん、3下位以下なんて、それはもう……どうすればいい?」


「大丈夫だよ、だって我が種の生存率は絶対でしょう……喜んでランク移るよ……」

「やめてよ……嘘っぽい、喜ぶものなんかないじゃない、どういうこと……」

「は、Stjg!54くんは相対的微量生存圏って危ないと言ってくれたよね、、確かにそれ信じたら、今みたいな時、余計に苦しいよね、目が覚めた、本当に……ありがとうね、元々喜ぶことだと思う、きっと」。


8g4rtt君は視覚器官を下に向けている。どう見ても機械体は震えている。


それは主観的なビージョンではないはず。原子と分子の動きによるもの。

8g4rttは何も付け加えず、三下位の階に移動しようとする。


「待って。待ってよ、挨拶もせず、何するの??!」


「時間の無駄でしょう、それは、効り……」


「やめてよ、我が苦しんでいる、いきなり仲間を失ってさ……何を、やめ8g4rtt3]


8g4rtt3は苦笑を見せながら、「ウバくんでいいよ、いじっぱりすまんなかった……」


8g4rtt3は無言のまま、下の階の暗闇に器械体を委ね、漆の乱流に飲み込まれる……。



「いやな思い出だ」


……。


ウバは古代カルニクスをネオン大阪の天球に意気盛んに差し出す。


カルニクスのイノシシの頭に嵌め込まれた電球の黒いガラスから紫光が四面に散乱する。


解読不能な詠唱に応じて、紫光は発射する。


地面が轟き、避けられない引力は地上の全てのものを上に引き寄せる。

目の前に、未知なる宇宙の災難の幕が上がった。


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